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江戸川駄筆のサッカー日誌
2000-2001/第10節

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10月31日(火)16:25 p.m.
BGM/YES "Close To The Edge"

 夏以来俺を苦しめてきたキカイ類への呪いは、まだ解けていなかった。ISDNのターミナルアダプタが壊れたのである。それは、POWERランプの点滅から始まった。ACTランプはしばしば点滅して、電源を入れ直せばすぐに直るのだが、POWERランプの点滅は初体験だった。電源を入れ直しても、点滅は止まらない。さて、どうしたものか。このままでは、電話もファックスも不通である。TAの取説を探した。ない。いつも思うのだが、俺という人間は危機管理がなっていないのである。やっとのことで取説を発見して繙いた。いつも思うのだが、マニュアルの「故障と思う前に」や「こんなときは」には自分のケースにぴったり当てはまる症例がぜったいに載っていない。似たような症例を見つけて背面のスイッチをいじってみたのだが、どうにもならなかった。そのうち、POWERランプの点滅がピコンピコンと速くなってくる。おまえはカラータイマーか。がんばれウルトラマンTA、負けるなウルトラマンTA。シュワッチ。やがて、デスク周辺が妙に焦げ臭くなってきたと思ったら、「プチッ」という音を発してランプが消えた。先日、セガレのためにウルトラマンのビデオを借りてきたのだが、TAの死に様はゼットンに敗れたウルトラマンの末期にそっくりだった。ウルトラマンって、カラータイマーが消えただけで見事に「死んだ」ように見えるから不思議だ。しかしTAの最期には、ウルトラマンと違うところもあった。その死体からは、かすかに白い煙が立ち昇っていたのである。あなた、キカイが煙を吐いてぶっ壊れるのを見たことがありますか。ロシアのテレビじゃあるまいし。20世紀末のニッポンで、情報機器がこんな壊れ方していいのかよ、おい。修理、という言葉はまったく思い浮かばなかった。俺はとぼとぼと吉祥寺のラオックスへ歩いて行き、新しいTAを買ってきた。最新のMacに買い換えると接続できないと言われて少し迷ったが、そんときゃそんときだ、と踏ん切りをつけた。面倒な世の中である。パソコンと決別する日もそう遠くないような気さえした。

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 ゆうべ、改めてビデオで「柳沢の8分間」を見た。ははあ、あの川口の「右手一本」はウナギのパスミスから始まっていたのか。あれ入っとったら、いまごろ袋叩きである。トルシエは「キープできる選手を入れなかった自分のミステーク」とコメントしたらしい。負けても同じことが言えただろうか。誰か、「ヤナギの480秒」というタイトルで迫真のノンフィクションを書いてくんないかなー。ところで、「キープできない」と「優れたポストプレイヤー」って矛盾しないんですか。

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 今頃こんなところで自国の首相を批判するのも野暮なのであるが、その退陣を要求する声がスポーツ界から上がらないことが俺には不思議に思える。日韓首脳会談の際、あの総理大臣は韓国の大統領に対して、「五輪の野球で韓国に負けてよかった」と口走ったという。さらに来日したラグビー豪州代表に対しては、「私は実物を持たせてもらったことがあるが、日本のフィフティーンは未来永劫、W杯を抱くことができない」とのたまったらしい。「謙虚」と「卑屈」の区別がつかない、外を向くと内が見えない(内を向くと外が見えない)という、実にあの人らしい愚鈍さなわけだが、この二つは、「神の国」や「第三国」に勝るとも劣らない失言、いや大暴言だと俺は思う。いったい、この人は、人間の「努力」を何だと思っているのだ。努力の価値というものを人々に知らしめることがスポーツが持つ存在意義の一つだとすれば、これほど国民から生きる上でのモチベーションを奪う発言もない。韓国大統領に対して、「わが国は半分アマチュアにしてはよくやったと思う」というぐらいの負け惜しみがなぜ言えぬ。豪州のラガーメンに対して、「わが国もいつか諸君と互角に戦える日が来るであろう」ぐらいの虚勢がなぜ張れぬ。まさかとは思うが、万が一、2002年の6月にこの人がこの国の首相の座にとどまっていたら、それだけでW杯日韓大会は「失敗」だと言っていいぐらいだ。努力の意味や価値や美しさや切なさを理解しない人間が首相を務めるような国で、W杯を開催してはいけない。森喜朗こそは、おそらく日本史上最大の「スポーツの敵」である。スポーツの敵は、民衆の敵に他ならない。そして人生の敵に他ならない。その意味で、高橋尚子も田村亮子も、このような首相から表彰を受けるべきではなかった。断固として拒絶すべきだった。蒙昧な首相の歪んだスポーツ観に対して激しく抗議の意思を示すべきだった。もしかすると日本のスポーツ界は、自らの持つ潜在的な社会的パワー(世の中への影響力)を自覚して「オトナ」になる千載一遇のチャンスを、一つ逃したのではなかろうか。



