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(1)あなたに夢中
(2)そよ風のくちづけ
(3)危ない土曜日
(4)年下の男の子
(5)内気なあいつ
(6)その気にさせないで
(7)ハートのエースが出てこない
(8)春一番
(9)夏が来た!
(10)哀愁のシンフォニー
(11)やさしい悪魔
(12)暑中お見舞申し上げます
(13)アン・ドゥ・トロワ
(14)微笑みがえし
(15)つばさ


2005.04.02.Sat. 8: 15 a.m.
BGM : CANDIES "BEST COLLECTION"


 土曜日の朝、『危ない土曜日』を聴きながら憲法本400枚をフィニッシュ。ライター冥利に尽きるとはこのことだ。何を言っているのか全然わからないし、昨夜から今朝にかけて何を書いていたのかもすでによく覚えてはいないが、とにかく脱稿。厳しかった本年最初の四半期が、ようやく終わった。正確には四半期と二日か。今月はギター強化月間にしよう。人づきあい強化月間にもしたい。会わなければいけないのに会えていない人が大勢いる。その気にさせないで。いや、べつに意味はない。眠い。ハートのエースが出てこない。やめられないこのままじゃ。いや、もう書くのはやめていい。ハートのエースが出てこない。ハートのエースが出てこない。







1.Didja Get Any Onya [Live]
2.Directly From My Heart to You
3.Prelude to the Afternoon of a Sexually Aroused Gas Mask [Live]
4.Toads of the Short Forest
5.Get a Little [Live]
6.Eric Dolphy Memorial Barbecue
7.Dwarf Nebula Processional March & Dwarf Nebula
8.My Guitar Wants to Kill Your Mama
9.Oh No
10.Orange County Lumber Truck [Live]
11.Weasels Ripped My Flesh [Live]


2005.04.01.Fri. 11: 55 a.m.
BGM : FRANK ZAPPA/MOTHERS OF INVENTION "Weasels Ripped My Flesh"


 ゆうべは、自宅に持ち帰った(というかメールで自分宛に送るのだが)原稿を書きながら、横目でイスラエル×フランス(W杯欧州予選グループ4)を観戦。平林君、まさかこの試合が見たくて火曜日に離日したんじゃなかろうな、と思いつつカメラがとらえたテルアビブの観客席を凝視したが、彼の姿は見当たらなかった。試合は、132対97でイスラエルの勝ち。四月馬鹿なので、これ以上は思いつかないほど大胆なウソをついてみた。ほんとうは1-1のドローである。トレゼゲのゴールでフランスが先制、そのトレゼゲが報復行為を咎められて退場したあと、82分にイスラエルが追いつくという展開。もし奥さんのご家族といっしょにテレビ観戦してたりしたら、盛り上がったことだろうなぁ。ともあれ、イスラエルのがんばりもあって、このグループは大混戦の模様。目が離せない。離しちゃうかもしれないけど、離したくない。

 四月馬鹿に何を聴こうかと思って最初に頭に浮かんだのが、フランク・ザッパの『いたち野郎』だった。仕事をしながら聴くには丁度いい穏やかな音楽。

 もっとウソをつきたいが、考えている時間がない。
 残りはおよそ50枚。明日は土曜日である。







1.Hard Road
2.It's Over
3.You Don't Love Me
4.Stumble
5.Another Kinda Love
6.Hit the Highway
7.Leaping Christine
8.Dust My Blues
9.There's Always Work
10.Same Way
11.Supernatural
12.Top of the Hill
13.Someday After Awhile (You'll Be Sorry)
14.Living Alone


2005.03.31.Thu. 11: 50 a.m.
BGM : John Mayall & the Blues Breakers "A Hard Road"


 日本×バーレーン(W杯アジア最終予選)は1-0の辛勝。もはや枯渇しているようにも思われたジーコのバカヅキだったが、その最後の一滴を絞りきったかのような決勝ゴールではあった。あんなふうにゴールに正対した状態で自滅点を決めてくれる人って、かなり珍しいと思う。サルミーン君の将来に幸あれ。懸命に背伸びしてオウンゴールを誘発した二人のセンターバックはえらい。できもしないオーバーヘッドを空振りして倒れていたセンターフォワードはあんまりえらくない。でも、きのうの試合で一番えらかったのは森山良子さんかな。面識もないのに「さん」付けなのはそれなりの理由があるが、とにかく立派な君が代だった。「試合前の君が代は男声のほうがいい」という意見はあっさり撤回しよう。あれは単に石川さゆりがダメだっただけだ。聞くところによれば、愛知万博の開会式も「森山さんの歌だけが良かった」という人が少なくないらしい。6月2日に、その森山さんも出演する寺島尚彦追悼コンサート「緑いろの個展」(東京オペラシティコンサートホール)を聴きに行くのが楽しみだ。べつに、師匠が構成・演出を手がけるからといって無理に宣伝しているわけではない。生で『さとうきび畑』を聴けるのはうれしい。『君が代』も『さとうきび畑』も同じように意味のある歌としてしっかり表現しきるのがプロ、ということか。







