- 弦巻, 東京, Tue Nov 6 0:03:43 2001

昨晩 (Mon Nov 5 0:05:30 2001)、少なくとも日本の大道芸イベントにおいて、 出演パフォーマーなどの名前の表記が非常にイイカゲン、 ということに軽く触れましたが。それがどの程度か、ということで。

トリのマーク (通称) の 柳澤 明子 さんが挙げている3つのカンパニーの最初は「オルストラート」ですが、 『大道芸ワールドカップin静岡』では、 ずっと「ホース・ストラート」と紹介されています。 (例えば、ここ。) 今年のパンフレットは十周年記念ということで過去に出場したパフォーマーを全て 写真入りでリストアップしていたのですが、そこでは、 「ホース・ストラート / Horse Strauta 」となっていました。 ちなみに、実際のカンパニー名は Hors Strate です。 カナ表記は 柳沢 さんの「オルストラート」が最も妥当なように思います。

柳澤さんが2番目に挙げている「ル・ピエトン」ですが。 彼らも、過去に『大道芸ワールドカップin静岡』に参加したことがあるのですが、 そこでは「シアター・ル・ピエトネ / Theater Lue Pietonne」となっています。 ちなみに、実際のカンパニー名は Rue Pietonne。 (Theatre や Compagnie (Cie) を付けるかという問題はありますが。) カナ表記するなら「(テアトル・) リュー・ピエトン」でしょうか。 ちなみに、『テアトル・ド・リュー東京』では「リュー・ピエトン」 『三茶de大道芸』では「リュ・ピエトン / Rue Pietonne」とこちらはまともでした。

で、今年の『三茶de大道芸』と『テアトル・ド・リュー東京』に参加していた「ビック・ブラザーズ」ですが、 会場配布のパンフレットでは "Les Bigbrozeurs" となっていましたが、 ウェブでは "Big Brothers"。 しかし、実際のカンパニー名は Cie Albedo で、 イベントで使われていたパフォーマー名の元と思われる Les Bigbrozeurs というのは、その演目作品の題名だったりします。

演目作品の題名がパフォーマー名になってしまう、というのは、これに限らずよくある話で、 今年の『大道芸ワールドカップin静岡』の 十周年特別企画 で来ていた「ヘルパードリーム / Herbert's Dream」も、実際は、作品のタイトル Reve d'Herbert から来ているものでした。 (しかし、題を英訳しているのならカナ表記は「ハーバーツ・ドリーム」だろう、とも思いますが。) ちなみに、これによると、 Inko'Nito と Cie des Quidams の 2つのカンパニーによる作品ということのようです。

すこし前までは、インターネット上に大道芸やサーカスの情報が少なく、 特に業界・関係者の知り合いなどがいない僕には 大道芸イベントのパンフレットくらいしか情報源が無く、 パフォーマーの名がこういうふうにイイカゲンに扱われていることには 最近まで僕も気付いていませんでした。 こういうことに気付くようになったのも、 インターネットを介して自分で独自に情報を集められるようになってからですが。

こういったパフォーマーの扱いのイイカゲンさに呆れる、というか、 制作する方ももう少しちゃんと調べろよ、と思うところも少々あります。 どうせ間違っていても観客は何も知らないから判るまい、とか、 制作側が思っているとしたら、ちょっとイヤだなぁ、とも思います。 特に、『大道芸ワールドカップin静岡』は、 世界でも名の通ったフェスティバルとか自称しているわけですし、 パンフレットやサイトでは英語での表記もしているわけで、 こんなイイカゲンなことしていて恥ずかしくないんでしょうか。 Avignon Public Off のパンフレットなんて そのままカンパニーのディレクトリとして使えるような作りだったわけですが、 今年の『大道芸ワールドカップin静岡』のパンフレットは完全保存版とか銘打ってますけど、 パフォーマーの名前すら怪しくて、そういう点での資料的な価値があまり無いんですよね…。 (こういう違いも、Avignon に何を観に行ってきたの? と思うようなことなのですが。)

しかし、その一方で、パフォーマーの名前や作品の題名がいい加減に扱われていて、 それがほとんど問題とされていない、というあたりを見ていると、 この表現ジャンルにおいては、アートのイデオロギーというのは ほとんど効いていないのだなぁ、とつくづく思います。 アート的な作家性・作品性といったものが重要であるのであれば、 それを特定するパフォーマーの名前や演目作品の題名というのは、 重要なものとしてもっと丁寧に扱われるはずだと思うからです。 やはり、制作する側も観る側もほとんどが、 非記名的な芸人による非作品的な芸に近い意識で接しているのだろうなぁ、と。

ま、綴りが間違っているとか、カタカナ表記がイイカゲンというのとは別に、 パフォーマー名と演目題名が混乱している、ということについては、 演目題名なのかその演目のための別の芸名・ユニット名なのか 区別しがたい場合があるせいもあると思っていますが。 それにしても「ビック・ブラザーズ」や「ヘルパードリーム」は、 そういう場合とはちょっと違うような気もします…。