edogawa's diary 02-03 #28. 『そういえば「白いブランコ」ってそれは』
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2003.05.19.Mon. 15: 45 p.m.
BGM : 阿川泰子『Skindo le-le』

 週末は、土曜も日曜も北の丸公園の科学技術館へ。試しに行ってみたらセガレが妙に気に入り、2日続けて足を運んだのだった。もう少しアイデアにカネをかければいいのになぁと思わないでもないが、雨の休日に子供を遊ばせるには都合のいい場所である。安上がり(おとな2人&こども1人で入館料1450円)だし。セガレがハマったのは、CGで自動車をデザインする「ドリームプラン」というものだった。2日間で40台ぐらい作ったんじゃないだろうか。とくに自分の作った車に名前をつけるのが面白いようで、そのあたり、志向があまり科学技術的ではない。私も「ゴーゴーラツィオ」という水色の車を作ったりして遊んだ。父親が理系だったら、こういう場所でもっと子供を楽しませられるのになぁと思う。原子炉の模型とかプラズマ発光装置とか見せられても、わしには何のことだかわからん。じゃあ文系の施設で私が頼りになるかといったら、決してそんなことはないのだが。私は文系なのではなく、単に「非理系」なだけなのだった。たぶん、文系を自称する人の60%ぐらいはそうだと思う。ちがうの?

 WOWOWで録画した『突入せよ!「あさま山荘」事件』を金曜の晩に観た。私は当時8歳だったから、あの事件をリアルタイムで体験した記憶を持つ最後の世代なのかもしれない。あの鉄球シーンをどこで見ていたかというと、青函連絡船の中で見ていた。親戚の結婚式に出席し、北海道から帰る途中だったのだ。そのときは何のことだかわからなかったが、いま思えば、あの親戚もえらいときに結婚式を挙げたものである。で、映画だが、おもしろかった。「映画の原作を読んだ人は必ず原作のほうが面白いと言う」はよく知られた定理であり、佐々さんの原作を読んだ私としても「原作読んでないとわかりにくくないか?」と心配になる部分が多々あったけれど、それはともかく活劇としてよくできてると思いました。見終わった後、意味もなく頭を低くして歩きたくなったのは私だけではないだろう。子供の感想文みたいだが、ぴゅんぴゅん飛んでくる銃弾の怖さが身にしみた。機動隊の大盾は頼もしい。たしかあの事件では、ストックホルム症候群に陥った人質が、救出後、犯人グループに同情的な発言をして機動隊員をガッカリさせたというエピソードがあったと記憶しており、あれが織り込まれていたらクライマックスが台無しだよなぁと心配していたのだが、やはり描かれていなかった。映画的じゃないから当たり前だけど。実録モノは、何かを端折らなければわかりやすくならない。それにしても長野県警の描かれ方は、わかりやすすぎて気の毒だった。長野県警をカッコよく描いた「あさま山荘事件物語」は可能だろうか。

 土曜の晩は、アーセナル×サウザンプトン(FAカップ決勝)をライブ観戦。副音声の英語実況で観た(あえて理由は書かない)のだが、これはこれで眠くなっていかん。ゲーム自体ものっぺりした感じで、プレミアらしいところが少なかったと思う。プレミアじゃないんだけど。ともあれ、終始うとうとしながら観ていたのでよくわからないのだが、1-0でアーセナルが1冠を確保した模様。サウザンプトンは、ファンも含めて、決勝進出で満ち足りてしまっていたのだろうか。スタンドのおっさん、キックオフ前に感極まって泣いてたらあかんわ。

 ゆうべは、ラ・コルーニャ×バレンシア(リーガ第34節)をビデオ観戦。1-2でデポルが不覚。唯一の得点は、際どいところでカニサレスが弾き出したボールを主審が(無理やり)ゴールと認定したものだったが、あんなラッキージャッジで同点に追いつきながらそれを勝ち点に結びつけられなかったのは辛い。逆に、あの逆境を跳ね返して勝ったバレンシアは立派だと思いました。ファビオ・アウレーリオの勝ち越しゴールがおもしろかった。ちゃんと説明するのは面倒臭いが、外へ行くと見せかけて内へ入り、外へ行くと思ったマヌエル・パブロが内にトラップしたボールをかっさらってペナまで一人旅。こんな説明でわかるとは思えないが、とにかくおもしろかった。まあ、まだ見てない人は再放送か何かで見てください。