10月30日(月)16:30 p.m.
BGM/Chick Corea "The Mad Hatter"

 人格が壊れれば壊れるほど調子が良くなる男、その名は川口能活。日本×サウジアラビア(アジア杯決勝)は、まぎれもなく彼の試合であった。いやはや、「もうダメかも」なんて書いちゃって、すまんすまん。それにしても、おかしな男である。サウジのシュートがゴールを襲うたびに、彼の目には異様な光が宿り、挙動不審になっていくのであった。FKを待ちかまえるときなんか、適当な比喩が思いつかないぐらい挙動が怪しかったぞ。大会初の完封で優勝を決めてピッチに倒れ込んだときは、「やったー、目立ったぁぁぁ!」と叫んでいるようにも見えた。そんな川口に、明日はあるのか。1点差を守るときのリリーフGKという地位を確立できれば、たぶん世界初だとは思うが。後半25分、ベンチ裏で柱にがつがつ頭をぶつけながら一人テンションを高めている川口。鬼気迫るものがある。怖い。

 そして決勝戦におけるもう一人の主役は、言うまでもなくウナギ沢なのであった。途中から入って、8分でアウト。ウルトラマンよりは長持ちしたとはいえ、たった8分で「ダメ」を出されるようにプレイするのも容易じゃないと思う。気合い十分で「のど自慢」に出たのに、1小節歌っただけでカネ一つ鳴らされてしまった化粧の派手な田舎OLと同じぐらいかっこわるい。そんなの見たことないけど。表彰式後の乱痴気騒ぎのとき、彼はどこで何をしていたのだろうか。胴上げの最中にトルシエのお尻でもつねっていたのか。あそこまで自己愛を傷つけられた人間が、今後どうなっていくのかが興味深いところだ。

 ともあれニッポン、優勝である。順調すぎて恐ろしいほどトルシエの目論見どおりに事が運んでいるように見える。どうしてこんなに強くなったのか、誰か合理的に説明してくれ。そして中田の居場所はあるのか。ベンチスタートか。中田がスーパーサブ。夢のような話である。


似てる人シリーズ

#125 サウジのジャバーと田中邦衛。



10月27日(金)14:45 p.m.
BGM/Gipsy Kings "Greatest Hits"

 ぶらりと立ち寄った書店の心理学コーナーで、凄い書名に出会った。著者はホルスト・ガイヤーというドイツ人。版元は創元社。そしてタイトルは、『馬鹿について』だ。なんなんだ、この有無を言わせぬ力強さは。サブタイトルは「人間−−この愚かなるもの」、さらに(帯ではなく)表紙には「何故頭が悪くなるか、知恵が廻らぬとどうなるかというエッセイ」という一文と、各セクションの章タイトルが記されている。

