南米チリ出身で、クーデターと Pinochet 独裁を経験後、1982年に渡米、ニューヨークを拠点に現代美術の文脈で活動する作家の個展です。
最初期1970年代チリ時代の作品から、この展覧会のための新作までを辿る、回顧展的な内容でもあります。
受賞した 『プリピクテ Storm/嵐』 Prix Pictet: Storm [鑑賞メモ] の印象も新たですが、
このようにまとまった形で観るのは初めてです。
初期の作品を中心とした小規模な作品を集めた最初のギャラリーの展示は観念的に過ぎるかなと思いましたが、
1985年にブラジル東北部の露天掘り金鉱山 Serra Pelada の劣悪環境下で働く零細鉱夫 (Garimpeiro) を撮った写真に基づく «Gold in the morning» (1985/2002) や、
1994年にボスニア紛争に取材した «Europa» (1994) など典型的ですが、
報道写真としても成立するような写真を撮りつつ、それに、このような写真を撮る/観ること意味などを自省するメタな視線も加え、
ライトボックスや鏡も使った視覚的にもスタイリッシュなインスタレーションに落とし込みます。
もしくは、南アフリカ出身の報道写真家 Kevin Carter の1994年の Pulitzer Prize 受賞とその2ヶ月後の自殺を取り上げた «Sound Of Silence» (2006) では、
Carter のバイオグラフィ的な歩みを淡々とした語りと字幕のみで抑制的に示す展開から、
一転 Pulitzer Prize 受賞作で «The Vulture and the Little Girl» 『ハゲワシと少女』を示してフラッシュすることで、
報道か人命かとという議論を強く印象付けます。
『プリピクテ Storm/嵐』のようなグループ展の中で1作品だけ観ただけではわかりづらいメタな視点も腑に落ちるところがあり、 インスタレーションとしての仕上がりも上手いなと感心する展覧会でした。 しかし、主題的にもそういう所は狙っていないのかもしれませんが、観ていて「良かった!」という感じにならなかった展覧会でもありました。