例年はアニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展ですが、 去年はコロナ禍の影響で東京以外をめぐる国内巡展の形での開催でした。 例年、定点観測的に観ている展覧会ですが [関連する鑑賞メモ]、観るのも2年ぶりです。
サブタイトルの百年というのは関東大震災 (1923) からですが、関東大震災を主題とした作品は特になく、 近藤 聡乃 『ニューヨークで考え中』 (2012-) を導入にもってくるという、コロナ禍における海外在住というサブテーマも感じるセレクションでした。 以前にもエッセー漫画を見かけることはあったものの自分の趣味興味とはすれ違っていた感があったのですが、 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻によって世界が激動する今読むと、淡々とした日常描写が、逆に日常への影響が浮かび上がるよう。 しかし、エッセー漫画のナラティブが強力過ぎて、コロナ禍下の海外研修/在住を題材にした他作品が霞んだ感もありました。
そんなこともあってか、むしろ、コロナ禍を扱わない抽象的な作品、 氷河を抽象画のように撮影した写真を物理的に編んでテクスチャを作り出した 石塚 元太良 《Texture_Glacier》シリーズや、 見るだけでなく角や丸み、表面のざらつきや滑らかな滑りを触って鑑賞する 北川 太郎 の石の彫刻、 2枚の紙をずらして重ねてその境界越しに色鉛筆で荒く塗ることで作ったペアの抽象ドローイングと その制作中の鉛筆先が紙を擦る様子をクロースアップで捉えた 小金沢 健人 [関連する鑑賞メモ] の作品といった テクスチャ感を扱った作品が、特に印象に残りました。