1.All Your Love
2.Hideaway
3.Little Girl
4.Another Man
5.Double Crossing Time
6.What'd I Say
7.Key to Love
8.Parchman Farm
9.Have You Heard
10.Rambling on My Mind
11.Steppin' Out
12.It Ain't Right
13.Lonely Years [*]
14.Bernard Jenkins [*]


2005.03.30.Wed. 12: 10 p.m.
BGM : John Mayall & the Blues Breakers "Bluesbreakers With Eric Clapton"


 ふだんは井の頭通りを歩いて仕事場へ向かうが、この季節は桜の案配を眺めながら神田川沿いの遊歩道を歩く。ほんのりと染まってきた蕾がセクシーだ。いや、ここはやはり大和言葉で「色っぽい」と言うべきか。桜の色っぽさとブルースの色っぽさは、似ているだろうか似ていないだろうか。ハードロックの開花寸前に録音されたレスポール+マーシャルの歪んだ音を聴きながら、そんなことを考える。なんてな。「考える」なんぞと言っているときにかぎって、べつに深く考えちゃいない。じゃあいつ考えているのかと訊かれても困ります。そういえば業務連絡を忘れていた。暮れに予定されている「おさらい会」の全体像は未定だが、とりあえずセットリストに『Living Loving Maid』(『Led Zeppelin II』の6曲目)と『Immigrant Song』(『Led Zeppelin III』の1曲目)が入ることはほぼ決定的な情勢なので、関係各位はそのつもりで。関係各位って、公式に名乗りを上げてないタボン君とヤマちゃんも入ってるからね。これは命令だと思ってくれていい。そんな命令系統は存在しないが、ともかく、同期の桜としてよろしく頼みますよ。おれ、がんばるからさ。







1.Power of Equality
2.If You Have to Ask
3.Breaking the Girl
4.Funky Monks
5.Suck My Kiss
6.I Could Have Lied
7.Mellowship Slinky in B Major
8.Righteous & The Wicked
9.Give It Away
10.Blood Sugar Sex Magik
11.Under the Bridge
12.Naked in the Rain
13.Apache Rose Peacock
14.Greeting Song
15.My Lovely Man
16.Sir Psycho Sexy
17.They're Red Hot


2005.03.29.Tue. 12: 45 p.m.
BGM : RED HOT CHILI PEPPERS "BLOOD SUGAR SEX MAGIK"


 いぇー。レッチリいぇー。……いちいちバカみたいだが、事実わりとバカなのだし、こうなると「いぇー」と書かないCDは気に入っていないように思われるのではないかという危惧もあったりして、じゃあ気に入ってないように思われて何か困ることでもあるかというと別に困らなかったりもするのだったが、ともあれ、これ以降はいちいち「いぇー」と書かないし、レッチリとはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのことである。TSUTAYAの女子店員がカウンターで「このレッチリなんですけど、歌詞カードがないんですがよろしいですか?」と訊くぐらいだから、レッチリといえばレッド・ホット・チリ・ペッパーズのことだというのが常識になっているのであろうし、私だってそれぐらいは知っているが、しかし、そこで芽生えているように感じられる仲間意識のようなものはなんだ。友達に「レッチリいいから聴いてみなよ」と言われるのは全然かまわないというか、そんなものはごく当たり前の会話だが、二十歳前後とおぼしき見知らぬ女の子に「このレッチリなんですけど」と言われると何か違うような気がするのだった。おまえに「レッチリ」なんて言われたくない。いや私はレッド・ホット・チリ・ペッパーズではないので、彼女も私のことをレッチリと呼んだわけではもちろんないのだし、レッド・ホット・チリ・ペッパーズが彼女に「レッチリ」と呼ばれたくないものかどうかは知らないが、それにしてもこのアルバム、いいんだけど、ちょっと曲数が多すぎないですか。

