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Review: Dimitris Papaioannou: Nowhere @ National Theatre of Greece (Director's cut) (舞台作品 / screening)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/02/06
Ziller Building - Main Stage [Κτήριο Τσίλλερ - Κεντρική Σκηνή], National Theatre of Greece [Εθνικό Θέατρο], 2009, 38 minutes.
Concept - Direction [Σύλληψη - Σκηνοθεσία]: Dimitris Papaioannou [Δημήτρης Παπαϊωάννου]
Music - Sound Design [Μουσική Σύνθεση - Ηχητικός σχεδιασμός]: Coti K.; Αssociate Visual Artist [Εικαστικός Συνεργάτης]: Zafos Xagoraris [Ζάφος Ξαγοράρης]; Lighting Design [Φωτισμοί]: Alekos Yiannaros [Αλέκος Γιάνναρος]; Costume Design [Κοστούμια]: Thanos Papastergiou [Θάνος Παπαστεργίου]; Assistant Director - Artistic Production Co-ordinator [Βοηθός Σκηνοθέτη - Διεύθυνση Καλλιτεχνικής Παραγωγής]: Tina Papanikolaou [Τίνα Παπανικολάου]
Première: 14 October 2009, Ziller Building - Main Stage [Κτήριο Τσίλλερ - Κεντρική Σκηνή], National Theatre of Greece [Εθνικό Θέατρο].
Commissioned + Produced by National Theatre of Greece [Εθνικό Θέατρο], 2009 (Artistic Director: Yannis Houvardas [Γιάννης Χουβαρδάς]).
Filmed + Edited by Dimitris Papaioannou; Additional Filming: Kyriacos Karseras, Stelios Kamitsis; Editing Advisor: Matt Johnson; Additional Sound Recording: Kostas Michopoulos International Relations + Communication Manager: Julian Mommett.
Produced by 2WORKS;
上映: 彩の国さいたま芸術劇場映像ホール, 2022/02/05 15:00-16:40.
ディミトリス・パパイオアヌー 『NOWHERE』ディレクターズ・カット版 上映会

2019年に The Great Tamer を彩の国さいたま芸術劇場映像ホールで上演した Dimitris Papaioannou [鑑賞メモ] に関する上映会です。 Nowhere (2009) の上演を Papaioannou 自身が映像化した Director's cut 映像約40分をメインに、 新作 Transverse Orientation (2021) の予告編 (trailer) 約7分をその前に、 後に彩の国さいたま芸術劇場オリジナルのインタビュー映像約20分が上映されました。

Nowhere は、 National Theatre of Greece の Main Stage 改修直後に 当時最新だった舞台機構を使い、まさにそれに対して振り付けしたようなサイトスペシフィックな作品です。 移動床がスライドし奈落が開閉し、迫が上下し、回り舞台が回転し、といった上でパフォーマンスが繰り広げられます。 天井からも、20本前後はあろうバトンをパフォーマーの高さで波打つように動かして、パフォーマーと絡ませます。 開演前、開演後の観客席を映す鏡貼りの舞台幕も劇場自体が主役であることを示しつつも 豪華なクラシカルな客席と剥き出しの現代的な舞台を対比するよう。 開いた奈落を大きな段ボール箱様もので塞いでおき、移動床をスライドしてその箱をせり上げ、最後には壊れた箱の山の様にする場面など、舞台装置の動きも際立ちます。 スクリーンで観ることで、巨大な舞台装置の動きの迫力を感じることができました。

メカニカルな舞台装置を駆使したコンテンポラリーサーカスにも近いものも感じましたが、 スリリングでコミカルな動きで装置の動きを際立たせるのではなく、 装置の動きの中でも淡々とゆっくりとした動きで連想を連ねるように情景を描くところは Papaioanou らしく感じました。 典型的なダンスやサーカスのような身体能力を見せるような動きはほとんどありませんが、 人の動きの面白さを見せる場面もありました。 特に、中盤、男女2人のパフォーマーが裸になる場面 (作品制作期間中に亡くなった Pina Bausch に捧げられ、For Pina と名付けられている)、 一列に並んだパフォーマーが手を並べて繋げ、2本の長い蛇のような腕が男女を脱がせているように見せる演出が印象に残りました。

特徴的な音楽、サウンドデザインという程ではありませんでしたが、 音楽、サウンドデザインは、Coti K. (Κωνσταντίνος Λουκάς Ρολάνδος Κυριάκος)。 2000年前後にギリシャを含む南東欧のアンダーグラウンドな音楽シーンを追いかけていた時に知って 何枚かCDも持っているミュージシャンだったので、こんな所にもつながりがあったのか、と。

インタビュー映像の中身は、Nowhere に関するものと、Papaioannou の経歴、特に影響を受けたものが窺えるような内容でした。 Nowhere 制作時、まだ舞台機構は試験を終えておらず、半ば試験を兼ねるような形になったとのこと。 その一方で、練習する時間を十分に取れ、見た目ほどは危険では無かったというのも、なるほど、と。 影響源としては、Pina Bausch、舞踏、Robert Wilson を挙げていました。 1980年代にニューヨークで 田中 泯 やその弟子に舞踏を教わったこと、 Robert Wilson の下で The Black Rider (1990) の制作に参加していたことなど、興味深かったです。 特に、Robert Wilson との関係は視覚的な舞台作りなど腑に落ちました。 また、影響を受けている映画として Jacques Tati と Buster Keaton というコメディを挙げたのは意外でした。 Keaton の動きはアクロバティックですが、Tati の動きは Papaioannou のゆっくりした動きとも親和性高そうなので、 そういうコミカルな面ももっと見せて欲しいものです。 イタリアの映画監督として確か Federico Fellini を挙げていたように思うのですが、 作風のシュールさはむしろ Pier Paolo Pasolini ぽいと思っていたので、少々意外でした。

予告編を上映した Transverse Orientation (2021) は、 2021年4月22日〜25日に彩の国さいたま芸術劇場大ホールで公演予定だったものの、 COVID-19の影響で延期となっていルもの。 今年2022年6月30日〜7月3日の予定になっていますが、今度は公演できればと願っています。