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江戸川駄筆のサッカー日誌
1999-2000/vol.36

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Readers' Mail No.099(5/23)

似てる人シリーズ(相変わらずドメスティック)

by ビバクライファート


●セレッソ大阪の副島監督と、「アンタッチャブル」でショーン・コネリーを殺し、最後の方で裁判所の屋上からケビン・コスナーに突き落とされて死んじゃう殺し屋。

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5月25日(木)13:00 p.m.
 ビバクライファートさんから似てる人、いただきました。99本目の投稿です。記念すべき100本目の投稿者には、本誌編集部より筆者の肩を揉む権利をプレゼントいたします。どっかのヒッキー君みたいに、100本目争いでケンカしないでね。それはともかく、またまた映画ネタである。『アンタッチャブル』ときたか。よくできた映画だったよねー。って、そーゆー話じゃないですね。だからぁ、覚えてないっちゅうの。でも副島監督の顔は最近、何かの試合で見た。たしかに言われてみりゃ、殺し屋っぽい。しかし「殺し屋」って、あらためて見ると凄いコトバだな。魚屋は魚を売り、靴屋は靴を売り、まんじゅう屋はまんじゅうを売り、殺し屋は殺しを売るのである。すいませーん、殺し一つくださーい、大盛りで。へい毎度どうも、いまなら2つセットで3割引になりますけど、いかがっすか。うーん、もうちょっと安くなんないの? えーい、奥さんきれいだから思い切って半額だ半額、もってけドロボー。やーねぇ、殺し屋さんにドロボー呼ばわりされるなんて。ってこともあるに違いない。なんたって殺し屋なんだから。でも堺屋は堺正章を売らないし、松屋で松は売ってない。そんでもって町屋は……え、もういいですか。はいはい。あー、くだらねー。わたしは疲れているのである。

5月24日(水)
 WOWOWの番組ガイドが届いた。番組表に書かれた対戦カードを眺めているだけで、EURO2000に向けて気持ちが高揚する。解説は奥寺、水沼、田中の3人でまかなうようだ。うーむ。イヤだなぁ、田中孝司。あなたはイヤじゃないですか。最近は奥寺さんの「語尾上げ」もキモチ悪い。金田さんとか信藤さんとかにやってほしかった。田中担当ゲームは副音声で見ることにしよっかな。

5月23日(火)
 仕事。ひたすら、仕事。

5月22日(月)
 愚息の誕生日である。早いもので3歳になった。もう補助輪付きの自転車にも乗れる。箸も使い始めた。12ぐらいまで数字も数えられる。ジャンケンもほぼマスターした。文筆業者のセガレらしく、「本」と「文」の2つだけ漢字が読める。偶然リダイヤルボタンを押して父親の仕事場に電話をかけてきたこともあった。ハサミも器用に使ってみせる。
 だが、しかし。そんなおまえが、なぜ、まだオムツをはいている? 今から、下半身は別人格、というやつなのか。三つ子の魂百まで、というけれど。うーむ。

5月21日(日)9:30 a.m.
 この1週間で、贔屓チームがのべ4回の優勝である。めでたい。まずラ・コルーニャ×エスパニョール(リーガ第38節)は2-0でデポルティボが勝ち、初優勝を決めた。ドナトのゴールなんて初めて見たぞ。リーグ戦の終盤はヨレヨレで、バルサのもたつきに助けられた感もあるが、立派立派。試合後のグラウンドは群衆がなだれ込み、革命でも起きたかのような熱気であった。なぜか俺はヨーロッパの群衆を見るとグッときてしまう。リーガ上位の順位は、1位デポル、2位バルサ、3位バレンシア、4位サラゴサ、5位マドリー。シーズン序盤は、まさかバレンシアが3位まで浮上してくるとは思わなんだ。2シーズン制なら後期はブッチ切りの優勝である。わからんもんやね。シーズンは長い。サラゴサは、マドリーがCL優勝だとUEFAカップに回されてしまうらしい。なんか気の毒な話だ。ま、ユナイテッドとバイエルンを恨むんだな。

