Royal Ballet が Christopher Wheeldon の振付で2011年に 『不思議の国のアリス』 (Lewis Carroll: Alice's Adventures in Wonderland, 1865) をバレエ化した作品です。 新国立劇場バレエ団がアジアで唯一の上演権を得て2018年11月に上演、 2020年にも予定されていたもののCOVID-19の影響で中止、やっと再上演が実現したというものです。 2014年に Royal Opera House cinema (ROH cinema) で観たことがありましたが [鑑賞メモ]、 生で観てみるのも良いかと、足を運んでみました。
ROH cinemaで観た時はプロジェクション・マッピングなど駆使したトリッキーな演出に目が行きがちだったのだと気付かされました。 客席から舞台を生で観ているとその印象が薄まって、むしろ、その動きや構成のオーソドックスなバレエらしさを実感しました。 ソロやパ・ド・ドゥ、ディヴェルティスマンにあたる場面はもちろん、 ROH cinema ではほとんど印象に残らなかった群舞、特に flower waltz の美しさや cards の面白さに気付くことができたのは、 舞台全体を把握しやすい劇場での鑑賞ならではでしょうか。
既に一度観ているせいか、生で観たからかは判断しかねますが、観ていて物語もスッと入ってきました。 冒頭の場面で、Alice と Jack の関係が、単なる恋仲というだけでなく、 お屋敷住まいのお嬢様 Alice と邸の雇いの庭師 Jack という身分違いの恋であり、 それゆえに母親は Jack を解雇して追い出す、という設定だったことに気づきました。 これは典型的なメロドラマ設定、それがどう生かされていたのか、改めて期待しながら観ていたのですが、 結局その設定は生かされることなく、結末は現代の女性が見た夢でしたという落ち。 現代にはそんな身分差は関係ないということの表現なのかもしれませんが、ちょっと肩透かし感もありました。
Royal Opera House cinema, National Theatre Live, Met Live in HD など、 それなりに観るようになってから8年ほど経ちますが、 上映で観た作品を、上演カンパニーは異なるものの同じ演出で、生で観たのは、これが初めてです。 上映からも伝わる事は多くあるということを実感する一方、 その違いというか、生で劇場で観てこそという事もある、ということを実感しました。