第1部 知能が低すぎる馬鹿
第2部 知能が正常な馬鹿
第3部 知能が高すぎる馬鹿

 うーむ。見事じゃ。馬鹿について語る本の構成としては、ほぼパーフェクトである。深いといえば深いし、浅いといえば浅いのだが。この表紙を見ただけで、中身も値段もたしかめずにレジへ直行した俺であった。だって、馬鹿について、だもん。買わずにいられるかってんだ。奥付を見ると、初版は1958年12月。今年の3月に26刷が発行されている。ほほう。知ってる人は知ってる有名なロングセラーなのかも。「初版の序より」と題された文章の書き出しが、いい。
<馬鹿のことを書くよりも、天才のことを書く方が、よほど割りのいい仕事にちがいない。>
 ……唸らざるを得ないではないか。それでも馬鹿を語ろうという、この覚悟、この健気さ。そして我々は、いきなり身も蓋もなく「馬鹿」と「天才」を対立概念として併記してしまう、著者のアカツカフジオ的な思い切りのよさと世界観の強靱さに、魂を揺さぶられる思いさえするのであった。もしかすると、この一行だけ読んで「つんどく」にしたほうがいいのかもしれない、という気もするけれど。

*

 サウジアラビア×韓国(アジア杯準決勝)は、後半の後半だけ見れば十分、という大凡戦。笑っちゃうほどプラン通りにゲームを進めたサウジが2-1で勝った。グループリーグでダメダメ感を漂わせていた両国がベスト4で激突してしまうというのがアジア杯のお寒い現実なわけだが、次回は出場枠が16に増えるらしい。増やすなよ。12チーム3グループでもずいぶん間延びした印象だったのに、これ以上期間を長くしてどうする。無料開放しても客が入らないってのに。飽きるじゃないか。

 日本×中国(アジア杯準決勝)は、中国のがんばりと日本の悪コンディションのお陰で、見応えあるシーソーゲームに。やっと少しは精神力が試される展開となったが、あっさり逆転してみせたのは大したものである。3-2というスコア以上に余裕があったように見えた。「ま、相手より1点多く取りゃいいんでしょ」みたいな。むろん、見てるほうの気持ち次第で、そんな印象はどうにでも変わるわけだが。でも、川口はもうダメかも。あんだけ調子の善し悪しが素人目にもはっきりわかるGKって、世界を見渡してもそうはいないと思う。あと、中村の左サイドはどうなんですか。いや、別に守備に追われるのはサッカーなんだから当たり前だと思うんだけど、あれじゃ左足が勿体なさすぎじゃあないか。左手用のグローブを右手にはめて野球やってるようなぎこちなさである(那覇高校の捕手や三塁手を思い出したりもした)。左足、セットプレイのときしか使ってないぞ。どうせタテに勝負しないで中に入ってくるんだったら、右サイドに置いちゃいけないんだろうか。まあ、名波がいるからああいうプレイになるのかもしれんけど。

 ところで、日本に負けたイラクの選手たちは、帰国後1週間の禁固刑に処せられるんだとか。気の毒な話である。もっとも、勝てば法外なご褒美がもらえるのかもしれないが。ちなみに監督はまっすぐ母国ユーゴに帰ったらしい。やはり「モダンなサッカー」をやる機会は与えられそうもない。そんなことじゃ、誰も監督を引き受けなくなるんじゃないだろうか。



10月26日(木)15:15 p.m.
BGM/Kazumi Watanabe "KYLYN LIVE"

 どうやらCLのドネツク戦でクラウディオ・ロペスがハットトリックをぶちかましたらしい。何より何より。そのラツィオ、またぞろオフェルマルスに触手を伸ばしているようである。ゼンデン獲得の話はどうなったんだろうか。とにかく、来てくれるならどっちでもいいや。一方ローマは、中田とバンペッタ(インテル)、中田とアルメイダ(パルマ)などの花いちもんめ話が浮上しているとか。南米屈指のスター・ボランチと同列に語られているってのが、なんともかっこいいやね。