 さらにチェルシー×アストンヴィラ(FAカップ決勝)は、1-0でチェルシーの優勝。互いに慎重な戦いぶりで、シュートの少ないゲームだった。73分、左サイドからゾラの蹴ったFKを、ヴィラGKジェームスがパンチングミス。こぼれたボールをサウスゲートと競り合ったディ・マッテオがタッチの差で蹴り込んだのが決勝点となった。CLがベスト8止まり、プレミアも5位でCL出場権を逃したチェルシーだが、最後に笑えて何よりである。CLがないぶん、来季は打倒ユナイテッドに専念してもらいたい。でも、ゾラがナポリ移籍を希望してるってホント? バッジョも行くとかいう噂があるし、昇格が確実視されているナポリが、来季セリエの目玉商品となるのか。ゾラの後釜ということなのか、チェルシーはサラス獲得に動いているらしい。イタリア内で移籍するよりは、チェルシーに行ってくれたほうが応援のしがいがあるかも。

 試合は見ていないが、レバークーゼンは最終節で負け、バイエルンが逆転優勝をしたようである。やはり最後がアウエーってのはきつかったか。でも引き分けでオーケーだったのにねぇ。オウンゴールなどもあって自滅したらしいが、バルサと違って最後まで諦めないバイエルンもさすがであるな。しかし、こう最終節のどんでん返しが続くと、デポルティボはよく逃げ切ったもんだと思う。バルサはともかく、もう少しバレンシアのスパートが早かったら差し切られたかもしれん。とにかく、めでたい。

5月20日(土)8:30 a.m.
 スクデットを獲ったからにはもうどうでもいいと思っていたコッパイタリアであったが、勝ってみるとやはり嬉しい。インテル×ラツィオ(コッパイタリア決勝第2戦)は0-0、agg.1-2でラツィオが2冠を達成したのであった。ユナイテッドに勝ったスーパーカップを含めりゃ3冠である。わはは。リーグ優勝から1週間もたっていないわけだが、ラツィオの面々は意外と真面目にやっていた。ただし髪の毛以外は。最初は、なんで最終ラインにラバネッリがいるんだろうと思ったのだが、それは髪の毛を真っ白(銀?)に染めたパンカロであった。ヒゲも真っ白で、おじいさんのようだった。でも試合後にシャツを脱いだら胸毛だけが真っ黒で不気味だった。そっちも染めとけよ。パンカロだけではない。ファバッリもおじいさん状態。愚妻に言わせれば「玉手箱あけた浦島太郎みたい」である。ヴェーロンは金髪、金ヒゲ。ヴェーロンの「髪の毛」を染めるのは簡単じゃないと思うが、その頭は実に神秘的な黄金の輝きをうっすらと放っていた。サラスはまだら系の金髪で、バティストゥータの腐った奴、みたいになっていた。腐れバティ。しかし愚妻は「えー、バティのほうが汚いじゃん」とのこと。そうかなぁ。さらに圧巻はバロッタである。何をトチ狂ったのか、少ない髪の毛を真っ青に染めていた。アズーリ禿げ。こんな浮かれポンチな奴らから1点も取れなかったんだから、インテルもさぞ悔しかろうなー。スクデットとコッパの2冠は、これまでたった3チームしか達成していないらしい。100周年のシーズンとしては、文句ナシの結果だったといえよう。

 それにしても、セリエはラツィオ、リーガはどうやらラ・コルーニャ、ブンデスリーガはきっとレバークーゼン、ポルトガルリーグはスポルティング・リスボン、UEFAカップはガラタサライ、CLはひょっとしたらバレンシアと、欧州はかなり荒れ気味のシーズンだった。そんな戦国時代だからこそ、ラツィオの2冠にはほんとうに価値がある、と思う。

5月19日(金)
 Y・Nさんより投稿(No.098)をいただきました。どうも、ありがとうございます。俺もMVPはネドベドだと思います。次点は安定感のパンカロと勝負強さのシメオネってとこでしょうか。もちろんヴェーロンもすばらしかったし、彼なしで優勝はあり得なかったとは思うのですが、やはり調子の波が大きすぎた感じ。まあ、でも、ここはやっぱり「チーム全員がMVPです」とツマラナイまとめ方をあえてしておきたい気分でもありますな。ただ、スタンコビッチとコンセイソンには、もう一皮剥けてほしかった。2人とも、スクデットの自信を胸にEURO2000でブレイクしてくれることを期待したいところです。

