edogawa's diary 03-04 #08.
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2003.10.08.Wed. 11 : 35 a.m.
BGM :B.S.W.KUIJKEN,R.KOHNEN "J.S.BACH : MUSICALISCHES OPFER BWV1079"

 母「今日は幼稚園のあとサッカーだからね」
 子「え〜、やだなぁ」
 父「やりたくないならやめろ。金がもったいない」
 子「……(半べそ)」

 という会話で険悪にスタートした昨日の朝ではあった。大会ではやる気満々のセガレだが、数ヶ月前に指導者が男の先生から女の先生に替わった頃から練習へのモチベーションが低下しており、ぐずぐず言って行きたがらないことが多いのである。前の先生が大好きだったことが大きな要因なのだが、もう一つ、女の先生が取り入れているチェイシングの練習(鬼ごっこ)が気に入らないこともあるらしい。練習方法をめぐって指導者と対立するなど二十年早いが、たしかに6歳の年長児に鬼ごっこやらせるのはどうかと私も思う。4歳の年少児と一緒に練習しているので、それ以外にもボールをコマに見立てて「ベイブレードごっこ」をやらせるなど、年長児には退屈なメニューが多いのだ。もっとふつうにサッカーやればいいのになぁ。

 それに加えて、この女の指導者のやり方にはもう一つ疑問があった。練習試合のチーム分けをする際、「戦力の均衡」ということにいっさい配慮しないのである。何か意図があるのかどうか知らないが、上手い子ばかり一方に集めたり、一方が2人も多い状態(5人対3人とか)で試合をさせたりするので、弱いチームに入ってボロ負けすると子供はものすごくヘコむのだ。これではサッカーが嫌いになってしまうのではないかと心配になることもしばしばである。そんなわけなので、親としても「やめて別のクラブを探してもいいや」と思う今日この頃だった。本人も、「ここはやめて、小学校のチームに入るまで一人で練習する」などと言っていたこともあったらしい。6歳にして「オレ流」なのかおまえは。

 しかし、自分で望んで始めたものを簡単にやめさせるのも教育上よろしくないように思われるので、「せめて一度くらいゴール決めてからやめれば?」などと宥めたりもしていた。で、きのうも幼稚園が終わったあと、母親と「行く行かない」でさんざんモメながらも練習に出かけたのだが、試合はいつにも増して不均衡な戦力で行われたという。セガレ以外の年長児は全員が相手チームで、セガレの味方はオール年少児。6歳と4歳は2つしか違わないとはいえ、比でいうと1.5倍の開きがあるわけで、15歳と10歳ぐらい力量に差があると言っても過言ではない。要するに、最初から「負け組」(ヤな言葉だ)なのである。

 案の定、セガレのチームは序盤からボコボコにされた。うろうろするだけの年少児軍団の中、セガレはふだんは見せない豊富な運動量でアゴを出しながらひとりで懸命にボールを追っていたらしいのだが、どうにもならない。GKをやれば2失点。フィールドプレイヤーが全員年少児なのだから当然だ。挙げ句の果てにセガレはオウンゴールまで決めてしまい、相手チームの子供に「やーい、オウンゴール、オウンゴール」とからかわれて半泣きになり、パチパチとしばたたかせた目を時折ユニフォームの袖でゴシゴシこすっていたという。嗚呼、なんて可哀想なセガレ。愚妻はそれを見て、「もうやめさせてあげよう」と思ったらしい。私が見ていたとしても、そう思っただろう。下手をすれば、その場で「もういい!」と指導者に向かって吐き捨てて、試合途中で連れ帰ったかもしれない。親バカの誹りを免れないかもしれないが、バカで結構だ。アンフェアな状態で行われているその試合は、サッカーに名を借りた弱い者いじめである。

 だが、奇跡は起きた。

 0-4か0-5ぐらいで迎えた後半、どういう成り行きかは不明だが相手ゴール前でボールを持ったセガレがGKと一対一に。鋭く振り抜かれた(かどうかは知らないが)右足から放たれたシュートにGKは一歩も動けず、ボールはポストぎりぎりのところに転がり込んだのであった。うおお。セガレの人生初ゴールを現場で見られなかったことが、とても悔やまれる。ハーフタイムには「こんなんじゃ勝ち目ないよ」と母親に弱音を吐いていたセガレだが、試合後は超ゴキゲンだったらしい。夕刻に私が帰宅したときも、「6対1で負けちゃったんだけど……その1点はボクが決めたんだよ〜」と、めっちゃ嬉しそうに報告していた。「でかした! おめでと〜!」と言いながら、私がセガレを抱きしめてやったことは言うまでもない。

