企画意図は掴みかねましたが、印象に残った作家について。 以前に観た Chopin のピアノ曲を弾く年老いた女性たちを淡々と捉えた《永遠に、そしてふたたび》も良かった 横溝 静 の《That Day / あの日》 (2020) はで、 写真のプリント現像を様子を使いつつ現像液中で浮かび上がってくる写真像とその合間の語りからなる ナラティブなインスタレーションがうっすらと物語 (津波被害だろうか) を浮かび上がらせます。 Polixeni Papapetrou の娘に動物の仮面に19世紀風の衣装を着せて撮った演出写真シリーズ Between Worlds は、 Max Ernst のシュルレアリスティックな銅版画コラージュをカラー写真化したよう。 しかし、演出写真というよりセルフポートレートを自分と娘を合成してメタリックホイル上に黒でプリントした MY HEART –– still full of her の方が、その仄暗いイメージに思わず目を止めてしまうものがありました。
1972年に活動を始めた動物写真家の回顧展です。 1970年代から赤外線センサーを使ったロボットカメラを使うなどその試みも面白いのですが、 シリーズ《死》の動物の死体が朽ちていく様を連続的に捉えたシリーズ写真の 動物の可愛らしさを捉えるのではなく引いた視点で生態系のあり方を記録したような所が興味深く感じられました。
2000年代以降、主に現代美術の文脈で活動する映像作家です。 グループ展で《チンビン・ウェスタン 家族の肖像》 (2019) など観たことがありましたが、 回顧展という程の長いキャリアではないですが、今回、20年近くにわたるまとまった数の作品を観ることができました。 辺野古埋立問題などの現代の社会問題にも着想しつつ、 それをドキュメンタリ的もしくは、リアリズム的に描くのではなく、 伝説や昔話などにも着想を得て、質感などのフェティシズムも感じさせる映像も使った、 寓話的なナラティヴを持つ映像作品です。 その土地自身を擬人化して語らせるような《土の声》 (2016) が、最も良かったです。 今回は展示室構成も、ガマ (沖縄の洞窟) の巡りながら観るということを連想させるような インスタレーション上の工夫もされていました。 が、30分前後の長めのナラティヴな映像作品は劇場版の方が合っているようにも感じました。