2003.05.16.Fri. 11: 20 a.m.
BGM : 阿川泰子『Skindo le-le』

 ゆうべは、某書の重版を祝して、S社インターのM部長&N夫さん(ニューカッスルファン)と銀座ペントハウスで会食。私は3度目だが、ここのステーキはいつだって最高だ。外はカリカリ、中はジューシーに焼き上げられた肉を、箸でつまんでカラシ醤油にべちゃべちゃ浸してから口に放り込むヨロコビは、よその国の人間にはわかるまい。ニッポン人の愛国心とは、箸とカラシ醤油を守るためにあるのではないかとさえ思った。腹に肉を詰め込んだあと、電通通りのバーで一杯。カウンターに置いてあった灰皿(洋酒メーカーのロゴ入り)がやけに気に入った。どういうことなのか自分でもよくわからないのだが、私は灰皿に目がないほうなのだ。旅先でも、土産物売り場で灰皿を物色することが多い。もう時効だから白状するけれど、六本木の焼き肉屋でその店の灰皿がどうしても欲しくなり、お持ち帰りしたこともある。とてもイケナイコトです。で、カウンターの灰皿を撫でながら「いいなー、この佇まいがたまらないんだよなー、欲しいなー」とウットリしていたら、バーテンダーが「灰皿がご趣味で?」と微笑みつつ、「それは余りがなくて申し訳ないんですが」と言って、べつの洋酒のロゴが入った灰皿を3種類もくれた。言ってみるものである。人は、こんなことをきっかけにコレクターへの道を歩み出すのかもしれない。

 はてなアンテナ探索中に出会ったプラッチックというサイトで「やりがいのある150の質問」というものを見つけ、なんとなくやり始めたら止まらなくなってしまい、気づいたら最後まで答えていた。計画だけで少しも実現しそうにないFAQの代わりというわけではないのだが、お暇ならここを見てちょ。質問に答えるのは疲れるということがわかった。




2003.05.15.Thu. 13: 40 p.m.
減量状況 : 目標体重まで、あと2.6kg

 いやはや、朝っぱらから観てきたのである。ユベントス×レアル・マドリー(CL準決勝第2戦)だ。がっはっは。ざまあみろだ。私が威張ることはないけどね。ざまあみろだよ。序盤からユーベはすばらしかった。誰がすばらしいって、ダビッツとザンブとビリンデッリだ。奪う奪う。とりわけビリンデッリはえらい。あんなに使えるとは知らなかった。私に言わせれば、試合を決めたのは前半5分のビリンデッリのプレイなのだね。ペナで前を向いたジダンから一対一でボールを奪い去ったあのディフェンス。あれで「行ける」と思ったよ。誰がって私がだ。ビデオだから、私が「行ける」と思ったのは試合終了の3時間後ぐらいなんだけど。トレセゲの先制ゴールは、その7分後だった。いや、試合終了の7分後じゃなくて、ビリンデッリのボール奪取から7分後だよ。当たり前じゃないか。試合が終わってからゴールは決まらないじゃないか。サッカーの基本だ。何を書いているのかよくわかんなくなってきた。試合を観てから1時間後に日誌書き始めるなんて珍しいからね。まだ興奮しているのだ。右サイドを深くえぐったネドベドのクロスをデルピが頭で落とし、トレセゲが直角に上げた左足でダイレクトシュート。狭い狭いコースを通過したボールは、カシージャスの脇腹をかすめて行ったのだった。わーい、わーい。

 ウノゼロで勝つには先制するのが早すぎて心配だったが、その後もユーベはぐいぐいだ。テュラムもぐいぐい、ダビッツもぐいぐい。デル・ピエーロのゴールは、トゥドールのクリアからだった。クリアじゃなくてフィードって言うのか。でもクリアだよな、あれ。ぽよ〜んと前線に飛んだボールをデルピがペナ内でトラップ、くるっと回ってにゃんこの目、2段階の切り返しでイエロを跪かせてから、狭い狭いニアサイドをぶち抜いた。いえーい。前半は予想外の2-0。