*

 サウサンプトン×マンチェスター・シティ(プレミア第10節)を観戦。もともと地味なカードであるが、ジョージ・ウェアがマルセイユに去ってしまったお陰で、ますます地味になってしまった。イモ臭い蹴り合いは、0-2でシティの勝ち。このへんのクラスと今の日本代表が試合したらどっちが強いんだろうか、などと考える。アジアで図抜けてしまった以上、そういう新たな比較対象が欲しい。……なーんて、そーゆーことは中国に勝ってから言えってか。ところでトルシエ、また協会とモメているらしい。どうも五輪に関するレポートを技術委員会がトルシエに見せようとしないとかそういう話らしいが、落ち着かない奴らじゃのう。中学校の内申書じゃないんだから、隠すなよそんなもん。



10月25日(水)14:25 p.m.
BGM/incognito "100 and rising"

 運動不足解消のため、井の頭公園を散策することが多い。公園にはいろいろな人がいる。三味線にアンプやらナンヤラを接続して、池を見つめながら一心不乱にかき鳴らしている若者なんかに遭遇したら、いろいろな人がいる、という感想を持つしかないじゃないか。このあいだは、一人でボートを漕いでいるハタチ前後の女性がいた。別に女性が一人でボートに乗って悪いということはないのだけれど、やっぱり気になる。しかもオールの扱いが妙に上手で、器用にボートをコントロールして移動しては、仰向けになって空を眺めているのである。公園に来てボートを見たら、無性に漕ぎたくなったんだろうか。それとも最初から「さて、ボートでも漕ぎに行くか」と決めて公園に来たのだろうか。何かイヤなことでもあったのかなぁ(という想像も紋切り型にすぎるけれど)。しかし、イヤなことがあったにしては、ボートの上で化粧なんか直しているのが解せない。そこでナンパされるのを待ってるのか? 平日の昼下がりに、一人でボートを漕ぎながら化粧をする若い女。電車内で化粧する脳より、ボート上で化粧する脳のほうが、よっぽど不可解である。などと思いつつ眺めていると、そのボートの横を別のボートが全速力で通り過ぎて行った。見ると、そのボートも若い女性が一人で漕いでいるのであった。それはつまり、流行っているのか?

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 日本×イラク(アジア杯準々決勝)を観戦。どうもイランとイラクの区別がついていない(あるいは同じ国だと思っている)らしい森岡のクリアミスから先制点を許し、どうなることかと思ったが、心配はご無用である。セットプレイから中村&名波の精密な左足2本で同点、森島&高原のブラジリアン・テイストなコンビネーションで逆転、終わってみれば4-1の楽勝であった。強いなぁ。このチーム、いつのまにここまで仕上がっていたんだろう。それとも、まだ仕上がってないのに、こんなに強いのか? ともあれ、これで日・韓・中の東アジア勢がベスト4進出。アジアの気圧配置は東高西低(東南最低)なのであった。中東勢の没落ぶりは目を覆いたくなるほどである。

 今朝、録画しておいたサウジアラビア×クウェート(アジア杯準々決勝)を途中から見ていたら、後半終了間際、2-2の同点からサウジのFK、という緊迫した場面で画面がデッレ・アルピに切り替わってしまった。3時40分からCLを予約しておいたためである。あらら。どちらも生中継ではやむを得ないとはいえ、少しはサッカーファンの観戦スタイルを考えて編成してほしい。



10月24日(火)14:30 p.m.
BGM/Brahms "Ballades & Rhapsodies" played by Glenn Gould

 小春日和、というコトバを使うのはこの季節でよかったんだっけ。ともかく、あったかい。いま、吉祥寺の古本屋で買ったCDを聴いている。グレン・グールドは何故いつもジャケ写で頬杖をついているのだろうか。そういえば昔、「ナルシスト系の純文学作家は著者近影で必ず頬杖をついている」と友人が指摘していた。「考える人」の影響か、それとも「考える人」が真実を穿っていたのか。あるいは、単なる自意識過剰か。

 小室直樹『日本人のための宗教原論』(徳間書店)を読了。名著。小室直樹センセーはえらい。知のエンターテイナーとしては日本随一かも。沢山ありそうな留保事項をバッサリ切り捨てて「仏教哲学はこれにつきる!」とズバリ言い放ってくれるときに生じるカタルシスは、なかなか得られるものではないと思う。しかも、行きがけの駄賃のようなさりげなさで、たとえば「兔を一羽二羽と数える理由」みたいな雑学知識も教えてくれたりするサービス精神もある。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、儒教の真髄を語った本書を読みながら、中東で行われているアジア杯を見るのは、けっこう味わい深い。

