東京都写真美術館のコレクションに基づく展示は、写真と、それに関する写真家自身や批評家などの言葉を並置するという企画でした。 白黒もしくはカラーでも比較的彩度が低い、構図や焦点のコントロールの効いた形式的な画面作りをした、 しかし、抽象度が高いというよりかすかにナラティブが湧き上がってくるような、そんな写真が多く集められていました。 その写真と言葉の組み合わせの妙を、というより、そんな写真たちが作り出す落ち着いた雰囲気を楽みました。
構成としては、Berenice Abbott を入り口に、彼女が見出した Eugène Atget や彼女が師事した Man Ray を補助線に、それらの作風などに絡めて他も選ばれているようでした。 杉浦 邦恵 [鑑賞メモ] など以前に個展を観たこともある作家の良さを再確認したりしましたが、 今まであまり意識して観ていなかった最近の作家の良さに気付かされたりもしました。
寺田 真由美 の写真は、ミニチュアで作られたミニマリスティックでひとけの無い屋内をモノクロで撮ることで、その光の差し加減を前景として浮かび上がらせるよう。 また、陳維 [Chen Wei] の写真は、カラーながら荷物だけの待合室やガラスブロック越しの街の灯でその華やかな街の中にある虚さ寂しさを撮っているように感じられました。