 ラツィオが強くないとは聞き捨てならないお言葉ですが(笑)、ま、おっしゃるとおりでしょう。シーズン中にもユーベとしばしば比較して書いたとおり、なんとも散漫でアバウトなチームだったと思います。常に手探り。得点はセットプレイ頼み。流れの中で決めるときも、たいがいゴール前のどさくさ紛れ。そもそもサッカーの得点なんて大半がそんなもんだとは思うけれど、ファンとしてはもっと「盤石の強さ」を見せてほしいと歯ぎしりしながらの34試合ではありました。しかしまあ、あれだけメンバーがこちょこちょ入れ替わっても何となく結果を出してきたんだから、強いといえば強い。確認はしてないけど、印象としては2試合続けて同じスタメンだったこともないような気がします。優勝した今でも、どれがベストメンバーなんだかわからない。過去の歴史はよく知りませんが、たぶん、これだけレギュラーを固定せずに戦ってスクデットを獲ったケースも珍しいんじゃないでしょうか。勝因は、(選手の給料の高さを含む)物量と、監督の人心掌握、そして昨季の経験。これに尽きます。でも、チームとしての志は決して低くなかったと思いたい。たとえば4-1で大敗した前半戦のローマダービー、あれは志の高いチームだからこその負け方ではなかったでしょうか。一応アウエーで、しかもいちばん「負けたくない」という気持ちの強いダービーマッチでありながら、あの最終ラインの高さは異常ともいえるものでした。もっとも、2点取られても反省しないところがアホといえばアホですが……。ともあれ、できることなら来季は補強をほどほどにしてFW以外はあまりメンバーをいじらず、CLで完成度の高いサッカーを披露してもらいたいものです。

 昨夜は、ガラタサライ×アーセナル(UEFAカップ決勝)をビデオ観戦。けっこう激しい攻め合いで、どちらもゴール前までは見事な攻撃を見せるのだが、最後のクロスやシュートが精度を欠いてゴールが奪えず、0-0でPK戦に突入。これを4-1で制したガラタサライの優勝である。ダメだよ、スーケルなんか一番手にしちゃ。彼、プレミアでもひどいPK蹴ってたじゃん。途中、睡魔に襲われて気絶していたのでちゃんと見ていなかったのだが、ガラタサライは強かった。一斉に敵陣深くまで押し寄せる怒濤のラッシュを見ながら、昔のトルコ軍は強かったんだろうなー、などと思ったりした。アーセナルのほうは、大事なところでアンリの決定力不足が露呈したのが痛かった。オランダ・ファンとしては、オフェルマルスの復調ぶりが救いだったけど。速い速い。EUROでもがんばってもらいたい。バルサ組やユーベ組は意気消沈でアテにならないかもしれんから。

5月18日(木)8:40 a.m.
 元首相がお亡くなりになろうが、間抜けな総理が問題発言をかまそうが、17歳の凶悪事件が続発しようが、今週はラツィオのことばかり考えている。昨夜はペルージャ×ユーベ戦の再放送を見ながら、喜びを新たにした。前半はライブで見てなかったけど、ユーベ、緊張しまくってたっすねぇ。相手がどこだろうと、勝利を義務づけられたアウエー戦がいかに厳しいかということを再認識。雨が激しくなりだしたのは、30分頃だった。ラツィオがPKで先制したのは、その3分後である。ユーベにとっては、泣きっ面に蜂であった。それにしてもペルージャの集中力ときたら。よっぽど合宿がイヤだったんだねぇ。

 ところでユーベ×パルマ戦の誤審だが、どうやらパルマにCKを与えたこと自体がそもそもの発端であるらしい。ゴールキックを主張するユーベが抗議をし、ミスだという自覚のあったデ・サンティスが帳尻を合わせるために笛を吹いた、という見方があるようだ。CKの判定が正しかったのかどうかわからないけれど、なるほど、ありそうな話である。ま、いまとなってはどうでもいい話ではあるが。……いや、CL出場権がプレーオフに持ち込まれてしまったパルマにとっては大問題だわな。一発勝負のインテル×パルマは中継があるんだろうか。勝ったほうに移籍しようと思ってる選手も少なくなさそうな気がする。ルイ・コスタと中田の行き先も、このゲームの結果次第か。バティもインテルが負けたらよそに行こうと思ってんじゃないかね。

