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Review: SPAC-静岡県舞台芸術センター / 宮城 聰 (演出) 『夢と錯乱』 @ 東京芸術劇場 シアターイースト (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/10/23
SPAC-静岡県舞台芸術センター / 宮城 聰
『夢と錯乱』
Dream and Derangement
東京芸術劇場 シアターイースト
2022/10/15, 16:30-17:30.
演出: 宮城 聰; 作: Georg Trakl; 訳: 中村 朝子.
出演: 美加理.
照明デザイン: 大迫 浩二; 音響デザイン: 澤田 百希乃; 衣裳デザイン: 清 千草
製作: SPAC-静岡県舞台芸術センター
初演: 2021年12月12日, 静岡県舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

2018年に静岡県舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」で上演された Claude Régy (2019年没) 演出による Rêve et folie [Dream and Derangement] [鑑賞メモ] を、 縁があった 宮城 聰 と 美加理 が Régy へのオマージュとして作ったという作品です。 2018年に観た暗闇の中でのパフォーマンスがどのようにリメイクされたのかという興味もあって、観てきました。

暗闇の中でハンドライトを使うオープニングといい、全体として薄暗い照明の中で下でしたが、 Régy のかなり極端な演出と比較してしまうせいか、むしろ、オーソドックスな一人芝居に近い印象を受けました。 淡々とした前半から、丸く敷き詰められた石灰 (もしくは砂) の上でのたうちまたるなど、後半の舞台上の様相の切替などはさすが。 宮城 聰 演出では 美加理 は動き手を演じ語り手は別にいることが一般的ですが、この演出では 美加理 自身が台詞を話します。 一人芝居で喋り続ける 美加理 を観たのは初めてでそれは新鮮ではあったのですが、 通りのいい綺麗な発声で少し高く可愛らしく感じる程で、 表現主義的な Trakl の内容とはミスマッチで台詞が頭に、というか、心に入ってきませんでした。 途中の歌使い (選曲は 宮城 聰) といい、Régy の演出と比べ、かなりポップでとっつきやすい演出に感じられました。 Régy の演出の真似をしても仕方ないので、こういう演出もありかなとは思いましたが、 期待が大きかったせいか、観終わって、違和感の方が多く残った公演でした。

最前列の席になってしまったのだけれど、視線の高さが舞台の高さとほぼ同じくらいで、 舞台上の配置がほとんど分からなかったのも残念でした。 後半の演出の鍵とも言える丸く敷き詰められた石灰も、終演後に確かめて、やっとどうなっていたか分かったという状態でした。 客席中段くらいの高さから観たい舞台でした。