edogawa's diary 03-04 #07.
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2003.09.26.Fri. 16: 30 p.m.
BGM : MICHEL CAMILO & TOMATITO "SPAIN"

 脱稿から24時間以上たったが、まだ頭の芯がジンジンしている感じ。肩はごわごわ。目はしょぼしょぼ。これから著者・編集者・校正者・装丁者・印刷者・製本者などの人々が寄ってたかって私が発生させた遅れを取り戻すべく汗を流すかと思うとあまりに申し訳なく、「いやっほ〜ぅ!」などと解放感を迸らせる気にもならないわけだが、ともかく、800メートル走のペースでマラソンを走るような日々が終わった。辛かった。すべて自業自得とはいえ、9ヶ月間、常に頭の中で「すいません遅れてます」「ごめんなさい遅れてます」「申し訳ないが遅れています」の三つが順番に駆けめぐっている状態で生活するというのは、やはり辛いものがある。ライター人生の中でも屈指の壮絶なストレスだった。ハゲにも白髪にもならなかったのが不思議なくらいだ。風邪もひかず、身体的な変調は体重の1.5キロ増だけというのは奇跡に近い。そこそこ丈夫な体に産んでくれた母に感謝すべし。お母さん、ありがとう。

 それにしても、なぜこんなに人に迷惑をかける結果になってしまったかといえば、要するに仕事の受けすぎである。すでに今年の仕事量は、去年一年間の仕事量を超えているだろう。自分の能力と体力を私は過信していた。できないことをできると思っていた。来年は40歳だ。原稿のクオリティを維持しようと思ったら、そろそろ仕事を断る勇気を持たなければいけないのかもしれない。わりと真面目に反省している。

 でも酒飲みてー。うた歌いてー。

 ところで最近、この宮沢ではないミシェル・カミロとトマティートというフラメンコ・ギタリストのデュエットによるアルバム「スペイン」を好んで聴いているのだが、ふと思ったのは、なぜ「スペイン」という曲のイントロは必ずアランフェスなのかということだ。いや、もちろんオリジナルであるチック・コリアの「スペイン」がアランフェスから始まっているからだというのは重々承知しているのだが、だからってカバーもみんなアランフェスから始める必要はないんじゃないかなぁと思ったのだった。もしかするとコード進行とか音列とかそういう私の理解を超えた音楽理論上の理由でアランフェスをイントロに置く必然性があるのかもしれないけれど、たとえばこのアルバムにはスローテンポの「ベサメ・ムーチョ」が入っており、この曲がワンコーラス終わったところで4拍の休みをはさんで「スペイン」の「ちゃっちゃらちゃららちゃーららちゃーらら、じゃーっじゃっじゃー、じゃーっじゃっじゃー」が始まったっていいような気がしたりするのである。

 などと思うのは、たぶん、私が「スペイン」という曲にいささか飽きを感じているからだろう。アランフェス〜スペインという流れに、なんかこう、あまりに「お約束」すぎてウンザリっていうか、ある種の閉塞感のようなものを感じるのは私だけだろうか。バッヂのレパートリーでもあるので言いにくいのだが、「スペイン」という名曲を錆びつかせないためにも、今は違うイントロによるリフレッシュを図るべき時期が来ているような気がするのである。

 では何をイントロにすればいいかと考え始めた私の頭に最初に去来したのは、なぜか「グリーンスリーブス」とドボルザーク「新世界より」の第2楽章という、下校音楽の定番たちだった。あと、「さくらさくら」も悪くないと思う。このページでワンコーラス聴いたあとに、4拍おいて「ちゃっちゃらちゃららちゃーららちゃーらら、じゃーっじゃっじゃー、じゃーっじゃっじゃー」を頭の中で鳴らしてみてほしい。かなり「スペイン」が新鮮に感じられるはずだ。それ以外には、意表を突いて「精霊流し」なんかもけっこうイケそうだが、私がいちばん聴いてみたいのは、この曲をイントロにした「スペイン」である。もし日本代表とスペイン代表が親善試合をやる機会があったら、キックオフ前のセレモニーで誰かに演奏してもらいたい。

 短い休暇を取るので、次回の更新は来週の水曜日以降になります。




2003.09.24.Wed. 18: 40 p.m.
BGM : 角松敏生 "あるがままに"

 あらゆる〆切に遅れまくり、各方面に迷惑をかけ続けて9ヶ月。そろそろ大団円が近づいている。でも、ちょっと背筋に悪寒が。くしゃみもよく出る。ひょっとして熱出んのか?などと思いつつ、あと50枚である。