 ふう。仕事の合間にでたらめな文章を書くと気持ちがスッキリする。

 そんなこんなで、憲法本のほうはあと約130枚だ。土曜日ぐらいまでには何とかなるだろう。何とかしないとセガレの春休みが終わってしまう。春休み中(4月5日まで)に恐竜博に連れて行かなければいけないのだ。何のことかよくわからないが「蚊」をモチーフにした展覧会にも行かなければいけないのだ。恐竜と蚊だ。約束したのだ。だいたい、原稿だって約束どおりに仕上げないといけない。ひたすら誰かとの約束を守るためだけに日々を暮らしているような気がする。しかし約束をする相手がいなくなったらおしまいだ。約束はありがたい。約束を守らない著者のせいで原稿を上げてもなかなか本にならないケースが近頃やたらと多いのはほんとうに頭に来るが、とりあえず私は私の約束を守ることだけを考えよう。約束を守らなくても仕事が来るような立場になったときが、もしかしたら人間にとって「終わりの始まり」なのかもしれない。そんなことより、きょうはまだ土曜日じゃないよな。なにしろ油断も隙もないからな。いいから、まだ近寄ってくんなよ。土曜日。







1.Big Bad Bill (Is Sweet William Now)
2.Face to Face That I Shall Meet Him
3.Pearls/Tia Juana
4.Dream
5.Happy Meeting in Glory
6.In a Mist
7.Flashes
8.Davenport Blues
9.Shine
10.Nobody
11.We Shall Be Happy


2005.03.28.Mon. 16: 15 p.m.
BGM : RY COODER "JAZZ"


 いぇー。

 もうじきイスラエルに発つ平林君から、郵便が届いた。「会社の引き出しを整理していたら出てきました」というのは、3年前の私の写真だ。著者近影用に愚妻に撮影してもらい、「この中から適当に選んで」と渡したうちの2枚が、いまになって戻ってきたのである。あんまり戻ってきてほしくなかった。なにしろ、そこに写っているのは現在より15キロ体重が多い私である。ぼんよよよ〜〜〜ん。ぼんよよよ〜〜〜ん。と、のんきな音さえ聞こえてきそうな雰囲気。見たくねー。しかしまあ、本を何冊も出してから、どんどん肥えてシャープな印象を台無しにしてしまう言論人の姿など見ていると、「そんなに栄養状態が良くなったのか?」などと思わないでもないので、まあ、いいか。念のため言っておくが、私は本を出してから栄養状態が悪化したわけではない。良くなってもいないが、減量しようと思って減量したのである。そういえば体重が減り始めた頃に実家に帰った際、母親に「やっぱりね。あなた、本を出したら次はダイエットすると思ってたのよ」と言われたのはいまだに大いなる謎だが、まあ、実の母親がそう言うのだから何か関係があるのだろう。それにしても、あの本も含めて、世に出ている写真がすべて3年前のものだというのはモンダイだ。うっかりしていると当時の体重に戻りかねないので、早いうちに何とかしたいものである。

 母親のことを書いたら、突如として思い出したことがある。私が高校生のときのことだ。茶の間で高橋ユキヒロの『音楽殺人』というレコードを聴いているときに、北海道に単身赴任していた父親から電話があった。おそらくは「いま何をしているのか」と訊かれたのであろう母親が口にした言葉に、私は耳を疑った。母親は、「いま、春太郎といっしょにジャズ聴いてたの」と言ったのだった。二重の意味で意外な発言である。「母親が何か用事をしている茶の間で、自分は高橋ユキヒロのレコードを聴いている」というのが私の意識だったのだが、母親は「いっしょに聴いて」いた。しかも、それは「ジャズ」だ。しかし私は、父親との電話を終えた母親に、「これはジャズじゃないよ」とは言わなかった。「じゃあ何なの?」と問われたらうまく答える自信がなかったし、もしかしたらジャズかもしれない、と思ったからだ。たぶん、さほど音楽を積極的に聴く趣味のない私の母親は、「ジャズ」という言葉を、「クラシックとは違う楽しげな音楽」(要は「軽音楽」か)ぐらいのニュアンスで理解していたのであろう。そして、それが通俗的な意味では大間違いだとも言えないような状況がかつてはあったのかもしれないなぁ、きっとロックが生まれる前はみんなジャズで踊ってたんだろうしなぁ、といったようなことを、ライ・クーダーの『ジャズ』を聴きながら思ったのだった。ロックも広いが、ジャズも広いのである。







