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Review: 清水 宏 (監督) 『蜂の巣の子供たち』 (映画); 清水 宏 (監督) 『その後の蜂の巣の子供たち』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2026/03/15

シネマヴェーラ渋谷の特集特集『生き続ける清水宏』で、未見だったこの2本を観てきました。

『蜂の巣の子供たち』
1948 / 蜂の巣映画部 / 84 min. / 35 mm / 白黒.
監督: 清水 宏.
島村 俊作 (復員者), 夏木 雅子 (引揚者), 御庄 正一 (叔父貴と言ふ男); 久保田 晋一郎, 岩本 豊, 三原 弘之, 平良 喜代志, 硲 由夫, 中村 忠雄, 川西 清 (戰災児); 千葉 義勝 (引揚児), etc.

教護施設育ちで身寄りの無い復員兵の島村が、下関駅で出会った戦災孤児たちと仕事を求めながら瀬戸内を東へ行く、 最後は島村が戦前にいた学院「みかへりの塔」 (戦前の清水 宏の映画『みかえりの塔』 (松竹大船, 1941) から採られている) に辿り着くというオールロケのロードムービー的な群像劇です。 引揚してきたものの頼れる身寄りを広島の原爆で失い神戸パンパン (売春婦) になろうという所を島村に救われる夏木、 下関駅では戦災孤児たちの犯罪グループの元締め、終わり近くの神戸ではパンパンの女衒と裏稼業に手を染めるが最後は改心して共に学院へ向かう隻脚の「叔父貴」を含めた群像劇的な面もあります。

当時、清水が引き取って育てていた元浮浪児たちを使った彼らの身寄り探しという面もあり、 助監督、カメラマンを除き、プロの俳優やスタッフを使わずに制作されたという映画です。 確かに、滑舌の悪い子供たちの台詞など聞き取りづらく、特に前半は厳しいものがあると感じましたが、 次第にその世界に慣れて気にならなくなりました。 その俳優的な演技に頼り過ぎない抑制的な語り、厳しい状況を扱いつつも人情的なユーモアを忘れない所、そして、映画の中で多く使われている道ゆく一団を捉える遠景の構図の決まり方など、清水 宏らしさを楽しみました。

しかし、それだけでなく、終戦直後の日本の様子、特に行き場を失った復員兵や引揚者、孤児などが終戦直後の過酷な時代をどう過ごしていたのか伺われるようで、その点も興味深く観られました。 まだ近代化がさほど進んでおらず工場が立ち並んでいない瀬戸内の様子、戦災を免れた岩国の錦帯橋の姿や、復興が進んでいない瓦礫だらけの焼け野原となった広島の様子が捉えられていることろも、興味深く観ました。

『その後の蜂の巣の子供たち』
1951 / 新東宝/蜂の巢/清水プロ / 94 min. / 35 mm / 白黒.
監督: 清水 宏.
岩本 豊, 久保田 晋一郎, 三原 弘之, 千葉 義勝, 中村 貞雄, 川西 清, 硲 由夫, 平良 喜代志, 若林 令子, 麥田 シゲ子 (蜂の巢の子供たち); 大庭 勝 (大庭), etc.

『蜂の巣の子供たち』の3年後にその続編として撮られた映画です。 といっても、その物語の続きではなく、出演した子供たちが共同生活をする熱海近くの山中にある「蜂の巣」の様子を描いた映画です。 映画『蜂の巣の子供たち』を観たりその後の取材の雑誌記事を読んだことをきっかけに、手伝いたいという若者たちや、収容を望む浮浪児たちが訪れるようになります。 そんな彼らによって波風が立つ様子を、細かいエピソードを積み重ねるように、ユーモアも含めて描いて行きます。 最後は、浮浪児時代に世話になったことがあるという理由で新たに受け入れた浮浪児2人が他の人の物を盗んで脱走し、彼らを追いかけて大阪へ行くという大きな展開はありますが、 それも収まり日常へ戻って終わります。 子供の描写や美しい遠景など清水 宏らしさを楽しみましたが、 大阪に行く展開の所以外はほぼ「蜂の巣」内で展開するので、前作に比べると少々物足りなかったでしょうか。

清水 宏 はその後、戦災孤児を出演させた映画をもう1作、『大佛さまと子供たち』 (蜂の巣映画部, 1953) を撮っています。 今回は見逃しましたが、いずれ映画館で観たい物です。

今回の特集上映では、清水 宏 (監督) 『有りがたうさん』 (松竹蒲田, 1936) も観ました。 この映画はDVD/YouTubeで度々見返していますし、十余年前に書いた鑑賞メモに付け加えることはありませんが、国立映画アーカイブのフィルムでの映画館上映で観るのはまた格別した。 現在の暗い世相、そして、昭和恐慌や二・二六事件という映画公開当時の暗い世相を思いつつ、そんな中でのユーモアと人情が沁みます。 今回の特集上映で観るのはここまででしょうか。 『蜂の巣の子供たち』の中で間接的に言及されていた『みかえりの塔』 (松竹大船, 1941) など、 観られていない 清水 宏 の映画はまだまだあるので、今後の上映の機会を捉えて観たいものです。