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Review: 『上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展』 @ 三菱一号館美術館 (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/04/23
Felice "Lizzi" Rix-Ueno: Design fantasy originating in Vienna
三菱一号館美術館
前期2022/02/18-2022/04/10, 後期2022/04/13-2022/05/15 (月休), 10:00-18:00

ウィーン出身で 1920年代までウィーン工房 (Wiener Werkstätte) [鑑賞メモ] で活動する一方、 ウィーン工房主宰の建築家 Josef Hoffmann の下で働いていた京都出身の建築家 上野 伊三郎 と結婚、 1926年には京都に拠点を移して活動したデザイナー 上野 リチ (Felice "Lizzi" Rix-Ueno) の、 戦間期ウィーン時代から戦後日本での活動までを辿る展覧会です。 彼女を取り上げた展覧会としては、2008年から2009年にかけて京都国立近代美術館と目黒区美術館を巡回した 『上野伊三郎+リチ コレクション展 ウィーンから京都へ、建築から工芸へ』展があったのですが、 当時ノーチェックで見逃しました。

テキスタイルデザインを得意とし、建築家 上野 との協働の中でインテリアデザインにも幅を広げていった感がありますが、 ウィーン工房で活動した時期も戦間期ということで、 Jugentstil / Art Nouveau のような有機的な曲線でもなく、 色合いは Art Deco から Mid-century Modern のようでありつつ、スッキリ幾何的なデザインでもなく、 手書きらしい線で図案化されたテザインが特徴でしょうか。 これは多分に自分の好みの問題のようにも思いますが、 こういったデザインよりも、彼女の辿った歩みに、日本におけるモダン・デザインの受容の一つの流れを垣間見るよう。 特に、ドイツのモダニズム建築家 Bruno Taut の1933-36年に日本招聘にも関わっていたことなど、とても興味深いエピソードでした。