『没後60年 ジャン・コクトー映画祭』が 東京日仏学院でも開催になったので、 1月の恵比寿ガーデンシネマ [鑑賞メモ] で見逃していた2本を観てきました。 もちろん、デジタルリマスター版での上映です。
Disney がアニメーション映画化しさらに実写映画化したことで有名になったフランスの説話 (このうち1756年の Beaumont 版) に基づく映画です。 有名な話ということもあり大筋は覚えていましたが、細部までは流石に覚えておらず、そういう話だったかと楽しめました。 父の犯した罪の身代わりとして、城にて醜い野獣 (la Bête) と暮らすことになった美しい娘 (Belle) が、 最後には野獣から戻った美しい王子と結ばれるという大筋は抑えていましたが、 Disney 版での悪役 Gaston に相当するのが兄の友人に当たる Avenant ですが、悪役というほどではなく、むしろやられ役。 浪費癖が抜けず不誠実な兄や姉2人と働き者で思いやり深い Belle を対比する物語でした。 一緒に暮らすうちに Belle は野獣と打ち解けていきますが、Avenant が身代わりとなって戻った形で、 愛が野獣を王子に戻すという話ではなく、思いやり深さには褒賞あるという教訓話に感じられました。 エンディングは2人で王子の国へ飛んで行くというもので、そんな終わり方だったか、と。
たわいない説話といえばそうですが、 Orphée にしてもそうですが画面合成などを使った特殊効果や非現実的かつゴージャスな表現を好む Cocteau と、 ファンタジックな説話の相性は良く、 デジタルリマスターの美しい画面も相俟って、第二次大戦直後に撮られたとは思えない幻想的な映画でした。
Avant-Garde と関係深かった戦間期に撮った Cocteau の初監督作品にて、 1930年に公開予定が反カトリック的等の理由で公開が1年以上遅れたという経緯のある作品です。 Orphée でも使われることになる鏡抜けの場面や、 客室の扉の並ぶホテルの廊下の場面 (おそらく壁面を水平に近い状態にしてまるで直立しているかのようなカメラアングルで撮って まるでよじ登るかのような不自然な俳優の動きを撮っている) など、 元ネタとなるアイデアが多く観られます。 その一方で彫像のメイクをはじめ特殊効果は不自然というか素朴なもので、 明確なストーリーがあるわけではないものの、 主人公が詩人という点も含め、Orphée の習作のよう。
その一方、詩人のミューズに相当する Lee Miller 演じる彫像が破壊され最後には彫像が復活する展開など、 まさに Man Ray の “Objet à détruire [Object to be destroyed]” (1923) / “Indestructible objet [Indestructible object]” (1957) を連想させられるものがあり、 そんな所に戦間期 Avant-Garde の関係を感じられもしました。