 そんでもって後半だ。ロナウド登場だ。スルーパスだ。ロナウドの突破だ。対応したのはモンテーロだ。PKだ。やれやれだ。まあ、いいや、延長まで持ち込めばこっちのもんだとぶつぶつ言ってたらブッフォンだ。ブッフォン! ブッフォン! ブッフォォォォォン! さすがだ。っていうか、フィーゴのキックは、コースが逆だった以外、フィオーレのPKと瓜二つだったけどね。そら止められるっつうの。

 こうなると、もう、おみこしわっしょいだ。かっちょよかったよなぁ、ネドベド。ザンブのフィードを全力疾走で追いかけ、減速なしで完璧にバウンドを合わせながらの直球シュート。直球シュートって、野球的にはめちゃくちゃですが。うほほーい。さんぜろだー、さんぜろだー。わっしょい、わっしょい。なんで自分がこんなにユーベを応援しているのかよくわからなかったが、私はうれしかった。熱いよイタリアは。やっぱ、こいつらがいないとCLは煮えたぎらないんだよ。追い上げたマドリーに、私は熱を感じなかった。なんだよ、1点返した後のジダンの冷めた表情は。そんな場面で、そんな顔するなよ。目ぇ三角にしろよ。アタマから湯気出せよ。5分のロスタイムをしのいで、ユーベの3-1。agg.4-3。さらば白装束軍団。

 話は前後するが、ゆうべはインテル×ミラン(CL準決勝第2戦)をビデオ観戦したのだった。さっき観た試合のせいで早くも印象が薄れかかっているが、こちらも好勝負。軋んでたよなぁ。骨も肉も心もぎしぎし軋んでたっす。前半ロスタイムのシェフチェンコのゴールは、トレセゲとデルピのゴールと同様、「ニアポストのすったもんだ」から生まれたものだった。コルドバのミスとも呼べないようなミスからボールがこぼれ、軸足を引っかけられながらも倒れ込みシュート。ファーサイドをケアしていたトルドの足元を、ボールがすり抜けていった。紙一重のゴールばっかりだ。

 話は飛んで後半、ふと気づけばインテルはマーティンスとカロンの2トップ。何じゃそりゃ。コッパ・イタリアじゃないっつうの。と思ったら、マーティンスの同点ゴール。誰? ナニ人? バク転はアガホワと同じ6回だったと思う。それが人間の限界値なのかもしれない。さらにカロンが決定的チャンスを作り出し、これが決まれば「クーペルおそるべし」になるところだったが、シュートは無情にも枠の外。コルドバ渾身のヘッドもアッビアーティの正面。1-1のドロー、アウエーゴール差でミランの勝ち上がり。来たね。何が来たって、ピッポがバロンドールをゲットするチャンスが巡って来たのだ。ユーベ優勝ならネドベドだが、彼、決勝にいないし。まあ、そんなことはともかく、ファイナルが楽しみだ。オールドトラフォードの客席、ぜんぶイタリア人に与えてくれないかなぁ。せめて「発煙筒アリ」を希望します。




