コンテンポラリー・ダンスの文脈で活動するフランス出身のダンサー/振付家 Noé Soulier による振付作品の来日公演です。 Soulier は Rosas と関係深いベルギーのダンス学校 P.A.R.T.S. (Performing Arts Research and Training Studios) 出身で、 2020年より Cdnc Anger (Centre national de danse contemporaine) の芸術監督を務めています。 そのバックグラウンドを信頼して、また、Rosas との共演での来日もある [鑑賞メモ] 現代音楽のアンサンブル Ictus が生演奏するということで、観に行きました。
ほぼ剥き出しのブラックボックスの舞台にほぼ白色のフラット気味の照明の中、モノトーンのシンプルなカジュアルウェアのような衣裳のダンサー6人が踊る、ミニマリスティックでアブストラクトなダンス作品です。 物があるかのようにそれを投げる、突く、払う、蹴るといった動作に着想した作品ですが、 日常動作というには大振りですが、マーシャルアーツの動きのような制御された型ではなく、ちょっと無造作さを感じさせる動きから、ダンスが組み上げられていきます。 前半にフロアで絡み合うデュオがありましたが、ダンサー同士が組む場面はほとんどなく、2〜3人のダンサーがシンクロすることがある程度。 Ictus の音楽は打楽器2名によるもので、あらかじめ用意されたものではなくダンスと一緒に創作したとのことですが、 ビートで動きを盛り立てるというとり、動きと音の関係も付かず離れずでそこに緊張感を生むよう。 そんな動きや音から、Rosas からストラクチャの抜いたよう、という印象を受けました。
タイトルは Virginia Woolf の小説 The Waves 『波』 (1931) から採られていますが、 その小説の物語やプロットをナラティヴにダンス化した作品ではありませんでした。 小説中に主観的な身体感覚に関するテキストが3箇所引用され、 作品中の3箇所でそれぞれそのナレーションとそれに合わせたソロがスポットライト中のダンサーによって踊られます。 それはまるで Jean-Luc Godard の映画での字幕のようで、そのテキストによって以降の作品の観方を変えることを狙った異化作用を感じる演出でした。