 結果、「小学校のチームに入るまでやめない」と本人が言うので、来春まで続けさせることにした。年少児ばかりのチームに入ったからこそ責任感とボールに対する積極性が生まれたのだろうとも思われ、それを指導者が意図したとは思えないものの、天の配剤によるゴールだったのかなぁという気がしないでもない。いままで仕事で「逆境こそチャンス」をテーマにしたビジネス書を何冊もゴーストしたことがあり、「そりゃあ成功した人が過去を振り返れば逆境の一つや二つあっただろうけど、そんなこと結果論で言われてもねぇ」などとシニカルに思っていたが、まあ、実際そういうこともあるんですね世の中には。来週は時間がありそうなので、久しぶりに練習を見学しようと思う。

 さて、セガレが神様のくれたゴールを決めているときに私が何をしていたかといえば、今月リライトする書籍の打ち合わせで、原宿の某Bシステム24に行っていた。SD社時代の先輩であるKさんから、タレント本のリライトを依頼されたのである。日記形式にするとのことだが、すでに著者本人が書いた日記が半分ぐらいあるので楽だ。何が楽って、書く「順番」を考えなくていいのが楽。ゴーストの仕事というのは、何をどういう順番で語るかを考えるのがいちばん骨の折れるところなのである。拙い文章をまともな文章にリライトする単純作業だけなら、ほとんど頭を使わなくてよい。おまけにページ数も少ないから、今月は楽勝だな。むふふ。などと油断しているとまた地獄が待っているから真面目にやりますが。それにしても、今月末に入稿して来月末に発売するってどういうことだ。8月に書いた本も、9月に書いた本も、10月に書いた本も、全て11月刊行。そのへんの仕組みが、私にはよくわかっていないのだった。

 打ち合わせ後、そういえば引っ越したマッキー事務所にまだ行ったことがなかったと思い、紀ノ国屋近くの新オフィスまで表参道界隈を散歩。べつに用事はなく、ちょっと顔を出してすぐ帰るつもりだったのだが、マッキー社長に会うなり「急ぎの仕事、できる?」と言われてしまった。こういうのを世間では藪蛇という。世の中には神様もいれば鬼もいるのである。どうも、あそこにはリライト待ちのデータ原稿が無限に蓄積されているらしい。「それでもライターになりたい貴方」は、表参道の紀ノ国屋周辺でマッキー社長を大声で呼ぶといいかもしれない。冗談なので実行しないでください。ともあれ、木曜の朝までに2ページの対談原稿を書けとのこと。今日からタレント本に取りかかる予定だったのだが、いきなり先送りになってしまったのだった。やれやれ。ありがたいことで。

 ゆうべは、ミドルズブラ×チェルシー(プレミア)をビデオ観戦。ハッセルバインクとグジョンセンの2トップ、右サイドにはグレンキアと、オールドファンには懐かしい布陣のチェルシーだったが、私にとって気になるのは当然ガイスカである。いたいた。相変わらずポジションのはっきりしない男だが、さすがにパンカロとは持ってるモノが違う。すでにチームリーダーの風格を漂わせたメンディエータは、フィオーレとベンチに並んで煙草ばっかりふかしていたラツィオ時代と同じ選手とは思えない動きの良さを見せていた。煙草の件は嘘です念のため。試合は久々グジョンセンのゴールでチェルシーが先制、後半キックオフ直後にガイスカのアシストで何者かがゴールを決めて1-1。終了間際、ダフがファーサイドに上げたクロスをクレスポがヘッドで叩き込んでチェルシーの勝ちである。二人あわせて移籍金およそ70億円、オイルマネーでむしり取った脂っこい勝ち越しゴールであった。サッカーのゴールは、神様がくれることもあれば、金で買えることもある。




 

2003.10.07.Tue. 11 : 20 a.m.
BGM :ORPHEUS CHAMBER ORCHESTRA "TCHAIKOVSKY & DVORAK : SERENADE FOR STRINGS"

