カンパニーデラシネラ [関連する鑑賞メモ] による 松本 清張 の推理小説『点と線』 (1958) を原作とする舞台作品です。 2009年初演の改訂再制作とのことですが (初演は未見)、未見ながら初演の写真やキャストを見る限り、 舞台美術も全面的に変更し、出演者の数も公募のエキストラ的な出演者30名が加わるなど、ほぼ新演出と言って良いもののようです。
原作が推理小説ということで、さすがにセリフありで、かつ、ほぼ原作の話の流れに沿って舞台は進みます。 一人複数役で役が入れ替わるような時もありますが、 マイム主体で構成するカンパニーデラシネラの作風の中ではかなり演劇寄りの作品でした。 Nicolas Buffe によって描かれた可動式の正方形柱4本が、東京駅の場面での駅の柱はもちろん、 料亭、警察署、家などの壁になり、また、回り舞台も使って場面を転換していきます。 しかし、Buffe の柱を様々に見立てていくことよりも、 回り舞台、柱の動きやパフォーマーによるマイムの動きの切り替えによって、 映像表現におけるモンタージュ、カットバックのような演出を舞台上でどう表現するのかという所に、 面白さを感じました。
カンパニーデラシネラにしては大掛かりな舞台で、メインのキャスト8名に加えて公募による30名のキャストを使い、 東京駅を行き交う群衆や鉄道車両の乗客を表現していました。 この原作ではこれ以上の使い方は難しいだろうとは思いますし、これも一つの試みかなと思いますが、 背景になってしまっていた感もあって、圧倒感、不条理などマスの存在を強く感じるような場面があっても良かったかなとも思いました。