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 イラン×韓国(アジア杯準々決勝)を観戦。アッラーの思し召しによるバゲリ(変換したら「場蹴り」と出た)のスーパーゴールでイランが先制。わけあって俺的にはそのまま終わってほしかったのだが、さすがは韓国、最後の最後に「らしさ」を発揮して後半ロスタイムに同点ゴールを決めやがった。これは仏教の因果律なのか、はたまたキリスト教の予定説か。ところで韓国の宗教って何なんだろうと思い、「データ・アトラス95-96」(古いな)で調べたら、仏教徒47%、カトリック11%、プロテスタント38%ということだった。へーえ。儒教は3%だ。100人のうち3人は儒式の葬式をやってるってことか? どんな葬式なんだろう。そんなことはともかく、延長前半に李東国の決勝ゴールで韓国の勝ち。日本がイランと戦うチャンスがなくなってしまったのが、ちょっと残念である。話は逸れるが、「延長はゴールデンゴール、JリーグでいうところのVゴール方式で行われます」って物言い、いい加減、うざったいぞ。そろそろ統一してくれんか。そもそも、Jリーグでの呼称が国際語になる予定だったんじゃないのか? 意味的に考えても、「Vゴール」のほうがいいと俺は思う。ゴールデンゴールって、なんかバカっぽい。



10月23日(月)14:00 p.m.
BGM/Bartok "Music For Strings,Percussion & Celesta"

 今季はじめてまともに観戦するプロ野球が日本シリーズというのもどうかとは思うが、なりゆきで「優秀選手当てコンテスト」に参加したこともあって、第1戦と第2戦を見た。第1戦の1回裏、2塁打の仁志を清水にバントで送らせようとした(しかも失敗した)時点で、早くも「なんじゃそりゃ状態」になった俺である。送るかね。ペナントレースでも、そーゆー野球をやっておったのかこのチームは。シリーズ最初の1アウトを取られた瞬間、すでにジャイアンツは「流れ」を手放していたのかもしれない。そして槙原だ。まだ投げてたのか。自慢じゃないが、奴がマウンドに上がった時点で、俺は「あー、こりゃ、このガイジンに一発食らうぞ」と愚妻に予言していた。予言というより、これは経験則に基づく公理のようなものである。長嶋も、ろくでもない「方程式」なんかでっちあげてないで、公理を学べ公理を。第2戦も、相変わらず投手交代が後手後手。あんだけ何度も選手として出場していたにもかかわらず、長嶋って人は、川上や牧野や森や土井たちが何を考えて日本シリーズを戦っていたのか、なーんも学習していなかったんだと思う。ONがいれば9連覇できると思っているのだ、きっと。ともあれ、ダイエーの連続逆転勝利である。たった2試合だけ見てこんなこと言うのも何だが、こんなチームがどうやってセ・リーグを制したのか見当がつかない。

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 まあ、ジャイアンツのことなんかどうでもいいのである。問題はラツィオだ。ベローナ×ラツィオ(セリエA第3節)は、2-0でベローナの完勝。ひどいゲームであった。アーセナル戦の後遺症か、心身ともにコンディション最悪。モチベーション最低。シメオネとバローニオをダブルボランチに置き、左にピオホ、右にネドベド、中央にベーロン、トップにクレスポを配した4-5-1の新布陣が、まったく機能していない。こんなにコンディションの悪いときに、「新しい試み」なんかやってる場合なんだろうか。しかしシステム云々よりも、負けたのは端的に言ってミハイロのせいである。イライラしてるからムードが悪くなる(奴の気持ちをなだめることがネスタやファバッリの仕事になって負担が増えている)、集中してないからプレイスキックの精度が悪い、脚力が衰えているから簡単に抜かれる、簡単に抜かれるから余計にイライラする。挙げ句の果てに、PKまで失敗しやがった。槙原がホームランを打たれるのと同じぐらいの確率で失敗すると思ったよ俺は。少し休ませたほうがいい。たしかに彼のFKは魅力的だけど、これだけのデメリットに目をつぶってそれに頼らなきゃいけないほど得点力の低いチームじゃなかろうに。