 きのうは午後から武蔵小金井へ。といっても両親に会いに行ったわけではなく、実家の近くに仕事場を構えている某作家先生の口述取材である。これまでも何度か足を運んだことがあるのだが、7歳から18年ばかり過ごした町を仕事で訪れるというのは何だか妙な心持ちだ。しかし武蔵小金井駅周辺の風景もずいぶん変わった。そもそも駅自体が高架化に伴って様変わりしている。当たり前だが昔は地上にあった改札口が空中にあり、そこから歩道橋を渡って地上に降りる仕組みになっているわけだが、なんかこう、昔を知る者としては、「いやそんな大袈裟にせんでも」と照れ臭くなったりするのだった。もっとも、いちおう東京の片隅でありながら微妙に田舎臭い空気には変わりがない。むしろ増幅されているような気もする。

 取材後、国分寺の丸井へ。作家先生に「これは履きやすいよ〜」と勧められたMERRELLというメーカーの靴が欲しくてたまらなくなってしまったのである。MERRELLの品揃えは国分寺の丸井が充実しているとのことだったのだが、なにやら丸井は大変なことになっているらしいので大丈夫だろうかと心配だったものの、丸井はまだ国分寺にあった(従業員は笑顔にあまり力がなかった)。試着(試履?)してみたらMERRELLは私の足にもしっくりフィットし、クッションもやけに心地よいので迷わず購入。それはともかく、国分寺も立派になったもんだよなぁ。自分が高校生だった時代と比較しているので、トンチンカンな感想なんでしょうけど。どうして国分寺にあんなでかい丸井が必要なのか、私には理解できない。そういうものは、吉祥寺と立川で事足りていたはずなのだが。

 帰宅後、インテル×ミラン(セリエ第5節)をビデオ観戦。今頃そんなことで驚くのもどうかと思うが、なにしろ忙しくて両チームとも今季ほとんど見ていなかった私を激しく動揺させたのは、赤黒のユニフォームに身を包んだジュゼッペ・パンカロであった。うわあ。ほんとに着てるよ。似合わねえよ。っていうかダービーでスタメンなのかよ。なんでだよ。理由が全然わかんないよ。というわけで、年に二度しかないミラノダービーなのに、無駄にパンカロばっかり見てしまった。

 相変わらず、立ち居振る舞いだけは一流ぶっているものの、居ても居なくても構わないようなプレイスタイルである。コンセプトは、「ノー・チャレンジ」。自分へのプレッシャーが甘いのをいいことに、前にスペースがあれば一見果敢なドリブルを開始してみせるが、ちょっと敵の姿が目に入ると近くのセードルフかシェフチェンコに無難なパス。しかも後ろに戻らない。むろんワンツーを狙って前に走るでもなく、「いやあ、なんか、いいパス出しちゃったよなぁ俺」とでも言いたげな風情でうっとりと佇んでいる。たまに敵陣まで攻め上がったかと思えば、時間も空間も潤沢に与えられたどフリー状態にもかかわらず、クリアしたのかと見紛うようなデタラメクロスだ。後半途中でコスタクルタと交替させられていたが、そのときも客席に向かって拍手したりなんかして、手前勝手な達成感を表現していた。おまえ、なんもしてないじゃん。ゴール決めた仲間に真っ先に抱きついてただけじゃん。あんな奴がいても1-3でインテルに圧勝するんだからミランはほんとうに強いのであろう。次節はラツィオ戦だ。またスタムを右SBに起用してパンカロのトイメンに置くというのも面白いかもしれない。パンカロの自滅点でウノゼロ希望。




2003.10.06.Mon. 11 : 55 a.m.
BGM :THE 3 SOUNDS "INTRODUCING"

 金曜の晩は、Kay'n君はじめ大学時代の語学友たちと神楽坂で酒&歌。飲みたいときに集まってくれる友がいるのは本当にありがたい。とはいえ私のために集まったというわけではなく、その夜の主賓は、読売新聞から朝日新聞へという驚異の電撃移籍を果たした敏腕社会部記者ルイス君である。ルイス君というのは、エンリケとフィーゴを思い出した私がいま勝手に名付けたものですが。移籍の事情は差し障りがありそうなので書かないけれど、ずいぶん思い切ったものだなぁと思う。しかし思い切るには思い切るに足りるだけのやむにやまれぬ理由というものが本人の中にあるはずだし、すべての転職は実行した時点で「正解」だ。会社を移ったり辞めたりしたことを後悔している人間に、少なくとも私は一人も会ったことがない。きっと彼は今後もバリバリと良い仕事をすることだろう。そして、この飲み会で私がいちばん嬉しかったのは、音楽プロデューサーであるKay'n君に、「井上順なみに上手い」と、タンバリンの腕前を褒めてもらったことだ。バッヂの諸君、ライブでタンバリニストが必要なときは、いつでも私に声をかけてくれたまへ。