2003.09.23.Tue. 20: 00 p.m.
BGM : PACO DE LUCIA "LUZIA"

 南南西に高いビルのないところに住んでいる人(もしくはそのビルを爆破した人)は、ぜひ今週の金曜日20時に始まるマンU×アーセナル戦の再放送を20時から観ていただきたい。もう試合を観たという人は、キックオフまでの数分間だけでいい。両軍の選手が入場してしばらくすると、カタカナで表記されたアーセナルのメンバー表が画面に現れる。そのバックにいるのはユナイテッドのサポーターたちだ。客席をとらえたカメラは向かって右にパーンする。やがて、若い日本人男性の姿が映るだろう。それは私の知らない人だ。さらにカメラがパーンすると、画面右端のほうに、ユナイテッドのアウエージャージ(黒)を着た日本人男性が「油断」を絵に描いたようなゆる〜い笑顔を浮かべてボケッと突っ立っている。そう。それがバッヂのドラマーであり、私の二十年来の友人でもあるヤマちゃん38歳だ。そして彼の左側、巧みに前に立っている男(と何故か画面のメンバー表)を避け、完璧なカメラ目線で類例を見ないほどの満面の笑みをたたえながら、全世界に向かって左手をひらひらと振ってみせている赤いホーム用ジャージ姿の日本人女性が、以前ここのゲストブックに矢野真紀のカラオケ情報を書き込んでくれたヤマちゃんの嫁である。

 今日の夕刻、私がうーうー唸りながら原稿に取り組んでいるときに、帰国したばかりのヤマちゃんがわざわざ電話をかけてきてそのことを教えてくれた。ものすごーく嬉しそうだった。晩飯を食いに一時帰宅した私は、さっそく一家3人できゃーきゃー言いながらビデオを見、ヤマちゃん(嫁)に「見たよ〜」と電話をした。「思い切って行ってヨカッタですぅ〜。試合はつまんなかったけど」と、ものすごーく嬉しそうだった。観戦ツアーのコストパフォーマンスは、帰国してビデオを見るまでわからない、ということがわかった。




2003.09.22.Mon. 12: 45 p.m.
BGM : TOMATITO "Paseo De Los Castanos"

 きのう深夜にふらふらと帰宅すると、妻子はとっくに寝入っており、残念ながらKay'n君も来ておらずGUEST BOOK215参照)、無人のリビングでスカパー!のチューナーとHDVだけが黙々と録画作業を行っていた。マンチェスターU×アーセナル(プレミア第何週なんだ今は)だった。テレビをつけると、画面左上の時計は85分を表示していた。スコアは0-0だった。揃ってユナイテッドの大ファンであるヤマちゃん夫妻はどこにいるのか当然わからなかった。アーセナルは10人だった。ロスタイムに入った。アーセナルのゴール前に右からクロスが放り込まれた。キーオンがフォルランにのしかかった。PKだった。ヤマちゃん夫妻の狂喜する顔が目に浮かんだ。ファン・ニステルローイが何度も何度もペナルティ・スポットにボールを置き直した。緊張しているようだった。強く蹴られたボールはクロスバーを叩いた。狂喜したのはユナイテッドが大嫌いな私だった。観戦ツアーのコストパフォーマンスは試合終了の笛が鳴るまでわからないから気をつけたほうがいいな、と思った。でも、ウン十万円も出してガッカリ感を買ってくるのも得難い人生経験かもしれないな、とも思った。




2003.09.21.Sun. 17: 45 p.m.
BGM : 阿川泰子 "FINE !"

 ひたすら仕事ばかりしているので日誌に書くことがない。なので、今日は新刊情報(左)の更新のみ。著者が佐川君じゃなくてヨカッタですね。




2003.09.20.Sat. 22: 55 p.m.
BGM : akiko "GIRL TALK"

 ああ。もうじきリバプール×レスターが始まるのだなぁ。そして、きのう成田を発ったはずのヤマちゃん夫妻は、アンフィールドのスタンドでそのキックオフを待ち構えているんだろうなぁ。さらに明日はオールドトラフォードでユナイテッド×アーセナルの大一番を観るのだなぁ。いいなぁ。……というわけで、友人夫妻が観戦ツアーに出かけているのである。私がテレビ観戦もできないのに、あいつらは現地で2試合も観てきやがるのである。羨ましいのである。みんなも羨ましがろう。そして、ヤマちゃん夫妻を知っている人はテレビでヤマちゃん夫妻の姿を探そう。




