2020年に National Theatre Live で観た Cyrano de Bergerac [鑑賞メモ] も印象的だった The Jamie Lloyd Company の新作が、National Theatre Live でかかったので、観てきました。 19世紀ロシアの作家 Антон Чехов [Anton Chekhov] の戯曲 «Чайка» [The Seagull] 『かもめ』 (初演1896) に基づくものです。
OSB合板のパネルで背景左右をフラットに覆っただけの舞台、 道具は浅い背のプラスチックの座面に細いメタルの足が付いた簡素なスタッカブルな椅子のみ。 照明もほぼフラットな照明で、背景を暗くしたり誰かにスポットを当てるようなこともほとんどしません。 椅子に座るかその脇や壁際に佇むかという程度で、大きな動きを伴う演技はほとんど使わず、 台詞を喋る際の仕草や表情と、椅子や立ち位置の配置で物語っていくという、 まるで、本を持たずに繰り広げられる朗読劇を観るよう。 しかし、ミニマリスティックなだけに、会話とその背景に佇む人のような関係性が強く浮かび上がりますし、 前半にかっちり固められた合板の壁が後半になって外されずらされるときの状況の変化など、 それまでと大きく異なり床に座っての最後の Nina と Konstantin の場面など、 変化が大きく象徴性を強く帯びて感じられます。
舞台は現代に置き換えられてはいましたが、 Cyrano de Bergerac のような置き換えの妙を感じる程ではありませんでした。 第1幕がほぼ省略され、 女優の母親 Arkadina とその愛人の流行作家 Trigorin にコンプレックスを持つ作家志望の Konstantin と、女優ワナビーの恋人 Nina の間の、 ロマンチックというかメロドラマチックな会話を浮かび上がらせるようでした。 そんな会話にフォーカスしつつ人の配置で状況を描くようなミニマリスティックな演出を興味深く観ましたが、 やはり、身体的な動きや舞台の視覚的な変化が少なく台詞で駆動する作品は、自分には少々厳しいかなと感じるところもありました。