 そのインテルは、バティストゥータ獲得ならビエリ放出の方針だとか。そのビエリはラツィオが復帰させるという噂もある。そんでもってサラスはインテルが獲得に動き、さらにラツィオはリバウド獲得に本腰。しかしファン・ハール解任ならリバウドはバルサ残留という説も。うーむ。リバウドはバルサにおってくれたほうがええわ。ラツィオに来ても、強くなりそうな気があんまりしない。そんなことより、ラツィオは守備陣の強化が先ではないのか。どすこい系のセンターバックが1枚ほしい。あと、がちゃがちゃ選手が入れ替わるのはしょうがないけど、せめてシメオネとネドベドはチームに残してもらいたいなぁ。ラバネッリはいらない。誰か引き取ってくれ。

5月17日(水)10:20 a.m.
 一昨日から、ラツィオのことばかり考えている。今季のネドベドはほんとうに偉かった。ガゼッタだか何だかの年間平均採点でMF部門の1位になったそうだが、まったくもって正しい評価である。人数ばかりのFW陣がどいつもこいつもろくな仕事をしていないのに優勝できたのは、彼のお陰だと思う。ひたすらゴールに向かうネドベドのプレイは、貴重なFKやPKを数多くチームにもたらした。最終節、乱入した観客がスタンドに戻ったとき、彼はひとりピッチの真ん中に座り込んで、誰かがプレゼントした雑誌を読んでいた。ロッカールームに引き上げずグラウンドに残った姿に、「俺はここで最後まで戦い抜きたいんだ」という強い気持ちを感じた。フェルナンド・コウトも偉かった。ネスタとミハイロビッチがしばしば戦列を離れる中で、彼はその代役を十二分に果たした。バティの同点FKをもたらした余計なファウルはいただけなかったし、不安定なところも少なくなかったけれど、彼が出ているときのほうがむしろ馬鹿げた失点が少なかったような印象がある。バロッタも偉かった。ローマ戦の途中にマルケジャーニが負傷してから、彼はチームの正念場で見事なゴールキーピングを見せた。ユーベ戦の終盤にデルピエーロが放ったFKは、もしかするとマルケジャーニには止められなかったかもしれない。エリクソンという監督の真骨頂は、コウトやバロッタのような控え選手のモチベーションを巧みにコントロールしたところにあるんだろうと思う。

5月16日(火)8:10 a.m.
 昨日から、ラツィオのことばかり考えている。パルマ戦でアルメイダが決めた漫画のようなボレーシュート。あれがなかったら優勝はなかった。インテルとの2試合でパンカロが決めた2つの同点ゴール。あれがなかったら優勝はなかった。ローマ戦でヴェーロンが決めたフリーキック。あれがなかったら優勝はなかった。そしてユベントス戦でシメオネが決めた決勝ゴール。あれがなかったら優勝はなかった。4-4のドローで終わってしまったミラン戦とか、バティにしてやられたフィオレンティーナ戦とか、あそこで勝ってたらもっと楽に優勝できたのに、という試合も多々あるけれど、勝ってしまえばどれもいい思い出である。ユーベとの差が9ポイントまで広がったのは、26節のベローナ戦だった。あんときゃ、ほんとにガッカリした。残り8試合で9ポイント差をひっくり返せるわけがないと思った。ところがそれ以降、ローマに勝ち、ユーベを叩き、フィオと引き分けた以外は全勝である。一方ユーベは、インテル、フィオ、パルマという難敵を下しながらベローナとペルージャに不覚をとるという予想外の展開。わからんもんだ。去年の悔しさを経験として生かしてくれたことが、何より嬉しい。最後までチームのモチベーションを維持したエリクソンの手腕も見事としかいいようがない。ユーベに弱点があったとすれば、アンチェロッティの若さと経験の浅さかもしれない。そういう監督の力量は試合を見ていてもわからないけれど、きっとチームの成績を大きく左右するんだろうと思う。

