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Review: Tiago Rodrigues: By Heart 『By Heart—心で覚える』 @ ロームシアター京都 (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2026/10/11
Tiago Rodrigues
ティアゴ・ロドリゲス『By Heart—心で覚える』
ロームシアター京都 サウスホール
2026/10/03, 18:30-20:30.
Text: Tiago Rodrigues, with fragments and quotes by William Shakespeare, Ray Bradbury, George Steiner, Joseph Brodsky, among others
Written and performed by: Tiago Rodrigues
Set, props and costume: Magda Bizarro
Executive production: Festival d’Avignon; Based on an original creation by the company Mundo Perfeito; Coproduction: O Espaço do Tempo, Maria Matos Teatro Municipal.
Show premiered at 20th of November 2013, at Teatro Maria Matos, Lisbon (Portugal)

2025年にSHIZUOKAせかい演劇祭で上演した Dans la mesure de l'impossible 『〈不可能〉の限りで』 が素晴らしかった Tiago Rodrigues が、 今年も KYOTO EXPERIMENT に出演ということで、京都へ足を運びました。

By Heart は、Tiago Rodrigues 自身と開演直後に観客から募る10名で作り上げる、観客参加型の舞台作品です。 ほぼ裸の舞台に11脚の椅子が並べられ、その前に本の入った木箱が置かれています。 客入れの時からうち1脚に Tiago が腰掛け本を読んでおり、やがて、祖母にまつわる、もしくは、読書に関するエピソードを語り始めます。 そして、観客から10名を募り、14行からなる William Shakespeare のソネット30番を、 最初の4行は声を合わせて、残り10行は1行ずつ口伝えで教えつつ暗唱をすることを求めます。

そんな口伝えでの教えつつ暗唱する合間に、抑圧的な政治体制下での暗唱のエピソードが、 私的なエピソードも交えつつ、Tiago が暗記したそれに関係する書物の一節を引きつつ、語られていきます。 フィクションですが Ray Bradbury のディストピア小説 Fahrenheit 451 『華氏451度』の、昇火士の仕事や、本を記憶している亡命者のエピソードや、 大粛清でグラーク送りで死んだ詩人 Осип Мандельштам [Osip Mandelshtam] の暗唱で詩が継承されたエピソードなど。 舞台上で実演している暗唱のプロセスも、抵抗の一つのあり方になりうるものだと示すかのように。

そして、そんな抵抗としての暗唱、暗記のエピソードを交えつつ、最後には、観客参加型で詩を暗唱するプロセスを、 老いて視覚を失いつつあった祖母が本が読めなくなった時のために覚えた Shakespeare のソネット30番を暗唱するというエピソードへと収束させます。 10人の観客が舞台上の2時間でようやく覚えたばかりで定かでない辿々しい詩の暗唱だからこそ、祖母の詩のそうであろう暗唱の様子と重なり、心を打ちます。 最初はあまり関係が無さそうな複数のエピソードが、最後に焦点が合いくっきりと像を結ぶような、そんな話の運びが見事な舞台でした。