2003.09.19.Fri. 15: 05 p.m.
BGM : MILTON NASCIMENTO "ENCONTROS E DESPEDIDAS(出会いと別れ)"

 徹夜明けで仕事場に戻ったところに、一般発売で獲得に成功した矢野真紀「茶会」のチケットが届いた。むふふ。生きる希望が湧いてきた。私には豊かな未来が待っている。それを信じて、あと160枚、ガッツで書き通すべし。ぜんぜん予定どおり進んでませんが。だいたい、「茶会」の前に10月にも一冊書かなきゃいけなかったりするのだが、まあ、今はそんなことは考えるまい。ぜんぜん関係ないけど、MILTON NASCIMENTOって、めっちゃサッカー上手そうな顔してるよね。ちょっとローレン(アーセナル)に似てるかな。




2003.09.18.Thu. 13: 25 p.m.
BGM : MICHEL CAMILO & TOMATITO "SPAIN"

 くたびれ果てていて、日誌に書くことが思いつきません。とりあえず言っておきたいのは、いま聴いているMICHEL CAMILOというピアニストは、名前も顔も宮沢ミシェルに似ているということだ。あと、最近のニュースで私の目を引いたのは椎名桔平と山本未来の結婚だった。この記事にもあるように、2人が出会ったのは『不夜城』ではなく『BLACK OUT』である。あまりにマイナーなTVドラマなので誰も知らなかったのだろうが、私はこの作品をぜんぶ見た。そのノベライズ本の制作に関わったからである。結婚記念重版って無いんだろうか。無いよな。めでたさも中くらいだ。




 

2003.09.16.Tue. 23: 55 p.m.
BGM : MILTON NASCIMENTO "COURAGE"

 優勝した。阪神ではなく、セガレの話である。きのう味の素スタジアムで開催された少年サッカー大会で、セガレの所属する高井戸西SCが、みごと金メダルを獲得したのだった。

 高井戸西 3-2 青チーム
 高井戸西 1-1 黄チーム
 高井戸西 2-0 黒チーム

 というわけで、2勝1分の勝ち点7。敵陣でのボール・ポゼッションにこだわって全員でプレスをかけながら攻め続け、時折スカスカな自陣ゴール前にカウンターを食らって見る者をヒヤヒヤさせるあたり、高井戸西はまるでオランダのようだった。セガレの貢献度は下から数えたほうが早く、「たまたま優勝チームに所属していただけ」という意味ではアーセナル時代の稲本と大差ない感じであったが、まあ、優勝したのはえらい。最終戦でセガレがGKを務めた時間帯に、敵が1本もシュートを打てなかったのもラッキーだった。運も実力のうちである。終わってみれば、準優勝した青チームとの初戦を競り勝ったのが大きかったよなぁ。1-0、1-1、2-1、2-2、3-2という大接戦。高井戸西の3点目は、10番の選手が無理な体勢から右足のアウトにかけて放ったシュートがGKのニアサイドを破ってゴールインするという、実に感動的なものだった。ベルギー戦における鈴木のゴールにちょっと似ていたと言っても過言ではない。コーフンしました。

 しかし、この大会そのものには大変がっかりさせられたのである。味スタでやるというので、初めて芝生の上でサッカーができるのをセガレも私も楽しみにしていたのだが、大会に使用したのは芝生のフィールドではなく、その周囲の人工芝部分だったのだ。スタジアムに入ったとき、私はそのシュールな光景を見て愕然とした。きれいに苅られた中央の広大なピッチは回りにロープが張り巡らされ、おまけにそのロープには「天然芝部分 立入禁止」と書かれた札がぶら下がっていたのである。そして、その周囲で数百人の子供たちがサッカーをしている。悪い冗談としか思えない。たとえば子供たちを沖縄に連れて行って、「海は危険だから」と水族館で珊瑚や熱帯魚を観察させる者がいたら、ふつうはバカだと思うだろう。場内には盛んに「芝生が傷つくので入らないでください」というアナウンスが流れていたが、そのアナウンスをしていた者は自分がバカだと思わなかったのだろうか。その芝生はいったい何のためにそこに張られているのか。芝生を傷つけるのが厭だったら、サッカー場なんか作るなっちゅう話である。

