2009年に神奈川県立近代美術館 鎌倉 (現 鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム) で開催された 現代美術の作家 内藤 礼 の個展 『すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している』 [鑑賞メモ] の際に収蔵され平家池に臨むテラスに常設されていた《恩寵》を、 個展当時の作品や新作も交えて 7年ぶりに神奈川県立近代美術館 葉山 で展示する展覧会です。 サイトスペシフィックなインスタレーションという意味合いの強い 内藤 礼 の作品が、 1951年竣工のモダニズム建築から2003年竣工・開館の現代的な建築へ移って、 どのように変わるのかという興味があって、足を運びました。
展示室に入ってすぐの印象は、やはり、 鎌倉の池に面した屋外のテラスでの空気や光を感じる展示に比べ、 海に面した窓があるとはいえホワイトキューブでの展示は味気ないというもの。 しかし、個々の作品に近づいて一通り観た後、インスタレーションされた空間を見るように、 入口側の壁際から遠目に移ろう様子を眺めていたら、 空間が抽象的なだけに、少しずつ抽象画を観ているような味わいになりました。 静止した視野の中で細やかな空気の動きに反応して微かにゆっくりと《風船》が揺れます。 そして、展示室に入った時は陰の位置にあって鈍く光るだけだった水を張った無色透明なガラス小瓶《風船》が、 観てる間に窓から差し込む陽が移動し煌めきはじめます。 そんな、ほとんど白い視野の細やかな変化がとても美しく感じられました。 もっと陽が落ちれば展示室中央に下げられたテグスに無色のビーズを通した《恩寵》にまで陽が伸びて様相がさらに変わりそうでしたが、 さすがにそこまでは待てませんでした。
2021年夏に Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されていた Man Ray の展覧会の巡回です。 既に20年以上前にはなりますが何回か Man Ray 回顧展を観ていますし [鑑賞メモ]、 評伝的なアプローチは苦手なのでスルーしたのですが、ちょうど行った美術館で開催していたので観ました。 確かに女性たちの主体性、Man Ray との対等な関係性も感じさせる展示でしたが、 やはり、21世紀にもなって「ミューズ」の切り口は無いだろうという気持ちはあります。 しかし、初めて見たものも結構あり、回顧展として興味深く観ることができました。 1920年代の Dada / Surrealism の文脈で知られるようになった写真家/美術作家としてその時代の活動に焦点が当てられがちですが、 この展覧会では、WWIIで1940年にパリからハリウッドへ居を移した後、さらに1951年にパリへ戻ってからの活動についても、ウエイトが置かれていました。 戦後の Man Ray の作品は接する機会が少なく、1920-30年代の作品の再制作という印象も強かったので、その点は新鮮でした。
メインの企画展に合わせての日本におけるシュルレアリスム受容についての展示です。 Man Ray に限らず少々広めにスコープを取りつつ、 戦後、宮脇 愛子 と Man Ray に親交があったということで、そこにフォーカスを当てていました。 小企画ながら、無料配布のリーフレットを含め、力の入った展示でした。