1.Tamp 'Em up Solid
2.Tattler
3.Married Man's a Fool
4.Jesus on the Mainline
5.It's All over Now
6.Medley: Fool for a Cigarette/Feelin' Good
7.If Walls Could Talk
8.Mexican Divorce
9.Ditty Wah Ditty


2005.03.27.Sun. 17: 15 p.m.
BGM : RY COODER "Paradise And Lunch"


 いぇー。ライ・クーダーいぇー。

 くたびれているのである。肩と背中がバリバリだ。言っておくが、全開バリバリなのではないぞ。そんな勢いはありません。バリバリのコリコリなのだ。ただしタイプミスのほうは、本日も全開バリバリである。きのうは「頓知機構」とタイプしてしまった「統治機構」だが、きょうは「統治」まではちゃんとタイプできたものの、ふと気づくと「統治亀甲」になっていた。どんな統治じゃそれは。と言いつつ、その字面に妙な説得力を感じてヘラヘラ笑っていたりもするわけだが、そもそも「きっこう」の変換最上位語が「拮抗」ではなく「亀甲」になっていること自体がモンダイだよな。そうなった理由は、『わしズム』14号の座談会記事を読むとわかる仕組みになっていますが。

 一昨日(25日)の日誌では、「失望にまみれた別れ」なんぞと書いたせいで各方面にご心配をおかけしてしまったようで、ゴメンナサイ。なにごとも書いておかないと気持ちが収まらない人間だとはいえ、やはり、ああいう書き方はしちゃいけません。まだ何かと別れると決まったわけではないし、少なくとも『わしズム』のコラムは次号も書かせてもらえるはずなので、「打ち切りの予感」を抱いてしまった方々にはお詫び申し上げます。なるほど、そんなふうに読めるよなぁ。と、ご指摘を受けてから気づきました。もっとも、一挙二本掲載の14号で読者アンケートが二票未満だったりすると、どうなるかわからんけども。というか、いまだに書かせてもらっているのが不思議なぐらいの惨状が続いているので、打ち切りになってもそんなに嘆き悲しんだりしません。むう。







1.Mambo Sun
2.Cosmic Dancer
3.Jeepster
4.Monolith
5.Lean Woman Blues
6.Bang A Gong (Get It On)
7.Planet Queen
8.Girl
9.The Motivator
10.Life's A Gas
11.Rip off


2005.03.26.Sat. 23: 05 p.m.
BGM : T.REX "ELECTRIC WARRIOR"


 いぇー。Tレックスいぇー。

 イラン×日本(W杯アジア最終予選)は2-1の負け。いわゆるひとつの「想定済み」というヤツだからなのか、日常生活で頭に来ることとか哀しいこととか切ないこととかイロイロあって、なんだかんだと愚妻と世間話をしながら見ていたせいなのか、さして腹が立つこともなく、悔しさも中ぐらいで、われながら拍子抜けするほど穏やかな読後感。グループ3位でも可能性が残るんだから、当たり前といえば当たり前か。というか、来年もうワールドカップが開催されるということ自体に、なんとなく拍子抜けを感じるのはなぜだろう。またやんのかよ、というのが現状では正直なところ。どうせ、そのときが近づけばコーフンするに決まっているのだが、なんかこう、2002年以降、時間の経つのがやけに早い。

 だいたい、近頃の1週間の短さといったらどうだ。土曜日に88円を握りしめてバッヂのライブに行ったのは3日ほど前のことだとしか思えないのに、きょうはまた土曜日だ。まったく、最近の土曜日ときたら油断も隙もない。今年の土曜日って、去年より多くないですか。そんなことないですか。

 原稿執筆中、「統治機構」と書くつもりで「頓知機構」とミスタイプしてしまって驚いた。キーボードにおける「U」と「N」の配置はぜんぜん近くないのに。自分で自分のことが信じられない。ちなみに昨日は「国家からの自由」と書くつもりで「こっからの自由」とミスタイプした。われながら、いいボケ味を持った指だと感心。いよいよヘバってまいりました。







1.Blue Blue Sky
2.Too Close to the Sun
3.Blown by the Wind
4.Cloudbreak
5.I Can't Look Down
6.Brother up in Heaven
7.Fall Free
8.Apollo
9.So Far Away
10.One Day to Fly
11.Blue Blue Sky


