1980年代からメディアアートの文脈で活動する 岩井 俊雄 の作品と、 主に東京都写真美術館所蔵のマジックランタンやゾートロープ (zoetrope) など19世紀の映像装置を組み合わせての展覧会です。 岩井 俊雄 は マジックランタン、カメラオブスキュラ (camera obscura)、フェナキストスコープ (Phenakistoscope) やゾートロープの仕組みに着想しつつ、 ストロボ光源としてTVやプロジェクタを使用したり、ストロボの代わりにステッピングモーターを利用した作品を多く作ってきています。 そのような作品を並置し、 いわいとしお 名義での人気の絵本 『100かいだてのいえ』シリーズ (2008-) の絵をナビゲーションに使うことで、 子供の観客にも親しみやすいよう19世紀映像装置のコレクションを工夫して展示していました。 1年前にも『TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜』という展覧会をやっていましたが、 映像装置コレクションの展示に試行錯誤を感じます。
しかしそのような工夫よりも、岩井 俊雄 の最初期の作品、 ブラウン管TVをストロボ光源として使用して回転する絵や立体をフェナキストスコープのようにアニメーションとして見せる 《時間層 I》 (1985)、《時間層 II》 (1985)、《時間層 III》 (1989)、 そしてTVの代わりに三管式プロジェクタを使った《時間層 IV》 (1990) という一連の作品をまとめて観られたのが収穫でした。 最近の高性能な映像機器を使った映像インスタレーションと比べるとプリミティヴさは否めないですが、 その映像機器の時代を感じるという点でも興味深く観ることができました。 製品として調達も保守も困難なブラウン管や三管式プロジェクタを使った作品を動態で観られるというのは、ありがたいものです。 比較的初期の作品『映像装置としてのピアノ』(1995) も久しぶりに観ることができました [鑑賞メモ]。
実は、この展覧会で、岩井 俊雄 が絵本作家 いわいとしお として活動していることを知りました。 自分にとって 岩井 俊雄 といえば『ウゴウゴルーガ』ですが、 絵本が大きくフィーチャーされる一方、『ウゴウゴルーガ』が全く触れられていなかったのは、やはり、権利関係もあったりしたのでしょうか。