The National Ballet of Japan: Ballet Coffret
2025/03/15, 18:30-20:50.
指揮: Martin Yates.
新国立劇場初演: 2010年10月.
L'Oiseau de feu [The Firebird]
『火の鳥』
Choreography: Michel Fokine.
Music: Igor Stravinsky.
Set Designer: Dick Bird; Costume Designer: Natalia Goncharova;
照明: 沢田 祐二.
出演: 小野 絢子 (火の鳥), 奥村 康祐 (イワン王子), 益田 裕子 (王女ツァレヴナ), 小柴 富久修 (魔王カスチェイ).
Premiere: 1910-06-25, Ballets Russes, L'Opéra de Paris; 新国立劇場初演: 2010年10月.
The Vertiginous Thrill of Exactitude
『精確さによる目眩くスリル』
Choreography: William Forsythe.
Music: Franz Schubert. Allegro Vicance from Symphony No. 9 in C-Major, D944.
Stage Designer: William Forsythe, Costume Designer: Stephen Galloway,
Lighting Desinger: Tanja Rühl; Staging: José Carlos Blanco.
出演: 米沢 唯, 直塚 美穂, 根岸 祐衣, 速水 渉悟, 渡邊 峻郁, a.o.
Premiere: 1996-01-20, Ballett Frankfurt, Oper Frankfurt; 新国立劇場新制作.
『エチュード』
Choreography: Harald Lander.
Music by Knudåge Riisager after Carl Czerny.
Staged by Johnny Eliasen; Artistic Advisor: Lise Lander; Original Lighting Design: Harald Lander; 照明リプロダクション: 鈴木 武人.
出演: 木村 優里 (プリマ・バレリーナ), 井澤 駿 (プリンシパル), 福岡 雄大 (プリンシパル).
Premiere: 1948-01-15, Den Kongelige Ballet, Det Kongelige Teater; 新国立劇場新制作.
現代の演目が減ってしまい暫く足が遠のいてしまった新国立劇場バレエ団ですが、
20世紀の演目からなるトリプルビル、それも全て観たことない作品ということで、
2年余ぶりに足を運んでみました [鑑賞メモ]。
前半は Ballets Russes で知られる L'Oiseau de feu 『火の鳥』、20世紀初頭、第一次世界大戦前の物語バレエです。
その音楽を聴いたことはありましたが、バレエの上演として観るのは初めてでした。
第一幕こそ王子や火の鳥のソロがメインの構成ですが、
第三幕の魔物たちの力強い踊りから優雅な囚われの王女たちの踊りまでの大人数をかけた目眩く展開の群舞は見応え抜群でした。
ここまで大人数とは思っていなかったので、この展開の音楽にこういう群舞が付いてたのかと、感慨深いものがありました。
休憩を挟んで後半は対照的にノンナラティヴな作品。
まず、William Forsythe による20世紀末近い1990年の
The Vertiginous Thrill of Exactitude。
Forsythe にしては珍しく電子音ではなくクラシックの音楽を使いバレエ・テクニックに基づく作品ですが、
少々早回しに感じるほどのスピード感はエレガントというより機械的。
ダンサーの配置の幾何的な絶妙さも Forsythe らしいでしょうか。
バレエ・カンパニーのレパートリーになっていることも多いようですが、
チュチュの形状を引用した衣装もあって、クラシカルなバレエのポストモダンな脱構築というか、
バレエの身体語彙を引用したコンテンポラリー・ダンスの印象を強く残しました。
続く Études は戦後間もない1948年の作品。
バレエ・レッスンの形を使いつつ、ライティングやダンサーの幾何的な配置でバレエ・テクニックの本質的な部分を抽出することで、抽象化するよう。
チュチュもクラシカルな物で、20世紀半ばのモダニズム的な抽象化としての抽象バレエを観るよう。
同じ抽象的なバレエでも、直前の Forsythe の作品とコントラストを成し、その方向性の違いを強く感じました。
Forsythe の作品を目当てに観に行ったのですが、L'Oiseau de feu も堪能できましたし、
20世紀初頭の前衛前夜の物語バレエ、ミッドセンチュリーモダンな抽象バレエ、20世紀末ポストモダンな脱構築バレエという
20世紀のある種の流れを感じさせるという点でとても興味深いプログラムでした。