2005.03.25.Fri. 13: 10 p.m.
BGM : ALAN PERSONS "ON AIR"


 深川にとって唯一の著書『キャプテン翼勝利学』の担当編集者ハポエルテルアビブ君こと平林君が、今月いっぱいで退社し、奥さんの祖国であるイスラエルに移住するのである。数週間前に知らせを受けたときは、とてもビックリした。だってイスラエルだ。それもテルアビブだ。そこで暮らしている大勢の人々には申し訳ないけれど、報道を通してあの国と接しているだけの人間は、「テルアビブ」と聞いただけでどうしたって何か陰惨なイメージを抱いてしまう。知り合いがテルアビブに住むと聞いて心配しない日本人はあんまりいないだろう。しかし本人によれば、昨年現地を訪れたときに治安状況が昔よりずいぶん良くなっていたとのことで、それだけが退社&移住の理由ではないものの、まあ日本だって子供を育てる上で安全な国だとは決して言えない状態なのだし、地中海を眺めながら暮らすのも悪くない、というようなこともあって、とにかくもう来週には日本を離れてしまうという。信頼する編集者、それも深川峻太郎の生みの親である編集者が業界を離れるのは、辛いし痛いし寂しいよ。もっと一緒に面白おかしい仕事をしたかったよ。

 しかしまあ、あのような奇書を一冊でも世に送り出すことができたのは、お互いにとって得難い経験だった。2001年のあれは初夏だったか、そういう企画があることを聞かされ、「書いてみませんか?」と言われたときの猛烈にドキドキした気持ちは今でも忘れない。たぶん、死ぬまで忘れないだろう。そして、初めての著書が完成したときの感激も。あんな気持ち(どんな気持ちかはとても言葉では言い表せない)を味わうことは、もう二度とないと思う。本のあとがきにも書いたが、そうやって無事に本ができあがったのも、彼の的確なコーチングがあったればこそである。おかげで、物を書いていく上での自信のようなものを持てるようになった。ほんとうに感謝しています。それ以外にも彼とは、出会ってからおよそ3年のあいだに、ゴーストライターとして6冊の本をつくった。むずかしい仕事ばかりで苦労したけれど、そういう仕事を振られたのも、彼が私を信頼してくれていたからだと勝手に思うことにしよう。だからこそ、編集業をやめてしまうのは惜しいのだが。

 というわけで、きのうは夕刻から茗荷谷でKay'n師匠のレッスンを受けてから神保町へ向かい、会社主催の送別会に二次会から出席。しばし歓談したのち、平林君が急に真顔になって「ひとつ相談したいことがあるのですが」というので、何事かと緊張した。聞けば、このたび日本を離れるにあたって、ある仕事関係者から餞別を受け取ったという。私の頭には「餞別」という概念が存在しなかったのでちょっと動揺したが、べつに彼は私に同じことを要求したわけではない。私に金がないことぐらい、この日誌を読んでいる彼は先刻承知である。餞別を受け取り、一人になってから封筒を開けてみたら「からっぽだったんですよぉ〜」という話だ。「この場合、どうしたらいいと思いますか?」っておれに訊かれてもなぁ。気持ちだけありがたく受け取っておくしかないわなぁ。その封筒に「気持ち」が入っていたかどうかも微妙なところではあるけれど。そんなことはともかく、「これで時差なしにヨーロッパのサッカーが観られるようになります」などと言って微笑んでいる、わりかし脳天気な平林君ではあった。イスラエルにスカパー!があるかどうかは知らないが、ともあれ、どうかお元気で。テルアビブからの書き込みを待ってます。

 ところでその送別会の最中、べつの信頼する編集者から携帯に電話があった。状況が状況なので詳しい事情は聞けなかったが、こちらもまた大切なものとの「別れ」を予感させる内容だった。「人」との別れではないけれど、とても悔しく、そして哀しい気持ちになる話。いまはまだそれについて書くことはできない。いずれ書けるようになるだろう。世の中には希望に満ちた別れもあれば、失望にまみれた別れもある、とだけ言っておく。







1.TUESDAY MORNING
2.I'M READY
3.TIME AWAY
4.MOLTON GOLD
5.BACK STREET CRAWLER


2005.03.24.Thu. 09: 30 a.m.
BGM : PAUL KOSSOFF "Back Street Crawler"