 結局のところ、ラツィオの勝因は選手層の厚さであろう。この過密日程を戦うには、チームの完成度を犠牲にしても、物量を充実させる必要があったということだ。そういう意味で、カネにモノを言わせたクラニョッティの補強は、戦略として正解だったことになる。もちろん、それがサッカーにとって正義だとは思いにくいところもあるけれど、それを批判するならその前にUEFAのやり方を批判しなきゃいけない。それに、単にカネを出せば優勝が買えるというわけじゃないことは、インテルを見ても明らかだろう。カネでかき集めた選手たちのモチベーションをコントロールしながら使いこなす監督の手腕が不可欠なのだ。今季のラツィオは、ユーベに勝ったというよりも、日程に勝ったんだと思う。フロントと監督が、日程との戦い方を心得ていたからこそ、スクデットを獲ることができた。CLは残念な結果に終わったが、たぶんエリクソンははじめから二兎を追っていたのではなく、アブかハチのどちらかを捕まえるにはどうしたらいいか、ということを考えていたに違いない。こんなに高度な判断力を求められるテーマもないと思うが、エリクソンはそれをやってのけた。来季、拡大版CLにはじめてチャレンジするユベントスも、そのへんをどう考えるかがポイントになることだろう。そして、こんどはCL一本に絞って戦えるエリクソンが、どんな采配を見せるかが楽しみである。

5月15日(月)11:10 a.m.
 やけに穏やかで、神妙な気分である。
 神様はいた。念力も通じた。レナト・クーリに、豪雨と雷鳴が襲いかかった。ロスタイムの同点ゴールは必要なかった。後半早々に奪った1点を守りきったペルージャが、ユベントスを下した。天が初めて、ズベン・ゴラン・エリクソンに味方した。21勝9分4敗。72の勝ち点を積み重ねたラツィオが、100年間の歴史の中で2度目のスクデットを手にした。その勝利に立ち会えた自分に、そして彼らの勝利を心から喜べる自分に、僕はとても満足している。

 混乱に満ちた最終節だった。
 オリンピコとレナト・クーリの決戦は、同時刻にキックオフ。90分後にすべての答えが出てしまうことが、ひどく残酷なことのように思えた。あと90分でこの起伏に富んだシーズンが終わってしまうことが、僕にはピンとこなかった。

 勝利以外に目指すもののないラツィオは、前節でセリエA残留を決めて目標を失ったレッジーナを相手に、いや、遠く離れた地で自力優勝を決めようと最高のモチベーションで戦っているはずのユベントスを相手に、序盤からきわめて美しい攻撃的なサッカーを展開した。永遠の未完成。それがラツィオというチームだと思ったこともある。しかしシーズン最後のゲームにいたって、ついにエリクソンのチームは完成したかのように見えた。

 神様が最初に微笑んだのは、キックオフから33分後のことだった。これがオリンピコでのラストゲームとなるマンチーニが左サイドから上げたセンタリングを、シモーネ・インザーギがヘディングで落とす。このボールが、レッジーナDFの右手に当たった。PK。実の兄との勝負をも戦っているストライカーは、持ち前の図太さを発揮して、これをゴール中央にゆったりと決めてみせた。さらにその4分後、再び神様が微笑む。ペナルティエリアの右サイドで中に切れ込もうとしたパンカロが足をかけられてピッチに這いつくばった。2つめのPKを、ヴェーロンが決める。2-0。この時点で、ラツィオが優勝に不可欠な3つの勝ち点を得ることは約束された。奇跡を起こすために最低限必要な条件が、とりあえずは整った。

 一方のユベントスは、空と戦っていた。強い雨。ときおり光る稲妻。ピッチは水たまりと化し、彼らから精密なパスワークを奪っていた。前半は0-0。ハーフタイムが終わり、快晴のオリンピコでは、ラツィオの面々が最後の45分を戦い抜こうとピッチに散らばった。しかしレナト・クーリのピッチに選手たちは現れず、主審のコッリーナがキックオフを見合わせている。公平を期すために同時刻のキックオフが原則となっているため、オリンピコのほうも試合を始めることができない。間抜けな時間が空しく流れていった。しばらく自分のポジションに立って笛を待っていたラツィオの選手たちは、やがて苦笑しながらボール回しを始めた。もし前半で試合が決まっていなかったら、この待ち時間のあいだに、彼らの精神は緊張感に絶えきれずボロボロになっていたかもしれない。でも彼らには、2点のリードという絶大な余裕が与えられていた。

 レナト・クーリの雷雨はやもうとしなかった。コッリーナがオリーベとコンテの両キャプテンを連れてピッチの上を歩き回り、ボールの弾み具合や転がり方をたしかめている。試合の延期も十分にあり得るようなムードだった。リーグ上層部の判断で、オリンピコのゲームが先にスタート。63分、ラツィオの勝利を盤石にするゴールが決まる。ヴェーロンのFKが、シメオネの頭を軽くかすめてからネットを揺すった。シメオネは4試合連続のゴールである。無類の勝負強さを持つこのアルゼンチン人がいなかったら、ラツィオはとっくにシーズンを投了していたことだろう。今季からチームに加入した3人のゴールで、試合は3-0となった。

