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Review: Martha Rosler: Martha Rosler Reads Vogue: Wishing, Dreaming, Winning, Spending (ビデオ作品)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2023/03/05

国際女性デー (3/8) に合わせて、 渋谷パルコ1階の北側歩道に面したスペースで、セレクトショップ Sister が 『Guerrilla Girls 「F」ワードの再解釈:フェミニズム!』 という、フェミニスティックな匿名アート・アクティヴィスト集団 Guerrilla Girls を紹介する展示をしている (3/3-12, 11:00-21:00) ので観てきました。 偶然通りがかって Do women have to be naked to get into Met. Museum? (1989) を大きくプリントしたウィンドウを見たらそれなりに面白かったと思うのですが、 展示はゲリラ的な小規模なもので、わざわざ観に行く程ではなかったでしょうか。

合わせて、関連企画としてこのビデオ作品の上映がヒューマントラストシネマ渋谷であったので観ました。

Martha Rosler Reads Vogue: Wishing, Dreaming, Winning, Spending
1982 / Paper Tiger Television / colour / 27 min.
YouTube (Official): https://www.youtube.com/watch?v=hBxpB7lgTHY

女性ファッション雑誌 Vogue を繰りつつの、奢侈と搾取と女性規範をめぐる約30分です。 当時、既存のイメージをアプロプリエーションする (引用して文脈操作する) ポストモダン・アートが流行していたわけですが、 まさに Vogue のイメージを題材としての典型的な作品です。 Gang Of Four など同時代の post-punk の歌詞の方法論とも重なることもあり [関連発言]、 同様のフェミニステックかつポストモダンな作風の Barbara Kruger, Jenny Holzer, Cindy Sharman, Sherry Levine, Louise Lawler など、 1990年代に好んで観ていたのを思い出して (この作品は初見でしたが)、少し懐かしく思いながら観ました。

その一方で、1980年代は半世紀近く前になるわけで、そこから ラグジュアリー・ブランドを巡る状況は大きく変わっていますし、 現代アートの状況も大きく変化してますし、 フェミニズムも #MeToo など第4波などとも言われるわけで、 この作品も時代背景込みで観ないと分かりづらそうと思うところもありました。 しかしその一方で、国際女性デーに因んで商業施設などが開催するようになったミモザフェスティバル [銀座, 川崎] のあり方を見ると、Martha Rosler Reads Vogue もまだまだアクチュアリティがあるのかもしれません。 しかし、数年前は国際女性デーの知名度などほとんど無かったわけですが、まさかこんな形でポピュラーになるとは予想しませんでした。

Martha Rosler Reads Vogue は好きな作風ではありますが、 上映に合わせてのトークはまた違う話で、焦点がボケた企画に感じられたのは少々残念でした。