1990年代後半から写真を主要なメディアとして現代美術の文脈で活動する 野口 里佳 の個展です。 グループ展やコレクション展で観たことはありましたが、個展を観るのは初めてです。 展覧会タイトルにもなったシリーズ「不思議な力」 (2014, 2022) は、 表面張力や磁力による現象を物理現象としてきっちりとした科学写真らしく撮るのではなく、 背景に台所のシンク下などの室内や支える指先が写っていたりする、まるで日常を撮るかのような写真として撮ってます。 「なるほど表面張力だ」と物理現象として納得する前の、日常の中でふと目に入った時の「あれ?」と思った瞬間を切り取ったよう。 「アオムシ」 (2019) や「虫・木の葉・鳥の声」 (2020) も科学・自然のドキュメンタリーTV番組のような撮り方ではなく、 もっと私的で日常的なものを感じさせます。 そういった所を興味深く観たのですが、形式的な写真が自分の好みということもあると思うのですが、 展覧会全体としては形式的な作風がバラバラに感じられ、ぼんやりした印象になってしまいました。
Prix Pictet は「写真とサステナビリティに関する国際写真賞 (The global award in photography and sustainability)」ですが [関連する鑑賞メモ]、 プリピクテジャパンアワード (Prix Pictet Japan Award) は日本を拠点に活動する作家を対象として2015に設立されたもの。 「火と水」をテーマとした第3回のショートリスト作家の展覧会です。 サスティナビリティに関係するテーマが共通項でスタイルは多様、 国際賞よりもドキュメンタリ的な要素が少なく形式的な作風が多めに感じられました。 そんなこともあってか、 マイクロプラスチック (微細なプラスチックごみ) を鉱物の結晶のように撮った 岡田 将、 多摩川の生態系バランスを崩すほどの川鵜の大群れをモノクロの抽象画のように撮った 水谷 吉法、 炎などをテクスチャ様に撮った 瀧本 幹也 が印象に残りました。