第二次世界大戦直後の1946年にパリにオートクチュール (高級仕立服) のメゾンを開き 「ニュー・ルック」として脚光を浴びた Christian Dior の展覧会です。 デザイナとしての Christian Dior の展覧会と思わせるようなミスリーディングなタイトルですが、 実際はそうではなく、現在に至るメゾンとしての Dior の展覧会でした。 ギャラリストをしていた戦間期や、戦後日本に進出した最初のオートクチュール・ブランドであること、世界展開など、 Dior はデザイナというよりプロデューサ的な面が強かったのだろうと感じさせる展示でした。 1957年の Dior 急逝の後を継いだ Yves Saint-Laurent 以降の代々の主任デザイナを紹介するコーナーもありましたが、 時代によるデザインの変遷を示すような展示ではなく、むしろ、様々な時代の服をフラットに並べた、 非歴史的な展示でした。
去年観たファッション展 Gabrielle Chanel: Manifeste de mode とは全く対称的な展覧会でした。 やはり、Chanel の展覧会の構成の方が、自分の興味・関心には合っています。
1990年代末から現代美術の文脈で活動するオランダ出身ベルリン拠点の作家 Wendelin van Borgh の個展です。 グループ展で観たことがあるかもしれませんが、意識して観るのは初めて。 ヴィデオを主要なメディアとしていて、旧オランダ領ブラジルにおける統治、旧オランダ領インドにおけるラジオ、林芙美子と宮本百合子、など 歴史的社会的なトピックをめぐって対話する様子を核に映像化したものを、ギャラリー内で投影していました。 取り上げているトピック自体は興味深いものがありますし、 テレビやラジオにありがちな一方向性一面性を排した多声性を演出したいのだろうという意図もわからないではありません。 しかし、ギャラリーでビデオを見ている人たちを見ながら、 対話の様子のビデオを映画館ではなくギャラリーで流し、 長時間座るには身体的に不快な階段状の壇や小さな折り畳み椅子に座らせて観客に見せれば、 多声的でインタラクティヴになるわけではないだろうとも。
1990年代に観た Muntadas 展 [鑑賞メモ] を思い出しつつ、 昔からこういう作風が苦手だったな、と。