 むろん、そうなった事情はだいたい察しがつく。天然芝を使わないほうが安く味スタを借りられるのであろう。だが、天然芝を使えない味スタを借りてサッカーをやることに、何の意味があるというのだ。ロープで隔絶された美しい天然芝を横目で見ている子供たちが、そこで何を感じるかということも考えてみたほうがいい。彼らは、普段そこでJリーグの試合が行われていることを知っている。しかし、自分たちはそこでボールを蹴ることを許されない。ああ、ぼくたちのサッカーはプロのサッカーとは別の物なんだ、本物のサッカーは手の届かない「向こう側」にしかないんだ−−。「Jリーグ百年構想」が聞いて呆れる。安く上げるために天然芝を借りない主催者も主催者だが、空いている天然芝を使わせない味スタも味スタだ。こんなバカげたことを恥ずかしげもなくやっているかぎり、Jリーグにもこの国のサッカーにも未来はない。正直、それはこの国のサッカー文化を絶望させるのに十分な風景だった。ここは、本当にワールドカップを開催した国なのか? この状況が改善され、スタジアム側が子供たちに「どうぞ使ってください」と追加料金なしで天然芝を提供するようにならないかぎり、少なくとも私は「もう一度日本でワールドカップを」という動きに賛成したくない。




2003.09.14.Sun. 12: 45 p.m.
BGM : orange pekoe "Organic Plastic Music"

 最近、このPeter Blumeの「Boulders of Avila」という絵が気になって仕方ないのである。気になる、というより、気が気じゃない、といったほうがいいだろう。だって危ないと思うんだよ、そんなところでピクニックするのは。何事も自己責任だから、私がこんなことを言うのは余計なお世話だし、役所が立ち入り禁止にすべきだとも言わないが、何もそんなところで読書しなくたって。ねぇ。

 それにしても異様な絵である。眺めれば眺めるほど、この絵は私を落ち着かない気持ちにさせる。Peter Blumeは、なんでまたこんな風景を描きたいと思ったのか。画家の情熱というものが理解しにくいと感じるのは、こういう絵に出会ったときだ。で、なんでだろうなんでだろうと思いながらしげしげと眺めているうちに思ったのは、もしここに2人の人物が描かれていなかったら、この絵がどう見えるだろうかということだった。その場合、ここに描かれているBoulders(丸石、玉石)は「小石」に見えるとあなたは思いませんか。私は思う。このスベスベした石の質感は、どう見たって川原の小石のそれだ。明らかに小石の質感を持ったものが巨石のように描かれていることが、この絵の異様さの根源ではないのか。

 だとすれば、この絵の真相を読み取るのはそう難しいことではない。ピクニックをしている2人の人物は、「すごく小さい」のである。それはもう、虫みたいに小さい。虫みたいに小さい人たちが、呑気にピクニックを楽しんでいる。

「あー、やっぱ石はええなぁ石は」
「夏休みのたびに石の上に座って何年になるかしらね、私たち」

 なんて会話も交わしているかもしれない。そんな情景に出会ってびっくらこいたPeter Blumeが、思わず絵筆を取ったのも無理はなかろう。地べたに這いつくばって小人のピクニックを観察した画家の執念には頭が下がる。サイズを比較するために煙草のパッケージを描き込んでほしかったような気もするが、そんな「説明」は芸術的とは言えない。その深遠性によって鑑賞者の想像力(もしくは推理力)を刺激してこその芸術なのである。したがって、この絵の舞台とおぼしき「Avila」が、スペインのAvilaのことなのか、それともアメリカのAvilaなのかといったことにも、私はあまり興味がない。

 あと240枚。今朝までに100枚の予定だったが果たせず。しかしキックオフ直後の3日間で60枚は近年にないハイペースである。大丈夫だ。きっと大丈夫だ。大丈夫だと思う。大丈夫だろ? 大丈夫だと言え。




2003.09.13.Sat. 12: 15 p.m.
BGM : LEE MORGAN "THE SIDEWINDER"

 雑誌の編集長になった夢を見たのである。すごくびっくりした。それだけでもどうかしているのだが、もっとどうかしているのは創刊される雑誌のタイトルだ。
 月刊『不本意の理由』。
 何を言ってるんだそれは。言葉の連なり方が熟しているのかいないのか微妙なところがいかにも夢らしいのであるが、その夢の中で編集長である私は「いったい誰に何を書かせればいいんだ」と苦悩していたのだった。目が覚めてから、「その苦悩についておまえが書けばいいのだ」と思ったが。だったらそんな雑誌つくるなっちゅう話である。悪夢だ。

