1968年に多木 浩二、中平 卓馬らによって創刊され、第2号から森山 大道が参加し、 第3号 (1969) まで発行された写真誌『PROVOKE』を核に構成した、中平 卓馬 と 森山 大道 の2人展です。 展示は1970年前後の『PROVOKE』同時代の作品から2000年代以降の作品までカバーしていますが、印象を強く残すのは1970年前後の作品。 いわゆる「アレ、ブレ、ボケ」の作風は自分の好みからは外れるものの、 被写体と作風の組み合わせは、カウンターカルチャーの時代を強く感じさせます。
この時期の作品の展示にゼラチン・シルバー・プリントの写真がほとんど無く、 森山の写真はインクジェット・ブリントのものがそれなりにありましたが、 中平の写真は資料としての本・雑誌等の展示かそこから起こした映像の投影ばかり。 そんな所にも彼ら重視していたメディアが何だたのかを見るようでした。 20世紀の写真は少々蛇足にも感じましたが、 逗子・葉山界隈で撮られたものが多かったせいか、 『森山大道の東京 ongoing』 [鑑賞メモ] とは違ったゆったりとした時間が感じられ、意外な一面を見るようでした。
1950年代から版画作品を中心に立体や油彩も手がけてきた 加納 光於 の作品を特集したコレクション展です。 今までもコレクション展示などで観たことがあるかもしれませんが、意識して観るのは初めてです。 1980年代以降制作している版画(インタリオ)的な技法も使った油彩作品の、 油彩らしからぬ抽象的なテクスチャの中から象徴的な図形を浮かび上がらせるような画面を楽しみました。
1960年代後半に活動を始め、1974年には 小杉 武久 率いる タージ・マハル旅行団に参加、パフォーマンス的要素の強い音楽活動を展開し、 1980年台に入ってからは環境音楽、サウンドインスタレーション、公共施設の音環境デザインを多く手がけた、吉村 弘 (1940-2003) の回顧展です。 高校生の頃の作品から展示されていましたが パフォーマンス作品など1970年代の活動は、動画が全くないわけではないものの、 楽譜やパンフレット、写真など資料展示がメインで、隔靴掻痒の感は否めませんでした。
その一方で、1980年代以降の活動については、 1985年の5つのビデオ作品もVHSこそデジタル化されていたもののブラウン管を使って上映するなど再現度も高く、 また、公共施設でのサウンド・デザインも丁寧に映像資料化されたものが上映されるなど、体感できる展示になっていました。 あの音も 吉村 弘 だったのかという気付きも含め、興味深く観る/聴くことができました。