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Review: Ryan Gander: The Markers of Our Time 『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』 @ 東京オペラシティ アートギャラリー (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/09/18
The Markers of Our Time
東京オペラシティアートギャラリー
2022/07/16-2022/09/19 (月休;月祝開,翌火休;8/7休), 11:00-19:00.

21世紀のイギリスで現代美術の文脈で活動する作家 Ryan Gander の個展です。 国際美術展などでその作品を鑑賞したことはありましたが、美術館規模の個展で観るのは初めて。 コンセプチャルな作風で、作品を視覚的に楽しむというより、 作品リストを片手にそこに書かれた作品のタイトルや説明を手がかりに、少々謎めいた作品を追っていくような鑑賞体験です。

dOCUMENTA (13) での I Need Some Meaning I Can Memorise (The Invisible Pull) [鑑賞メモ] ほどではないものの、額縁の上に置かれた葉巻の吸殻やチューインガムを象った彫刻だったり、 天井に張り付いた風船を象った彫刻、丸められて床に捨て置かれた紙や、監視員の首にかけられたブレスレットなど、 作品によってはぱっと見すぐに気づかないものもあり、説明を頼りに作品を探すという点にも面白さを感じました。 ネズミや虫を象ったアニマトロニクスの作品も、はっきり動きがわかるというより、微かな動きだったり、そもそも動いているかどうか判別し難いものあり、その点も絶妙。 これがグループ展の中の1作品、もしくは、小さなギャラリーでの個展での数作品であれば良いのですが、 美術館規模の100点近い作品数となると、謎を解こうという集中が持たず、惰性で作品を追うようになってしまいました。

そんな中では、イギリス政府ビジネス・イノベーション・技能省 (Department of Business, Innovation & Skills) の公共広告の形を取った “Daydreamers wanted - See how your imagination can shape a better futute” というキャッチコピーを持った広告は、 子供の想像力を実際に称揚するようでもあり、 良き未来を形作ろうという言葉を裏切るようにも感じられる単にぼんやりとしているようにも見える子供の様子からそれを皮肉るようでもあり、 そんなところもイギリスらしいユーモアを感じられました。

Collection Exhibitions curated by Ryan Gander
東京オペラシティアートギャラリー
2022/07/16-2022/09/19 (月休;月祝開,翌火休;8/7休), 11:00-19:00.

2021年に予定されていた個展の代わりに開催された 『ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展』 のうち、4階部分の「色を想像する」 (Colours of the imagination) が再び展示中です。 (残念ながら2021年には観ていません。) コレクションの中から白黒の作品のみを選び、それをギャラリーの壁の片側だけ2〜3段で埋めるかのようにぎっしり展示していました。 反対側の壁は対称的にキャンバスの枠とそこの作品データが表示されています。 モノトーンの密度高い並びも視覚的に渋くスタイリッシュに感じられ、 作品データを知るために反対側のほとんどブランクな壁を観ることを促される感も面白く感じられました。