2003.05.14.Wed. 10: 50 a.m.
BGM : SING LIKE TALKING『Borderland』

 SING LIKE TALKINGというユニット名は耳にしたことがあるが、それが何なのかはまったく知らない。なのに上記のナンバーを含めた4曲入りCDを購入したのは、何を隠そう、この曲が「featuring 矢野真紀」だからである。不覚にも私はそういうものがあることを知らなかったのだが、まずヤマちゃんが教えてくれ、その後、旧サッカーズY氏もメールで教えてくれた。みんなして私の矢野真紀ハンティング(こわ…)をサポートしてくれて、ありがたいことだ。で、その『Borderland』を聴いているのだが、えーっと、こーゆーのは「フィーチャー」とは言わんのではないですか。「コーラスで参加」が正しいと思う。これがフィーチャーなら、80年代の日本におけるラテン・フュージョンのアルバムは大半が「featuring ペッカー」になってしまうじゃないかと感じる程度の存在感だ。比較対象がよくわからなくてすみません。ともかく、「フィーチャー」という言葉から、「知る人ぞ知る実力派シンガーが颯爽と登場、ぶいぶい言わせて真紀ファンも溜飲」みたいなことを期待していたのであったが、なかなか矢野真紀の声は登場せず、とうとう1コーラス目は矢野真紀の矢の字も出てこなかった。2コーラス目のAメロ途中から遠慮がちに合いの手を入れ始め、ようやくサビになって本格的にハモるのだ。これではただの添え物である。矢野真紀でもよいが、矢野真紀でなくてもよいような役回り。無論、さすがの歌唱力を発揮しており、その意味ではファンにとって嬉しい試みではあるのだけれど、「矢野真紀の無駄遣い」の感は否めない。どういう経緯でこうなったのか知らないが、こういう使われ方はまずいのではないか。使い勝手のいい便利屋シンガーとして、矢野真紀が「音楽界のコクー」にならないことを祈りたい。

 おまけに、初めて聴いたSING LIKE TALKINGの音楽は、安全地帯並みに好きでも嫌いでもない感じ。ファンには申し訳ないが、この男性ボーカリストに、矢野真紀とデュエットするほどの力量があるとは思えない。はっきり言って、矢野真紀にとってこの仕事は(語の正しい意味=能力に対して役目が軽すぎること=で)役不足。アンリをレッジーナに連れてきて、サボルディと2トップ組ませるようなもんだわな。矢野真紀は、喋るように歌ったりはしない。歌うように歌う。歌が歌を歌っているように歌うのである。

 それにしても笑ったのは、きのうの素粒子(朝日夕刊)だった。コラムであんなに面白いこと書かれたんじゃ、いしいひさいちやしりあがり寿もやりづらいっちゅうもんだ。計算した笑いで天然ボケに勝つのは難しい。あんまり可笑しかったから、切り抜いて仕事場に持って来ちゃったよ。

「無念」とNYタイムズ編集幹部は言ったに違いない。新聞界に捏造記者は過去もいた。明日は見たくない。記者を信じるという性善説によらねば新聞はできないのだが、疑うことも避けられぬ。
 って、おい、「新聞界に」じゃないだろ。読んでるほうは全員、伊藤律、サンゴ、ベンゲル、中田って単語が頭の中でぐるぐる渦巻いてるんだから、ちゃんと「わが社にも」って書きなさいよ。いまさら誰も昔のこと怒ったりしないから。その上で「疑われても仕方がない」ぐらい書いてくれりゃ、愛嬌があってかわいいと思うんですけどね。人間、ここまで厚顔になれれば見上げたものである。この筆者、サッカーやったら絶対ストライカー向きだ。……などと苦笑しつつ後段を読んだら、こんなことが書いてあった。
 文部科学省の学力テスト分析によれば、今の子どもは(1)意味を考えず形式的処理だけ(2)歴史の基本知識が欠如(3)知識はあっても日常体験の裏打ちなし(4)全体の内容を正確につかめないーー何だ、今の親にそっくりではござらぬか。
 だと。凄いよ、この人。これでオチが「何だ、拙者にそっくりではござらぬか」になってたら、新聞コラム史上に残る大傑作になったのになぁ。惜しい惜しい。社史にも自虐史観を持ち込めとは言わんが、自社の捏造記事に関する基本知識ぐらいは持ちましょうね。せめて朝日新聞編集幹部の中に、このコラムを読んで「無念」と呟いた者が一人でもいたことを祈りたい。

 皮肉なことに、減量状況の公開をやめた途端に、体重が減った。あんなにゴンザレスとたらふく中華を食った翌日の体重が、その前日よりも少ないというのがどうにも解せない。そういえば、その料理店の女性店員について、ゴンザレスが「前に来たときは今の倍ぐらい太っていた。すごく痩せてて驚いた」と言っていた。もしかしたら、あの店の料理には痩せ薬でも入っているのかもしれない。

