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『今日の早川さん』について

[1956] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jul 2 22:25:49 2007

もう半月ほど前の話になりますが、2週間前の土曜に、 友人のバースデーパーティに顔を出してきました。 プレゼントに「家に置いておくのが恥ずかしいもの」というお題が出ていたので、 秋葉原で何か萌えグッズでも見繕おうかと、土曜の午後2時間弱、秋葉原を探索しました。 2000年代に入ってすっかり足が遠のいてしまったとはいえ、噂は耳にしてましたが、 まさかここまでになっているとは思いませんでした。 何が一番驚いたかというと、18禁の店がたくさんあって、 それも白昼から普通に客が出入りしていること。 「家に置いておくのが恥ずかしいもの」というのは「買うのも恥ずかしいもの」というわけで、 結局、その手の店に足を踏み込む度胸がなく、ふつうの電気店でも売られている 萌え絵のおでん缶 にしてしまいました(弱)。

しかし、プレゼントを探している最中にふと気付いたのですが、 長年、誕生日を祝ったり祝われたりということに縁が無い生活してる (ダメ) なので、 少くともここ20年近く誕生日プレゼントしたという記憶がないという。 そんなめったにない誕生日プレゼントする機会に選んでいるのが 萌え絵おでん缶というあたり、ダメ度が高すぎる…… orz。 ま、プレゼント慣れしてないので、 「家に置いておくのが恥ずかしいもの」みたいなお題があった方が気楽ですが。

自分は秋葉原にいるようなオタクとは違う、と言いたいわけではなく、 むしろ、少くとも1990年代までは、 世間一般から見れば自分も秋葉原を歩くようなオタクの一人だったと思っています。 実際、1990年代まではコンピュータ関連の情報収集やパーツ漁りにそれなりの頻度で秋葉原を探索しに行っていましたし。 ちょっとした偶然でアニメ・マンガ・アイドルのようなオタクの典型といわれるような趣味ではなく インディでオルタな音楽だったり現代アートだったりが趣味になったという程度で、 世間一般から見れば普通にオタク、というか。 それだけに、その変化に驚きました。 ま、2時間ほど歩き回っただけですし、多くは語りませんが。

一部でそれなりに話題になって書籍化も決まったので知っている人もいると思いますが、 『今日の早川さん』 というブログ (というか、はてな) で連載されているマンガがあります。 自分の「オタク」という言葉のイメージは、 現在の秋葉原とかを鍵に語られるようなものではなく、 このマンガで描かれているようなものにけっこう近いのかなと思っています。 このマンガは、去年の秋頃、たしか岩波さんが登場した頃から読んでいるんですが、 とても面白く読ませてもらってます。

TFJ (Trout Fishing in Japan / 日本の鱒釣り) なんていう小説から採ったペンネームを使っているくらいで (最近は積極的には使ってませんが)、 特に高校から大学にかけては、それなりに小説読みだったということもありますし (今では小説読みはすっかり卒業してしまいましたが)。 現在の自分の趣味の一つである音楽のマニアの世界でも似たような話が多いように思います。 そこが面白く感じる所です。 というか、この『今日の早川さん』を読んで最初に思い出したのが、 『ジャズ批評』誌等に連載されたジャズマニアやレコードコレクターの生態をネタにしたマンガを集めた ラズウェル細木 『コンプリート・ジャズ・コミック・コレクション』 (双葉社, ISBN4-575-28195-6, 1992)。こちらもお薦め。 その小説読み版が『今日の早川さん』というか。

『今日の早川さん』の良くできているところは、 ポピュラー文化における価値判断イデオロギー (Simon Frith, Performing Rites というか) の類型をうまく擬人化してネタにしている所だと思います。 だから、他のジャンル (例えばポピュラー音楽) にも共通する普遍性を感じるように思います。 岩波さんはアートのイデオロギー。 ポピュラー音楽で同じような話を作るなら、 プログレ (〜ジャズ、クラッシック) オタクあたりが対応しそうです。 富士見さんは、普通にポップのイデオロギーというか、Jポップの聞き手あたりとか。 早川さん、帆掛さんは、その中間あたりなのですが、 ロックだと、indie/alt と HR/HM の住み分けとか対応するのかな、と。 そういえば、フォークのイデオロギーに相当するキャラ (同人誌好きになるのかな?) がまだ無いかも。 ちなみに、自分は早川さんキャラかしらん。 周囲からは岩波さんキャラとして見られてるかもと思うときも時々あったり……。むむむ。

ま、実際のところは、自分 (もしくはその筋の友人) がやってる (もしくは、かつてやってた) ようなことがネタにされていたりして、 「それって、あるある」とか思いながら、苦笑しつつ読んでます。 最近のものの中でツボにはまったのは、 「けだもの目覚める」 (といっても既に3ヵ月前か)。 自分も、このサイトで書いているような趣味の話は、職場や近所付き合いでは控えてます。 「jazz が好き」とか言って「Blue Note が〜」みたいな話になったり、 「週末はよく美術館へ行く」と言って「印象派が〜」みたいな話になったりすると、 逆に話を合わせるのが非常に難しくなりがちなので、むしろそういう話はしないほうが無難。 そして、そういう趣味の話題の選びかたを考えさせられるとき、自分は「オタク」なんだと実感させられます。

と、ネタとなるCDはあれどレビューを書く気分になれないし、 写真入りバースデーパーティのレポートが載ったことだし、 軽く酔った勢いで、ちょっと軽めのネタで徒然と (若干自爆気味か)。