TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ』 @ 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2025/10/12
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
2025/07/15-2025/10/26 (月休;7/21,8/11,9/15,10/13開;7/22,8/12,9/16,10/14休), 10:00-17:00 (金土 -20:00).

1930年代から1970年代の美術が十五年戦争 (満州事変、日中戦争、太平洋戦争) をどう描いてきたかを振り返る展覧会です。 全8章構成で5章までが終戦以前、いわゆる戦争画を中心に構成されていました。 戦線の光景だけでなく銃後の光景、大陸・南洋の風景、歴史・仏教主題、象徴的な表現なども含めて戦時の美術/戦争画と定義し、 その中で軍の委嘱の有無に関わらず前線 (戦闘場面) を記録したものを戦争記録画、 中でも軍に委嘱された公式なものを作戦記録画と整理していました。

戦争画は普段のコレクション展示でも4階展示室で数点は常にかかっているので見たことあるものも少なからずでしたが、 特に戦争記録画がずらっと並べて展示されると、その迫力に圧倒されます。 しかし、興味を引かれたのは、戦場を描いたものより、むしろ大陸・満州を題材したものや、銃後を題材としたものでした。 図らずしも両義的になることが多いというだけでなく、そちらの方が同時代の劇映画との共通点が多かったからでしょうか。

約一ヶ月前に国立映画アーカイブの 『返還映画コレクション (3) ――第二次・劇映画篇』で 戦中のプロパガンダ色濃い劇映画 [鑑賞メモ 1, 2] を観ていたこともあり、それらとの相違が意識されました。 自分の観ている映画に偏りはありますし、 確かに『上海陸戦隊』 (東宝, 1939) や『ハワイ・マレー沖海戦』 (東宝, 1942) のような戦争映画はありますが、 劇映画ではむしろ銃後を舞台としたものが主のように思います。 それも、映画では戦場の再現が難しく、また、戦争記録についてはニュース映画があったということが大きいのかもしれません。 今回展示された戦争画の多くは戦後GHQに没収され接収され1966-1967年に返還された「返還絵画」でもあり、 作品主題の重点に相違はあれど、企画としては国立映画アーカイブの上映企画『返還映画コレクション』と響きあうものを感じました。

戦争画の網羅的かつ体系的な構成もあってか戦後の3章は若干蛇足にも感じられてしまったのですが、 そんな中で目を引いたのは、河原 温『死仮面』(1956)。 1950年代の『浴室』シリーズ (1953-1954) のような作風は知っていましたが、 ここまで風刺色が強い作品もあったことを知ることができました。

コレクション展示4階の通常は戦争画もかかっているギャラリーは1940年の小特集でした。 もちろん戦争画は無く、企画展とは対照的な時局と距離を置いた 松本 竣介 などの作品の小特集のよう。 また、日本画ギャラリーにも戦前・戦中の戦争を主題とした作品が展示されていました。

コレクションによる小企画を展示をする2Fギャラリー4は 『新収蔵&特別公開|コレクションにみる日韓』。 今年収集した2作品と合わせて、韓国・朝鮮に関する主題の作品や、韓国の作家の作品の小特集をしていました。