 そんなわけで、朝までタンバリンを叩いていた結果、土曜日は死に体。遊びたがるセガレをまた邪険に振り払ってしまった。いけない父親だ。しかし、あの遊びたがりと毎日朝から晩までいっしょに過ごしている母親は本当に大変だなぁと思う。夕刻、浜田山のオリンピックでセガレの自転車(18インチ)を購入。

 で、きのうの日曜日はクルマにその自転車を積んで小金井公園に行き、セガレに特訓を施す。サドルの後ろを持って何度か全力で伴走し、倒れるかと思った。父親としての通過儀礼の一つである。その甲斐あって、自力でスタートして漕げるようになった。まだ、たまに曲がるべきところを直進してしまうことがあるので、町中で乗らせるには危険な段階だが、本人はとても満足そう。私も思わず「そうだ! その調子だ!」などと人目もはばからずに叫んでしまいました。子供が何かをマスターした瞬間というのは、じつに爽快だ。次のテーマは、水泳である。

 ゆうべは、ラツィオ×キエーボ(セリエ第5節)をライブ観戦。生中継で、実況が倉敷さんで、主審がコリーナさんと、妙に世間の扱いがいいので嬉しかった。前に倉敷さんの実況でラツィオの試合を観たのは、まだアルメイダやサラスがいた時代だったような気がする。あのパルマ戦でアルメイダが右足で叩き込んだ超ロングボレーシュートは今も忘れられない。えらかったよな、アルメイダ。それに比べてえらくないのはリベラーニとダボなのであって、なんで苦手のキエーボ戦で中盤がこの二人なんでしょうか。先日のプラハ戦で少しだけ見直したリベラーニだったが、やっぱダメだあの人。自分がドロボー顔のくせに、ボール盗られてばっかなんだもん。おまけにCBがコウト&ミハイロである。ただでさえ勝てる気がしないキエーボ相手に、絶望的な布陣。そんなこんなで、前半20分まではキエーボの機敏なプレスに押しまくられて自陣に釘付けだった。キエーボって、なんかわさわさ寄ってきて鬱陶しい。蚊みたいなチームである。その蚊を叩こうとして自分の顔を叩いてしまったのがコウトだったわけですが。無駄なファウルかまして、てめえがマブタ切ってどうする。

 しかしなぜか失点することはなく、後半にミハイロのFKが相手の壁に当たってGKマルケジャーニの逆をつき、1-0で辛勝。キエーボの壁って、なんでぴょんぴょん飛び跳ねてるんだ? 蚊じゃなくて蚤なのか。もっとわからないのは、その壁の横に並んだコウトも一緒になってぴょんぴょん飛び跳ねていたことだ。「お嬢さんお入んなさい」なのかそれは。ともあれ、勝っただけの試合だったが勝ってよかった。あと、マルケジャーニの額がシアラー化していたのがちょっと淋しかったです。




 

2003.10.03.Fri. 16 : 10 p.m.
BGM : ITZHAK PERLMAN & VLADIMIR ASHKENAZY "BRAHMS : VIOLIN SONATAS"

 ゆうべは、ガラタサライ×ソシエダ(CL第2節)をビデオ観戦。なんでラツィオ戦じゃないのかというと、9時半頃に帰宅するまで、8時からのラツィオ×プラハ戦(308ch)が10時から始まると信じていたからである。ラツィオファンのすずき君がメールに「8時までに帰りたいけど無理でした」などと書いていたにも関わらず、だ。ほんとに脳ってのは、思い込んだら頑固ですね。先日ゲストブックのほうで、私の両親が北海道に住んでいると思い込んでいた方々がいらっしゃったが、そのキモチがよくわかったです。10時には帰れると思っていた私は録画もしていなかった。仕方ないので深夜1時からの再放送を録画予約し、前日に録画してあったこのゲームを観たという次第である。