 ゆうべは、マジョルカ×ソシエダ(リーガ第33節)をビデオ観戦。過去2戦、デポルとマドリーに計8ゴールを叩き込んで粉砕した好調マジョルカとのアウエー戦だけに、苦戦は必至と思われたソシエダだったが、序盤にPKを授かって楽になった。なんでコバチェビッチが倒れたのか、何度リプレイを見ても理解できなかったけど。デ・ペドロが決めて0-1。その数分前、同じデ・ペドロが苦手な右足で絶好のチャンスをしくじったときは「優勝争いのプレッシャーか」と思ったが、リードして以降はリラックスした戦いぶりだった。カルピンとコバチェビッチもゴールを重ねて1-3。マジョルカはもう少し頑張るかと思っていたが、さすがにマドリーから5点も取っちゃうと、脱稿後の解放感に浸ってダレるということか。脱稿じゃないですけどね。これでソシエダは、どうやら得失点差の2位に浮上した模様。相手がマドリーだけじゃないのが厄介だ。ここまで盛り上げといて「デポル優勝」で終わったら、ちょっとシラケますが。かつて、貴乃花でも平幕力士でもなく武蔵丸が優勝すると「……」と場がシラケたことがあったが、そんな感じ。




2003.05.13.Tue. 12: 00 p.m.
BGM : J-WAVE

 きのう、久しぶりに井の頭線と中央線を利用したら、どちらのホームからも喫煙所が消えていたのである。噂はほんとうだった。新聞に書いてあったんだから、噂じゃなくて報道か。どっちだっていいが、健康増進法の仕業だ。法律で健康が増進するなら、「ダイエット法」という法律もこしらえてみろってんだべらんめえ。だいたい、受動だろうが能動だろうが、喫煙が健康を損なうというのは本当に科学的に証明されているのか。無論、その因果関係を示すデータがいろいろあるのは知っている。だが、それを覆しかねない事実があることも忘れてはいけない。喫煙文化が誕生して以降、人類の平均寿命は一貫して延びているのだ。人間がいつから煙草を吸い始めたのかは知らないが、それだけは間違いない。もちろん、人類の平均寿命は文字の発明以降も延びているし、日本人の平均寿命は日本国憲法が制定されてから右肩上がりで延びていると言うこともできるわけで、そこに何か因果関係があるかどうかは不明だが、少なくとも、文字や日本国憲法が平均寿命を短くしないのと同じ程度に、喫煙も平均寿命を短くはしていないのではないかと私は疑っている。そんなに煙草が体に悪いなら、人類はとっくに絶滅していなければいけないのではないか。しかし人類は絶滅するどころか増えている。なにしろ人類の平均寿命は、大気汚染やら環境破壊やらが進むにつれて延びているのだ。すごいじゃないか人類。実にたくましい。法律なんかなくたって、われわれの健康はどんどん増進してきたのである。

 てなことをスモーカーがいくらホザいたところで、「詭弁にもなってねえじゃん」と一蹴されるだけなのでもうやめるが、健康増進法による喫煙者差別を受容するに当たって、私は一つだけ交換条件を提出したい。犬を何とかしろ。飼うなとは言わないが、私の嫌犬権を侵害しないような規制が必要だ。たとえば歩道で犬とすれ違った際、手から下げているスーパーの買い物袋の臭いを嗅がれたときに受ける精神的ストレスは、おそらく受動喫煙10箱分に相当するぐらい私の健康を損ねている。それは私の食糧だ。おまえが嗅ぐな。畜生め。また、まさか犬がいるとは思わずに油断して住宅街を歩いているとき、塀の中からやおら吠えられたことで私の心臓が受けるダメージにいたっては、受動喫煙15年分に匹敵するだろう。びっくりさせるなっつうの。寿命が縮むっつうの。