 そんなこんなで、残り260枚である。徹夜続きで仕事とバンドの両立を図っているタボン君はじめバッヂの諸君にはたいへん申し訳ないのだが、明日のOB会ライブには足を運べそうにない。すまん。私も楽しみにしていたのだが、来週前半に口述取材が2日も入ってしまい、そこで奪われる時間を取り戻すには明日も働かねばならぬのだ。それが不本意の理由だ。




2003.09.12.Fri. 11: 25 a.m.
BGM : "Clifford Brown and Max Roach +2"

 椅子は大事だ。ライターは人生の大半を椅子の上で過ごす。そう思って、ライターになった当初に最大の設備投資だと割り切ってスチールケース社の椅子をたしか5〜10万円(すげえアバウトな記憶)出して買ったのだが、その高さ調節レバーがぶっ壊れてからすでに5年ほど経っているのだった。「あと5ミリぐらい高くしたい」という意味があるのかないのかよくわからない微妙な不満を抱え続けて5年である。

 そこで突如として「いま欲しい物ランキング」の第3位に躍り出たのが、売れっ子ライターのステイタスシンボルとも言われている(らしいということを最近知った)ハーマンミラーのアーロンチェアなのだった。なにしろライター業界に流れる風の噂によれば、これに座ると自動的に原稿がはかどる仕組みになっているそうだ。もしかしたら、人間工学の進歩によって椅子が原稿を書いてくれるようになったのかもしれない。すごいな人間工学。これこそ人間椅子だ。ほしい。ほしいぞ。しかしいいお値段だなぁ。21年後に還暦を迎えたときには、各社の担当編集者がお金を出し合って真っ赤なアーロンチェアをプレゼントしてくれるぐらいの偉いフリーライターになっていたいものである。




2003.09.11.Thu. 10: 45 a.m.
BGM : 阿川泰子 "OURO do MANAUS"

 最近、こんな絵のことが気になって仕方ないのである。別の絵を探している最中に見つけた、このGrant Woodの「Sentimental Ballad」という作品を、私は3週間ほど前からほぼ毎日のように数分間、眺めている。あなたも、もし暇だったら1分間ほど眺めてみてもらいたい。そして、思ったことを素直に呟いてもらいたい。

 …………何があったんだおまえら。

 私の場合、この絵を見ながら考えるのはそのことばかりだ。いったい、この7人の男たちに何が起きたのか。いや、まず問うべきは「頬杖をついている青いネクタイの男に何が起きたのか」ということだろう。彼らは、この男に起きたこと(もしくは彼が起こしたこと)について話し合っているに違いない。そして私には、このポルトガル代表チームのベンチが似合いそうな男が、「がっかりしている」ように見える。しかもそれは、「自分にがっかり」だ。とはいえ彼の場合、どう見てもフリーライターだとは思えないので、「〆切に間に合わなくてがっかり」ではないと思われるが(この中にフリーライターがいるとしたら、それは長いマフラーを首にかけて左手に煙草を持っている男だろう)、しかし、そこには明らかに敗北感が漂っている。彼は負けたのだ。いったい何に?

 麻雀かもしれない、とも思う。このテーブルはどうやら正方形のようだし、その上にはビールらしき液体の入ったグラスが4個ある。4人でテーブルを使っていた証拠だ。彼以外のメンツがどの3人だったかは定かではないが、おそらくグレーのジャケットに赤いネクタイの男は直前までこの卓で打っていた。そして、「どしたどした?」と言いながら近寄ってきたマフラーの男に事情を説明している。だとするとマフラーの男はフリーライターではなく、雀荘のマスターかもしれない。

長マフラー「どしたどした?」
赤ネクタイ「ああ、オヤジさん。いいところに来てくれた」
長マフラー「なんだよ、みんな怖い顔しちゃって」
赤ネクタイ「イカサマだよイカサマ」
青ネクタイ「チクショー……なんでバレたかなぁ」
長マフラー「イカサマ?」
赤ネクタイ「このオッサン、ツミコミしてやがったんだ」
長マフラー「あー。うちもそろそろ全自動卓にしないとね」
赤ネクタイ「いやそういう問題じゃなくて」

 ありそうな話だ。だが、ここが雀荘だとすると辻褄の合わないことが一つある。雀荘は、ふつう、口笛厳禁だ。口笛厳禁の場所は、ふつう、横笛も厳禁だろう。だいたい、ここが雀荘だろうがどこだろうが、このような込み入った状況で、しかもそんな表情で横笛を吹いていられる左端の男の神経が私には理解できない。しかしタイトルが「Sentimental Ballad」である以上、彼抜きではこの絵自体が成り立たないのであろう。謎だ。