 人もボールもキビキビとよく動くおもしろいゲームだった。ニハトもコバチェビッチもシャビ・アロンソも無事に残留したソシエダには、「俺たちやれるんだもんね」という昨季の実績に裏打ちされた自信を感じる。ニハトのシャープな折り返しをニアポストに詰めたコバチェビッチが決めた先制ゴールは、昨季のスピード感に磨きがかかったような印象。勝ち越し点となったシャビ・アロンソのヘディングによる意外性の一発も、もはや山倉のホームラン以上の「定番」となった感がある。ガラタサライのほうは、なんでフランク・デブール獲ったかなぁ。入れてくれって言われて断りづらかったのかなぁ。ソシエダ相手に通用するようなら、そもそもバルサから追い出されてないしなぁ。CLレベルのセンターバックなら、2点のうち1つは止めないといかんでしょう。ところでハカン・シュクールのゴールを見たのは、あの韓国戦の史上最速ゴール以来のような気がする。狭〜いコースを通過してきたスルーパスをピタリとトラップして反転シュート。序盤は相変わらずのイマイチ君ぶりで、「トルコの西澤」などという言葉も浮かんだりしたものだったが、かっこいいゴールだった。1-2でソシエダの勝ち。

 で、ようやく今朝になってラツィオ×スパルタ・プラハ(CL第2節)を観たのである。久々の出勤前観戦だ。セガレを幼稚園に送り届けてから、愚妻と二人でぎゃーぎゃー言いながら観た。ぎゃーぎゃー言いたくなるような試合展開だったからである。序盤は淀みのないパスワークでボールを支配し、「もしかしたら今のラツィオって世界でいちばん甘美かつ洒脱なサッカーかも(はあと)」などと思ったりなんかしちゃっていたのだが、前半27分、私がちょっと目を離した隙にファバッリが裏を取られ、ポボルスキーが浮かせたラストパスをシオンコに小器用に押し込まれて0-1。それ以降は目を覆いたくなるようなズタボロ状態になってしまったのであった。もろい。もろすぎる。アウエーで先制しても引かずに攻め続けたプラハの戦いぶりも立派だったが、なんか、もう、見るからに頭ん中とっちらかっちゃってる感じ。そういうところが可愛いんだよな、ラツィオって。

 などと言っている場合ではないのであって、先制ゴールから10分もたたないうちに、阿鼻叫喚の大混乱に陥った守備網を嘲笑うかのようなごっつぁんゴールをポボルスキーに叩き込まれて0-2である。誰だ誰だポボルスキーを手放したのは。え? 本人が出て行きたがったって? 引き留めろよバカ。コンセイソンとポボルスキーと、どっちがラツィオにとってポボルスキーだと思ってんだおまえら。

 だが後半のキックオフ直後、第一のミラクルが起きる。スタムのロングフィードをコラーディが頭で落とし、下インザーギが振り向きざまのシュート。絶対にそこを狙う余裕はなかったはずなのだが、ボールは見事にGKの股間を抜けてゴールに転がり込んだのである。後ろ向きで投げたダーツが的の中央に刺さったぐらいの偶然だ。いぇーい。偶然ってすばらしい。

 さらに61分、第二のミラクルが起きた。それまで何度も大根役者ぶりを見せていた下インザーギが、性懲りもなくペナルティエリア内で大袈裟に倒れてみせると、何を血迷ったのか主審がペナルティ・スポットを指さしたのである。あれがPKなら、前半のやつのほうがもっとPKだと思う。主審に魔が差したとしか考えられない。魔ってすばらしい。これをPK上手の下が自ら決めて同点だ。彼の場合、PKだけは安心して見ていられるのだった。試合はそのまま2-2のドロー。ひっくり返せそうな雰囲気ではあったが、終盤にめちゃめちゃヤバい場面もあったことだし、勝ち点1はかなりラッキー。ラッキーってすばらしい。