 本来なら、あとは固唾を呑んでレナト・クーリの成り行きを見守るだけである。しかし、敵はまだドレッシングルームで待機していた。そのまま試合が延期になることを願っていた者もいたに違いない。やりたくない−−勝負には禁物の、そんな気持ちが彼らの胸に少しもなかったといったら嘘になるだろう。

 オリンピコは、これが優勝を左右するゲームだということが信じられないぐらい、和やかな空気に包まれていた。交替を告げられたマンチーニがピッチを去ると、さながら引退記念試合のようなムードにさえなった。満場のスタンディング・オベーション。ベンチのロンバルドが、マンチーニをおんぶして場内を1周する。スタンドの誰ひとりとして、試合に目を向けていなかった。ピッチ上では淡々とボールが動かされ、選手たちはのんびりと時が過ぎるのを待っていた。

 ところが、あとわずかでタイムアップになるはずだった87分に、時計はピタリと止まった。夥しいファンがスタンドを降りてピッチに乱入してきたのだ。何が起きたのかわからなかった。いや、何が起きているのかはわかるが、その意味がわからなかった。ユニフォームを脱がされたヴェーロンが、黒いビキニ・パンツ一枚になっている。ものすごく美しい肉体だった。求められるまま平然とユニフォームを脱いで渡しているヴェーロンの態度は実に奇異なものに見えたが、おそらくアルゼンチンでは日常茶飯事だったのだろう。明らかに場慣れしている。センシーニもシメオネも、「しょうがない」という落ち着いた表情で、上半身裸のままピッチから立ち去った。どうやら暴徒たちは、愛する選手たちのユニフォームが欲しかったらしい。でも、なぜそれを試合中に脱がさなければいけないのか、まったく理解できなかった。没収試合、という言葉が脳裡を過ぎる。しかし、リーダー格のサポーターが怒気をはらんだ様子で戻るよう指示すると、彼らはおとなしくスタンドへ帰っていった。ロッカールームから、選手たちが戻ってくる。何事もなかったかのように、ラツィオのスローインで試合が再開した。そして5分後、主審の笛が長く3度鳴り、ラツィオの99-00シーズンは「この時点では1位」というひどく中途半端な形で幕を閉じた。

 その少し前から、レナト・クーリのゲームも再開していた。長く長く待たされたキックオフから5分後、ペルージャがユーベ陣内に攻め込む。コンテが頭でクリアしたボールは、中央で待っていたカローリの足元に転がった。ディフェンダーを一人かわしてから真っ直ぐに蹴られたボールは、ゴール左隅に吸い込まれていった。神様の存在を信ずるに足るゴールだった。

 ペルージャの選手たちは、最高に集中しているように見えた。圧倒的にボールを支配するユベントスの攻撃を、慎重に、確実に、そして勇敢に弾き返している。かつて同じグラウンドで、ベネチアを相手に同じような雨中戦を演じたことのある彼らは、そこでの戦い方に自信を持っているように見えた。

 ユベントスはもがいていた。ひたすら、もがいていた。逃げる立場で始めたはずの試合が、いつの間にか追う立場になっていた。この1週間、彼らがどんな気持ちで過ごしていたのか、僕にはわからない。でも、ただ一心に次の試合に向けて集中力を高めていけるような状況でなかったことは間違いないだろう。ユベントスに2つの勝ち点をプレゼントしたジャッジは、皮肉なことにそのユベントスを精神的に追い詰める結果になったのではないだろうか。

 そして神様が怒り狂ったかのような悪天候が、それに追い打ちをかけていた。味方に届くはずのボールは途中で勢いを失って敵にカットされ、止まると思ってスペースに出したボールは転がってタッチラインを割った。フリーキックはカベを越えず、シュートはクロスバーを越えた。さらに、失われたリズムを取り戻すために投入されたザンブロッタが、ほどなくバックチャージでレッドカードを喰らう。いつもは恐ろしい強さを発揮する10人ユーベも、この悪条件では無力だった。ユベントスのファンや関係者にとっては、呪われているとしか思えなかったことだろう。