 ちなみに、この絵を見つけたときに探していたのは、この「East River from the 30th Story of Shelton Hotel」と題されたGeorgia O'Keeffeの作品である。私の仕事場には、この絵の額縁入りポスター(幅約1メートル)が飾ってある。8〜9年前の誕生日に、愚妻にねだって買ってもらった。あまりプレゼントにはふさわしくない殺風景な絵だが、やけに気に入っている。ニューヨークの地理がよくわかっていないのだが、2年前、このホテルからはどんな風景が見えたのだろうか。いま、この絵を眺めながら、あの日から始まった国際情勢のモードチェンジに関する原稿を書いている。

 昨日は、セネガル戦があることをすっかり忘れていていた。録画もしていない。でも、まあ、べつにいいや、という気分。ワールドカップ以降(と言ってもいいし、監督ちゃん就任以降と言ってもいいのだが)、どうも代表観戦モチベーションが下がっているような気がする。で、どういう負け方だったんだ昨日は。




2003.09.10.Wed. 11: 40 a.m.
BGM : 阿川泰子 "SUNGLOW"

 結局、火曜日の朝までかかって、ようやくKD社のビジネス書を脱稿。やっと、あと一冊までこぎ着けた。ハポエル君、本当にお待たせしました。書き始めるときから「お待たせしました」というのもどうかと思うが、歯を食いしばって、デッドラインは死守します。で、およそ2週間で300枚書くにはこまめに〆切を設けたほうがいいように思われ、ハポエル君以外の読者には何の関係もないことではあるのだが、自主的に設定した目標を公開することによって、自らを追い込むことにしたのである。

最初の100枚=14日の朝まで
途中の100枚=18日の朝まで
最後の100枚=21日の夕方まで
ロスタイム=50時間ぐらい
 なぜ21日の夕方かというと、その日の6時からflower fish mellowsのライブがあるからなのだった。フォワードの選手に「30分おきに1点取ってこい」と言うぐらい無茶な話ではあるが、私はやる。やってみせる。

 で、これが終われば1週間ぐらい休めるはずであり、きのう愚妻に言われて、御宿から帰ってきてから1日しか休んでいないと気づいたこともあって、家族の不満を和らげようと28日から二泊三日で箱根の宿を予約。セガレはまたぞろ「バリ行きたいねぇ」などとほざいていたが、温泉テーマパーク(なんじゃそりゃ)には滑り台などもあり、晩飯はバイキングだと知って納得した模様である。どうかそれまで、家にいない父を許してほしい。

 きのうは自宅でデータ整理などしつつ、イタリア×ウェールズ(EURO2004予選)を横目でビデオ観戦。板前テイストなヘアスタイルに変身したピッポ君が怒濤のハットトリックである。すごいすごい。10番なんか背負って似合わねえなあと思っていたのだが、カウンターのときにビエリに出したラストパスなんて、まるで司令塔みたいだったよ。実はサッカーうまいんだよな、あいつ。3つのゴールはいずれも切れ味バツグン。オッドのクロスをライダーキックで叩き込んだ2点目なんか、5回ぐらいリプレイして見ちゃいました。弟も見習って、まずは無駄に長い髪の毛を切るところから始めてみたらどうか。あと、オッドはラツィオでもそういうクロスを入れるように。

 ともあれ、トッティのいないイタリアは最高だ。チームに一体感が生まれ、動きもスムースに見えたのは私の偏見によるものだろうか。中田不在で優勝したアジアカップの日本代表を思い出したりした。ウェールズも前半(0-0)はギグス&ベラミーのスピードでイタリア守備陣に脅威を与えていたが、終わってみればデルピのPKもあって4-0。後半途中でどうしてもガットゥーゾを投入しないと気が済まないトラパットーニの頑固一徹ぶりは、いっそすがすがしい。

 さらに、オランダ×オーストリア(EURO2004予選)も横目でビデオ観戦。クライファートとかコクーとか久しぶりに見たよなぁ。2人ともゴールを決めていた。3-1でオランダ。明朝のチェコ戦が楽しみである。

 ほぼ毎年書いていたのに、更新しなかったので書けなかったのが気持ち悪いので1日遅れで書くが、きのうは薬師丸ひろ子の誕生日だった。だから何なんだろう。と、毎年思っている。




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