 引き続き、チェルシー×ベジクタシュ(CL第2節)をビデオ観戦。朝から2試合も観られるなんて、暇ってすばらしい。しかし試合はちっともすばらしくなかった。まるでさっきのラツィオ戦を再現しているかのような展開で、アウエーのベジクタシュが前半に2点を先制。デサイーって、もうフランク・デブール並みにダメかも。すぐ転んじゃうんだもん。足腰弱ってるとしか思えない。誰か杖を貸してやれ杖を。後半、2度とも同じオフサイド判定後のシュートでイエローをもらったイルハンが退場したものの、これがチェルシーを逆に苦しめた感じ。ゴール前でがっちりスクラムを組んだベジクタシュ守備陣を崩すことができず、そのまま0-2である。チェルシー、なんか雰囲気が暗い。サッカーに集中できてない印象。やはり噂は本当なのか。あの事件は奴らの仕業なのか。いやだなぁ。




2003.10.02.Thu. 10: 10 a.m.
BGM : WES MONTGOMERY "A DAY IN THE LIFE"

 本日、私の耳目の届く範囲で、
 ラツィオ×プラハ戦の話題に触れることを堅く禁じます。

 休暇というのは、充電ではなく放電になるのが世の常なのである。お茶ズボの原稿を夕方まで(夕方って何時までだ?)に書かねばならぬのだが、例によってなあんも思いつかんのである。きょうの夜まで(夜って何時までだ?)と言われているタイアップ原稿を先に片づけるべきかどうか迷いつつ、何よりも先にこの日誌を書き始めてしまったのである。ゆうべはバレンシア×レアル・マドリー(リーガ第5節)をビデオ観戦したのである。せやからマケレレ手放したらアカンゆうたやないか、と言いたくなる試合だったのである。マドリー最終ライン手前のスペースを、牛若アイマールが縦横無尽に引っかき回す様が愉快でたまらなかったのである。アイマールのしなやかで優雅で流麗なボールさばきと比較すると、ベッカムの鈍重さと体の固さが際立つのである。2-0でバレンシアが勝って嬉しかったのである。でも、この試合のことはコラムに書けないのである。〆切の前にWOWOWでサッカーを見てもあんまり意味がないのである。やっぱりCLを見ておくべきだったと、ちょっと後悔しているのである。




2003.10.01.Wed. 14: 20 p.m.
BGM : DAVE VALENTIN "LEGENDS"

 温泉からクルマを運転して帰ってきた瞬間に「温泉に浸かりたい」というモチベーションが極大化するというのは、おそらく私たち日本人が永遠に抱え続けなければならないジレンマであるに違いない。しかも、帰宅するなり仕事場の留守電を聞いたら「特急の仕事があるんですけどぉ〜」というマッキー社長からのメッセージが入っていたりすれば、なおさらだ。明日の夜までに2000字だとぉ? サッカーズも明日の夕方までに2000字だ。うー。私は温泉に浸かりたい。

 しかし天候に恵まれた良い休暇であった。箱根ホテル小涌園は、野暮ったい名称のイメージにはそぐわない小綺麗で都会的な雰囲気。老夫婦からガキのカップルまで幅広い客層である。20代女性仲良し3人組もいっぱい見かけた。あの手の仲良し3人組って、あんまり仲が良さそうに見えないから不思議だ。たぶん、それぞれがその状況に対して少しずつ不納得な思いを抱えているからだと思う。3人の「行間」にそこはかとなく不機嫌さが見え隠れしているように感じるのは私だけではあるまい。だが人のことはどうでもいいのであって、愚妻もセガレも機嫌がよさそうなのでヨカッタ。なにしろ清水の舞台から飛び降りるつもりでフンパツし、48平米もあるデラックスツインルームをご用意したのだから機嫌をよくしてもらわないと困る。

 ひとしきりセガレをベッドの上で飛び跳ねさせた後、宿から徒歩1分のところにあるユネッサンへ。水着で遊べる温泉テーマパークである。ゲストブックのほうでO崎くんが気にしていた四角い顔のキャラクターは、ザネッティでもザネッピイでもポザッピイでもなく、ボザッピィという。名前の由来は知らない。なんだろうボザッピィって。あんまり守備はさせたくない感じの名前ですね。温泉テーマパークといいながら、水着ゾーンは単なる温水プールであるようだった。裸ゾーンには行かなかったので、そっちがどうなのかは知らない。なぜ箱根まで来て温水プールで遊ばなければいけないのかとかそういう疑問はこの際抱いてはいけません。セガレは水遊びが大好きなので、それでいいのである。さんざん温水に浸かった後、宿に戻ってまた温泉に浸かったので、体はもちろん魂までふやけそうだった。でも、初めてセガレと二人で露天風呂に入り、「おー」「きもちいいねー」「あー」という会話を交わすことができて嬉しかった。