 ロスタイムに入ると、こちらもオリンピコと同様、観客がフェンスを越えて入ってきた。再び、没収試合という言葉が脳裡を過ぎる。しかし警備隊が何とか水際でそれを食い止め、ライン際ギリギリのところで観客が見守っているという異常な環境の中で試合は続行された。いつコッリーナの笛が鳴ったのかわからない。コーナーフラッグの下でボールをキープしていたマテラッツィが、ボールを拾い上げてピッチから走り去った。一瞬にして、ピッチはサポーターで埋め尽くされた。試合が終わっていた。

 カメラをオリンピコに切り替えてほしかった。悲願を達成したエリクソンの表情を見たかった。抱き合ってはしゃいでいるはずの選手たちを見たかった。しかしカメラは東京のスタジオを映し出し、さっきまでオリンピコを映していたチャンネルはプレミアリーグの最終節を放送していた。残念だが、しょうがない。僕は冷蔵庫からビールを取り出し、妻と乾杯をした。サッカーの神様に、最後まで堂々とファイトしたペルージャの選手たちに、そして、過酷なスケジュールを自分たちの強さを信じることで克服しながら戦い抜いたラツィオの選手たちに感謝の念を捧げながら、カラカラに渇いた喉にビールを流し込んだ。すばらしいシーズンだった。

5月14日(日)13:10 a.m.
 やっと確定申告書を作成。いまごろ何やってんだか。さすがに反省した。誰も見てないと思うけど、ごめんなさいね荻窪税務署。それはともかく、一昨年と去年では年収にクルマ1台分ぐらい差があったことを知って、我ながらあきれた。ま、クルマにもいろいろあるし、一昨年の年収を全部つぎ込んでも買えないクルマもあるわけだが。もし誰かの保証人か何かになって、「年収は?」なんて訊かれたら、いつの年収を答えればいいんだろうか。しかしまあ、その日暮らしの人間にとっては、1月から12月の1年単位で収入を測ること自体、とくに合理的な根拠や意味があるわけじゃないんである。それにしても、確定申告ってのは、自分がいま背負っているものを見せつけられるような気がして嫌いだ。家賃だ保険料だ光熱費だ何だかんだと、普段あえて目を向けようとしない「数字」を突きつけられると、その重さに溜め息が出る。そりゃぁ貯金なんてできないわけだよなー、と妙に納得。よく生きていられるもんだ。

 結果はとっくに知っていたが、ラ・コルーニャ×サラゴサ(リーガ第36節)を観戦。デポルが1-1に追いつき、さらにジャウミーニャのゴールで2-1と勝ち越したのだが、そのジャウミーニャがはしゃぎすぎてユニフォームを脱ぎ、2枚目のイエローをもらって退場。アホや。あいつはアホや。人数が減ったお陰で追いつかれてしまい、2-2のドローである。優勝経験のなさってのは、ああいうところに出ちゃうんだろうなぁ。ユニフォーム脱ぐなよ。

 どうやらマルセイユは、すんでのところで降格を免れたらしい。16位のナンシーと勝ち点で並び、得失点差も同じ。辛うじて総得点でわずかに1上回ったんだとか。まさに薄氷、スレスレの残留である。しかも最終節は1-2でリードしながら90分(たぶんロスタイム)に追いつかれている。ナンシーのほうは2-0で勝ったようだから、サポーターは心臓止まるかと思っただろうね。いやはや。

 さて、今夜はセリエ最終節である。ほんとは並んでるのに、とはもう言うまい。今夜だけは、神様の存在を信じることにしよう。サッカーのリーグ戦は、強い者が優勝するように出来ているはずだ。さらに、念力だって信じちゃうことにする。さあ、あなたも一緒に念じてください。……頑張れペルージャ負けるなペルージャそれ行けペルージャ頑張れペルージャ負けるなペルージャそれ行けペルージャ頑張れペルージャ負けるなペルージャそれ行けペルージャ頑張れペルージャ負けるなペルージャそれ行けペルージャ頑張れペルージャ負けるなペルージャそれ行けペルージャ頑張れペルージャ負けるなペルージャそれ行けペルージャ頑張れペルージャ負けるなペルージャそれ行けペルージャ頑張れペルージャ負けるなペ……おお、ロスタイムに奇跡の同点ゴールを決めるオリーベの姿が見えてきたぞ。

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