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Review: Forced Entertainment: Signal To Noise @ 東京芸術劇場 シアターイースト (演劇); Handa Gote research & development: Třetí ruka [The Third Hand] @ 東京芸術劇場 シアターウエスト (人形劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2025/11/09

10月19日日曜は午後に池袋西口へ。東京芸術劇場で 舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」 のプログラム2本をハシゴしてきました。

東京芸術劇場 シアターイースト
2025/10/19, 13:00-14:40.
Conceived and devised by the company; Director Tim Etchells.
Devised and Performed by Robin Arthur, Seke Chimutengwende, Richard Lowdon, Claire Marshall, Cathy Naden, Terry O’Connor.
Dramaturgy: Tyrone Huggins; Lighting Design: Nigel Edwards; Music & Sound Design: Tim Etchells; Design: Richard Lowdon.
UK premiere Sounthbank October 2024.

イングランド北部シェフィールドを拠点とする劇団 Forced Entertainment の設立40周年を記念する作品です。 観るのはFESTIVAL/TOKYO 2013で観た The Coming Storm [鑑賞メモ] 以来、十余年ぶりです。

AI生成でされた音声に合わせてリップシンクで演じる作品です。 しかし、その台詞で物語を展開したり、台詞の内容に応じた心情を自然な表現で演じるものではありません。 その音声の内容は登場人物の心情を描くというより舞台の進行に関するものも多く、反復が多く、次第に断片的なものも多用されるので、 次第にそういう音声を使ったメロディの無いコラージュ的な音楽を聴いているような気分になります。 AI合成音声の内容の空疎さはもちろん、それに合わせてリップシンクしながら、少々キッチュな衣装を着替え、舞台上の家具等を移動し、掃除し、という動きをひたすら繰り返して、という意味を感じられない動きから、その形式が浮かび上がるよう。

抑揚はあるものの妙に単調でゆっくりとした女声のセリフが催眠的でしたし、おそらく意図的な空疎さ退屈さもありましたが、 演劇というよりAI生成音声をコラージュした音楽を使ったダンス作品を観るような興味深さもあった舞台でした。

Třetí ruka [The Third Hand]
東京芸術劇場 シアターウエスト
2025/10/19, 15:00-16:15.
Připravili [Devised]: Švábová, kosmo_nauty, Dörner, Procházka
Obsazení [Cast]: Tomáš Procházka, Veronika Švábová, Jan Dörner / Vavřinec Němec.
Technocal staff: Jan Dörner / Vavřinec Němec; Production co-ordinate: Jakub Hora; Produkce [Production]: Jedefrau.org.
Premiéra: 4. 11. 2023, Alfred ve dvoře, Praha.

チェコ・プラハを拠点に活動するオブジェクト・シアターによる公演です。 といっても、抽象的なオブジェを操るモダンな演出のものではなく、 伝統的な人形劇に準じた舞台を用い、しかし操り人形ではなく、おもちゃの人形などのオブジェを使い、 台詞は用いずに、物語るというよりシュールレアリスティックなイメージを連ねていくような作品でした。

高さ2.5m幅2m程度の衝立の中央上部に幅60cm高さ40cm程度の開口部が設けられ、そこが人形劇の舞台となります。 演じるのは男性2人女性1人の3人。衝立の裏にずっと隠れているわけでなく、時折衝立前でマイムで進行など演じ、 衝立の上手にはDJブースが置かれ、男性1人がライブで音楽が添えました。 衝立はカトリックのお祭りで使われそうな手作りの刺繍の布で飾り立てられ、 開口部にはやはり刺繍の緞帳を使い、時に2重3重のプロセニアム・アーチを立てて、 そこを舞台に、せいぜい十数cm程度の大きさの、安価なおもちゃの人形、ぬいぐるみ、その他ガラクタのようなファウンド・オブジェを並べ動かして場面を作っていきます。

作り出すイメージは、強権的な政治や虐殺も思わせるものから、脱力するようなユーモアを感じるものまで。 ラストはいわゆる Memento mori に Goethe の今際の言葉 Mehr Licht と、死のイメージ色濃いものでした。 音楽使いも、幕間などにノスタルジックな音楽を使いつつも、音声の断片などの具体音をまぶしたelectronia / dub technoな音楽使い。 脱力するような可愛らしさと不気味さグロテスクさが同居するような公演でした。

終演後は観客を衝立の後ろにまで自由に回らせ、舞台裏の上演に使った大量のオブジェを間近に見ることができるようにしていましたが、そんな所も人形劇のお約束でしょうか。