 われわれ愛煙家は、煙が嫌いな人がいることをよく知っているし、迷惑をかけないように配慮もしている。ところが愛犬家ときたらどうだ。あいつらは、誰もが自分と同じように犬を愛していると思い込んでいやがる。犬にぺろぺろ顔をナメさせて嬉しそうにしている者を、ホラー映画を見るような気分で眺めている人間がいることなど、奴らは少しもわかっていない。放し飼いにされた犬がワンワン吠えながら走り回っている公園が、まるで富士サファリパークのように見える人間がいることを、彼らは知ろうともしないのである。公共の場における「分犬」を促進し、「禁犬」スペースを拡充することを、私は本気で提案したい。

 で、井の頭線と中央線を利用してどこに行ったかというと、千駄ヶ谷のG舎に行ったのだった。応接室で、元ヤクザの親分だった人の口述取材の2回目。いろいろな話を聞くにつけ、「懲役を前提とした人生」というのは、経験した人にしかわからないものであるなぁと感じ入った。G舎の「舎」の字を、「舎房の舎」と言うあたりからして、世界観が根本的に違うのである。取材後、担当ゴンザレスと原宿の庶民的中華料理店でめし。完全に頓挫していたリコーダー楽団の結成など検討しつつ、たらふく食った。減量状況の公開をやめた日に大食漢のゴンザレスとめしを食ったのは失敗だ。彼に「まだ食える?」と訊かれると、言外に「おれはまだ食いたいんだけど」というギラギラした欲望を感じてしまい、つい「つきあうよ」と言ってしまうのである。しかし、最後のやきそばはやはり余計だった。12時間以上たった今でもまだ腹が苦しい。うまかったけど。

 ゆうべは、WOWOWで録画したボローニャ×ラツィオ(セリエ第32節)をビデオ観戦。喜ぶのはラツィオファンだけだったWOWOWのセリエ中継は、来季も続くのだろうか。あるいはブンデス一本になるのか。どう考えても企画に無理がある高原特番の宣伝が物悲しかった。「高原になった夢」を見ている大杉連の姿に共感する視聴者が、一体どれだけいるというのか。オリーベが映るたびにペルージャ時代を懐かしむ実況もかなり辛い。いずれも、スカパー!およびスカパー!で放送されているサッカーは存在していないかのような鎖国感を滲ませているのだった。そのくせCL中継では、「先日のプレミアでは……」とか何とかコメントして、スカパー!見てることを隠し通せなくなっていたりするわけですが。

 そんなことはともかく、試合は0-2でラツィオの安逸な勝利。このゲームの白眉は、なんといってもファバッリのゴール(2点目)であろう。初めて見た。自陣でボールを奪ったピオホが全力疾走を始めると、よーいドンでファバッリとセーザルがスタート。80メートルの徒競走だ。運動会で必ずかかるあの曲が頭の中で鳴り響いた。じゃんじゃかじゃっじゃっ、じゃっじゃっじゃーん、じゃーら、じゃーら、じゃーら、じゃじゃじゃ。と、いくら字で書いてみても一向に曲の説明にならないが、敵陣ペナに1等賞でゴールインしたピオホが左からグラウンダーのクロスを入れると、2等賞のセーザルは間に合わなかったものの、ファーサイドをこけつまろびつ駆け上がって3等に入賞したファバッリが何とか追いつき、右足でボールを押し込んだのだった。よく走った。えらい。なんでオッドやカストロマンじゃなくてファバッリだったのかよくわからないけど。ちなみに1点目はPK。パラマッツィに倒された下ザーギのプレイは見事だった。彼にできる事の中で、もっともスキルが高いのがあのプレイだと思う。自分でゲットして、自分でキック。さすがピアチェンツァ時代はゴール数の半分をPKが占めていただけあって、安心して見ていられる。いちばん上手いのがPKゲットなら、2番目に上手いのはPKそのものだ。ピオホやフィオーレと違って、彼にはPK専用の技術が備わっている。そうなんだよ。いつも奴に蹴らせりゃいいんだよ。でもベンチにいることが多いのがネックだ。PKに指名打者制を導入してもらえないだろうか。