 あした発売される予定の『わしズム Vol.14』が編集部から届いた。すでに表紙の写真はここにも載せていたが、実物を見ると、その破壊力に圧倒されて声も出ない。ともあれ、私の労力など編集部のそれに比べたら屁でもないけれど、今号もよく働かせてもらったもんだよなぁ、とシミジミ。しかし私は『わしズム』の仕事が大好きだ。と、あらためて思った。キツい日程でへろへろになりながら対談原稿など書いていても、「まだまだ、あと二本でも三本でもやりまっせぇ」という気になる。べつにコラムを書かせてもらっているから言うわけではない。もっと原稿料が欲しいから言っているわけでもない。欲しくないとも言ってないが、とにかく『わしズム』の座談会やらインタビューやらの取材現場には、ほかでは味わえない魅力があるのだ。うまく言えないけれど、なにかこう、関わっている者を意欲的にさせる空気が充満しているのである。

 それはもちろん、小林編集長の人柄と巨大な才能によってもたらされるものだが、それを受け止め、歯を食いしばってカタチにしようとする編集部のプロ根性の凄さも、周囲の人間を走らせる原動力のひとつであろう。いずれにしろ、こんな「仕事の快楽」を存分に味わわせてくれる雑誌(ほんとうは書籍だけど)にライターとして創刊号から携わることができたのは、じつに幸運かつ幸福なことだ。そして、そんな快楽を現場の人間に味わわせてくれなさそうに見えることが、私があの堀江という人に反感を抱く理由だったのかもなぁ−−と、編集長の巻頭言を読んで思った。どういう巻頭言かは、明日、書店でお求めになってからお読みください。ちなみに私のコラムは、西部邁先生を前後からサンドイッチするかたちで二つ載ってます。ひとつは何となく既視感があるかもしれないが気にしないように。そっちが製品版ということで。







1.One Angry Dwarf and 200 Solemn Faces
2.Fair
3.Brick
4.Song for the Dumped
5.Selfless, Cold and Composed
6.Kate
7.Smoke
8.Cigarette
9.Stevens last night in town
10.Battle of Who Could Care Less
11.Missing the War
12.Evaporated
13.金返せ


2005.03.23.Wed. 15: 05 p.m.
BGM : BEN FOLDS FIVE "Whatever And Ever Amen"


 仕事ばかりしている。つまり朝から晩まで憲法のことばかり書いているということだ。いまなら日本国憲法の第1章から第10章までの章タイトルをすべてソラで言えるぞ。1章から順に、天皇、戦争の放棄、国民の権利及び義務、国会、内閣、司法、財政、地方自治、改正、最高法規だ。どうだ参ったか……(有斐閣の『判例六法』を開いて答え合わせ中)……あらら。全部で11章あるんでやんの。最後に「補則」っていうのがあるんですね。ちぇっ。いったい一人で何をやっているのかよくわからないが、まあ、そんな毎日。先月、変態とバカしか登場しないエログロ猟奇本を書いていたのがウソのようだ。しかし、そんな本を書いて生計を立てられるのも、憲法があるおかげなのかもしれない。そして、エログロ猟奇本よりも憲法本のほうが、じつは書いていて刺激的だったりもするのだった。憲法、おもしろい。

 しばらくセガレのサッカーについて書いていなかったのは、私自身あまり練習を見に行っていないし、たまに行ってもあまり見るべきところがなかったからなのだが、連休中の久我山イレブンの練習試合で、奴は初めて「ドリブルで2人か3人抜く」という偉業をやってのけたらしい。2人なのか3人なのかわからないあたりが、その瞬間の無我夢中っぷりを物語っているところだ。マラドーナはイングランド戦で何人抜いたか自分で覚えていただろうか。ともあれ本人、ドリブルしながら「うわ、ボクにこんなことができるんだ!」とビックリしていたという。そのわりに「蟹」という漢字や「鰐」という漢字が書ける自分にはビックリしていないようなのが不思議だが、まあ、いい話である。残念ながら3人目か4人目でボールを奪われて、シュートまでは持ち込めなかったようだけど。あと、リフティングはまだ一回しかできない。セガレが傷つくので、「それ、リフティングじゃなくて単なるパントキックだろ」とは言ってはいけない。セガレの成長っぷりを楽しみにしている方もおられるようなので、ちょっと報告してみました。




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