英国スコットランドの Scottish Dance Theatre がCOVID-19によるロックダウンの解除の後に最初に取り組んだ作品で、 彼らの拠点てある劇場 Dundee Rep から無観客ライブ配信することを前提として制作されたものです。 今回はその際に録画されたものをオンデマンド配信で観ました。
使うカメラは1台のみでカメラの切り替えなしのワンショットで撮影されています。 カメラは固定ではなく、Tao-Anas Le Thanh がスタビライザー付きカメラを持ち、ダンサーの中に混じって撮影をしています。 劇場内はテーブルなどの道具はあるものセットは無く、カメラをパンして場面を切り替えるだけなく、 キャスター付き台車の上に立てられた無塗装の高さ2 m、幅1 m程度の木製パネルを数台活用し、 効果的に視界を遮りながらトリッキーに場面切り替える技も面白く感じられました。
ワンショットでライブ感を出した動画の配信といえば 中村 蓉 『ジゼル特別30分版』 [鑑賞メモ] も思い出しますが、 こちらはサイトスペシフィックな空間の中でカメラがダンサーをカメラがダンサーを追う追ううちに観客もその空間に迷い込む感が面白く感じられました。 一方、この作品は、劇場という空間を使っていることや、踊るダンサーが多いことから、 ワンショットならではのライブ感などは共通するものの、 フロアの上でダンサーの中でカメラがより能動的にインタラクションしているように感じられる映像でした。
テーマとしては時の流れというものがあったようで、バロック音楽に合わせて、 その時代の服装をした狂言回し的な役回りの男女2名がドタバタを繰り広げつつ、 最後の場面に観客となる以外は2名とほとんど干渉せずに現代的な服装をしたダンサーが踊るというものでした。 狂言回し的な役の男性はバロック時代の服装というより、 A Midsummer Night's Dream に出てくる Puck を連想させられたのですが、 やはり、それを意識していたのでしょうか。
2020年まで毎年秋に東京芸術劇場周辺では 東京芸術祭 と FESTIVAL/TOKYO という 2つの演劇祭が並行して開催されていましたが、今年は東京芸術祭に一本化されました。 優れた海外カンパニーを招聘しての公演が多く楽しみにしているのですが、 昨年に続き今年も海外カンパニーの参加は配信が中心。 コロナ禍で仕方ないとはわかっていても、寂しいものです。