スウェーデンのコンテンポラリーサーカスのカンパニー Cirkus Cirkör の6年ぶりの来日公演は、2013年の作品の再演です [2018年の鑑賞メモ]。 「平和を編む」というタイトルで、Call to Knit という編み物を通して平和を呼びかける運動も公演と並行して進められています。 といっても、舞台作品中の中では前回の来日作品 Limits のような映像投影などによる直接的なコメンタリはなく、 毛糸の編み物に着想した舞台の優しい雰囲気を通して平和への気持ちを感じさせるような舞台でした。
開演直後の舞台上で目に付くのは、上部に回転する吊り下げの機構を持つ高さ約7メートル径約12メートルの櫓、 そこから下げられた解れかけた毛糸の編み物を思わせる白のロープで編まれた穴のあちこちにある巨大な編み物のようなものです。 これは装飾としてだけでなく、上り下りしながらエアリアル的な技を見せる場としても使います。 前半の中頃でそれは下がってしまいますが、代わりに出てくるものも、シルクやトラペーズのような分かりやすくサーカス用の器械を使うことは極力避けられ、 ロープやスラックラインを使うときも複数本を組み合わせ、玉乗りの玉や倒立の台にも毛糸玉をしたテクスチャを付けるなど、 白い毛糸による編み物のイメージでビジュアルが統一されていていました。 基本、白で色が統一されていたので、時々使われる流血を思わせる赤が効果的でした。
そんなビジュアルもあってか、複数本のスラックラインを使って綱渡りしながらフィドルを弾いたり勢いよく回転するスリリングな技も、ほんわかとした柔らかい雰囲気に包むような印象を残しました。 エアリアルやハンドスタンドを使った表現が多用され、エアリアルでも落下技のようなダイナミック技は控えめ。 シルホイールも他のパフォーマーたちにに見つめられながら回ります。 派手な動きで目を引くというより、落ち着いた動きの中でバランスの良さを感じさせるパフォーマンスが多く、それも柔らかいビジュアル・イメージに合っていました。 そして、そんな技とビジュアルに、平和への思いを感じた舞台でした。
音楽は前回来日作品 Limits を含めて Cirkus Cirkör の多くの作品で音楽を手掛ける Samuel “Looptok” Andersson がライヴで伴奏していたのですが、 Knitting Peace では舞台後方の中央上方に演奏ブースが設けられ、 フィドルで時折北欧フォークらしいフレーズも織り込み、 ルーパーなどのライヴエレクトロニクスを効かせたフィドルやパーカッションの演奏の様子を見せるよう。 伴奏の様子が見えることでパフォーマーとの絡みがよりはっきりとして音楽が生きて聞こえました。 ちなみに、2010代前半 (ちょうど Knitting Peace 初演の頃)、 Looptok はスウェーデン/フィンランドのフォーク/ロック/エレクトロニカ混交 (日本ではラジカルフォークと呼ばれていた) のバンド Hedningarna のメンバーとしても活動していました。