2003.05.12.Mon. 12: 25 p.m.
BGM : 矢野真紀『あいいろ』

 はてなのアンテナには、人をずるずると引き込む魔力がある。自分の「おとなりアンテナ」を訪ねてみると、登録ページが重複しているアンテナが一覧表になっており、それらはつまり自分と何かしら似たところのある人たちのアンテナであるので、彼らが登録しているページには私の琴線に触れるものが少なくないのだった。結果、あれこれ見ているうちに、マイ・アンテナの登録数がどんどん増えていく。とくに何が面白いというわけでもないのに妙に読ませる日記というのが多々あり、なぜ私がそれを登録したか理解しにくいものも多いだろうと思うが、なかでも私が強く惹かれたのは母さんと題されたページである。冒頭の写真一発で、いきなりハートを鷲掴みにされた。これを見た時点でサイト全体の「文体」に被爆したような案配になり、読まずにいられなくなるのが凄い。母さん。このページを読んでいると、なぜか矢野真紀の『ボクの空』(『あいいろ』所収)を聴きたくなるんだ。

 ゆうべは、チェルシー×リバプール(プレミア最終戦)をライブ観戦。CL予備予選進出決定戦である。西岡さんも試合前から「勝ったほうが20億円」と煽り、私もどんなに凄まじい試合になるかと期待していたのだが、両軍とも、とても20億円を争って戦っている人たちのようには見えなかった。共にCBで主将を務めるヒーピアとデサイーがそれぞれヘッドで得点したところまでは熱気を感じたけれど、それ以降はすごくフツーのテンション。全員が泣きそうな顔をしながらもがき苦しんでいたミラノダービーを見た後だと、プレミアのスポーティな雰囲気はいささか物足りない。でも、グレンキアの勝ち越しゴールはすばらしかった。ペナルティエリア内でドリブル勝負をしかけ、倒れそうになりながらも角度のないところからファーポストにシュート。虚を突かれたデュデクの指先はわずかに届かなかった。2-1でチェルシーの勝ち。贔屓チームの4位ゲットは嬉しいが、リバプールの情けなさはちょっと寂しい。私がプレミアを見始めた4年前のリバプールは、もっと一生懸命に戦うチームだったのだが。試合後、観客席で泣いているチェルシー会長の奥さんを見て、この試合にかかっていたプレッシャーの大きさがようやくわかった。経営者にとってはものすごい重大事だったのだ。アナタ、20億円なのね、これでアタシたち、20億円を好きなように使えるのね。そんな涙だった。で、彼らはそのカネでほんとうにバティストゥータを買うのか。いいのかそれで。

 土曜日に来客があり、久しぶりに料理。誰も覚えてはいないと思うが、年頭の目標として「うまく作れるようになる」と書いたニョッキにチャレンジした。この料理のキモはジャガイモと薄力粉の分量である。前に失敗したときはジャガイモの比率が多すぎて、ぜんぜんニョッキの食感が出なかった。なので今回はレシピの指定よりも薄力粉を多めに。わりとニョッキっぽくなったとは思うが、考えてみると正しいニョッキを食べた経験がそんなにないので、あれでよかったのかどうかよくわからない。ニョッキといえばニョッキだが、すいとんといえばすいとん。すいとんにゴルゴンゾーラのソースをかけて食ったかと思うと、ちょっとそれはどうかと言いたくもなるが、少なくとも炭水化物大好きなセガレには好評だったようだ。ともあれ、年頭の目標のうち「ぐずぐずしないで、てきぱきする」はすでに大失敗、「夏までにあと8キロ減量し、それを維持する」も困難な状況になっているので、せめて一つは達成できたことにしよう。

 そんなわけで、いくら昼飯を抜いても体重がぴくりとも変わらなくなってしまったので、減量状況の公開はやめた。「夏まで」は「最初に水着姿になるまで」のことだと自分で決めていたのに、もうサマーランドに行っちゃったし。1ページのコラムを2ページ分書いてしまい、なんとかあと5行まで削ったところでにっちもさっちも行かなくなった、っていう感じでしょうか。そこからが真のダイエットだという説もあるが。それにしても「にっちもさっちも」って何だ。試しに「ニッチもサッチモ」と書いてみても、余計にわからなくなるばかりなのだった。




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