 翌日は朝から箱根彫刻の森美術館へ。昔、深夜のフジテレビでしばしば見た彫刻がいくつもあって、初めて来たような気がしなかった。圧巻は、屋外展示場に入ってすぐのところに立っているニキ・ド・サン・ファールの「ミス・ブラック・パワー」という巨大な作品。インパクトという点でこれを超える作品には最後まで出会わなかったような気がする。セガレもかなり気に入った様子で、見るなり「ボブ・サップだ!」と叫んでいた。しかし、それよりもセガレが気に入ったのは「ミス・ブラック・パワー」の近くにあったアントニー・ゴームリーの「密着」という作品である。きのうも帰宅すると、「みっちゃく!」と言いながら床の上に大の字で俯せになって真似をしていた。私も真似したかったが大人なので我慢した。あとセガレ的には、女性をモデルにした彫刻たちの「おっぱい」がいちいち気になっていた模様。彫刻の森は、おっぱいの森でもあるのだった。

 没後30年ということで、常設のピカソ館に加えて、絵画館もピカソ一色。1973年に亡くなったということだが、なんとなく、もっと最近まで生きていたような気がする。ところでキュビスムって、いくら見てもどういうことなのかよくわからない。絵画史における必然だったのか偶然だったのかというようなことが、よくわからないのである。たとえば遠近法なんかは、そりゃあいつか誰かが思いつくわなぁと素人的には思うわけだが、キュビスムはねぇ。でも、ピカソのキュビスムは見ていて面白い。あと、おそらく大半が晩年の作品なのだろうと思うが、ピカソが壺や皿に描いた無邪気な絵が私は好きだ。図工好きなセガレは、「これならボクも作れそうだ!」と創作意欲を燃やしていた。そういうものではないのだということが自分でわかるぐらいのレベルまで、熱心にモノ作りに取り組んでもらいたいものである。

 ジョアォ〜ン・ミロの「人物」という彫刻作品のそばにある、シャボン玉をイメージした遊具(巨大なジャングルジムみたいなもの)をセガレが気に入ったこともあって、彫刻の森美術館には三日目にも足を運んだ。二日続けて行ってもいいかと思わせるような天気だった。日焼けするほど日差しが強いが、木陰は上着を羽織りたくなるような涼しさ。絶好の彫刻の森日和である。たぶん、妻と子の日頃の行いが良かったのであろう。その三日目は、彫刻の森を出たあと、芦ノ湖で遊覧船。さらに箱根3D宇宙恐竜ワールド&メルヘン水族館というところにも立ち寄った。場末の見せ物小屋みたいな怪しい雰囲気のスポットだったが、3Dの映像はそれなりによく出来ていた。あんな児童館に毛が生えた程度の施設でもあのレベルの映像が上映できるぐらい、あの種の技術がコストダウンしているということか。キャプテンEOでびっくりしていたのも、今は昔の物語である。

 そんなわけで、行く先々で買い物もし、なんだかんだと散財させられたが、2ヶ月も家族を放っておいたので仕方がない。今月からは、完全週休二日制の実現を目指して真面目にコツコツ働くつもりである。

 帰宅後、エンポリ×ラツィオ(セリエ第4節)をビデオ観戦。ほとんど居眠り状態で、愚妻が「やった!」「ばかばか!」などと大声を出したときだけ目を開けていたので、ハイライトを見たのと変わらない。私の記憶がたしかならば、スタンコビッチの先制ゴールで前半を0-1としたものの、後半にネグロのせいで2-1と逆転され、下インザーギのヒールによる華麗なラストパスを受けたヒゲ花の同点ゴールでなんとか勝ち点1を拾った試合。だったと思う。前節のパルマ戦は(観ていないが)ペルッツィ不在のせいで負け、今節はスタム不在のせいでドロー。なんでスタムが出てなかったのか知らないのだが、わかりやすいチームである。この2試合で5つの勝ち点を落としたのは痛いが、ペルッツィとスタムさえ揃っていれば負ける気がしない。なので、いつも揃っていてください。




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