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 バルセロナ×レアル・マドリー(リーガ第6節)は2-0でバルサ。バルサ×マドリー戦というより、カンプノウ対フィーゴの試合みたいだった。何が飛んでくるかわからないから、危なくてフィーゴがCKを蹴れないという異常事態。しかし、フィーゴへのバッシングがどこまで「本気」なのかは、よくわからない。ブーイングしている観衆の表情を見ると、意外に「ゆるい」のだ。本心からフィーゴを憎んでいるというよりは、これ幸いとばかりに日頃の鬱憤を晴らしている、という感じ。こうした敵対心のあり方は、「欧州や南米では当たり前」で、「日本人には理解できないサッカー文化の真髄」みたいな語られ方をすることが多いけれど、本当にそうなのかなぁ。そんなに純粋(単純)なもんじゃないように俺は思う。メディアに煽られて盛り上がってるだけ、という気がしなくもない。「ON対決だから盛り上がらなきゃ」というのと似たようなもんじゃないのかね。そこに愛はあるのか。

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 ところで、札幌がJ1昇格を決めた。めでたいめでたい。コンサドーレが勝ったのかエメルソンが勝ったのかよくわからないが、とにかくめでたい。しかしエメルソン購入作戦が成功した場合、コータが出戻る余地はあるんだろうか。心配だ。



10月19日(水)13:00 p.m.
BGM/Brahms "Synphony No.1 in C Minor" L.Maazel & Cleveland Orch.

 天気はいいし、重版通知もあったりなんかして、たいへんご機嫌がよろしいのである。このところ、うざったい電話セールスなどもほとんどなく、きわめて平穏な気分で暮らしている。珍しい。のほほん、のほほん。一度もやったことがないが、釣りにでも出かけたい心境だ。……と半ば冗談で書いたら、ほんとうにやってみたくなってきた。最近、セガレにせがまれて水族館に行くことが多いせいだろうか(どうでもいいが、「水族」って凄いコトバだな)。いま誘われたらホイホイ行っちゃいそうな気がするけど、そういや知り合いで釣りをやってる人間っていないなぁ。

*

 ラツィオ×アーセナル(CL1次リーグ第4節)をビデオ観戦。前半、ネドベドの怪っ体なゴールで先制するも、終了間際にピレスに決められて、1-1のドロー。脱力。後半は、リードしてるにもかかわらず、まるで0-1で負けてるチームのような選手交代&猛攻であった。目的は「勝ち点3」ではなく「アーセナルを粉砕すること」だったのかもしれないけど、残り時間10分切ったら少しはカテナチオしたってバチは当たるまいに。うー。欲求不満じゃ。ベーロンって、体調の悪さが思考力低下に直結しちゃうタイプのように見える。



10月18日(水)13:30 p.m.
BGM/Spyro Gyra "City Kids"

 日本×ウズベキスタン(アジア杯C組)を観戦。松田欠場、中沢出場(パリSG戦で最悪の出来)でどうなることかと思ったが、開けてびっくり玉手箱、8-1の記録的大勝であった。サウジも弱かったが、ウズベキもひどい。ひどすぎる。ちゃんと練習しとけよな、おまえら。いったい、アジアはどうなっておるのだ。日本が、まるでコパ・アメリカにおけるブラジルのように見えるぞ。ひょっとして、僕たちの知らないあいだに、日本はアジアでは図抜けて強くなっていたのか。それとも、知らないあいだにアジアはますますレベルダウンしておったのか。どっちでもいいけど、日本のゴールが決まるたびに「そんなはずはない」と不安が募るのはどういうわけじゃ。


似てる人シリーズ

#124 日本代表の西沢明訓と新沼謙治。(妻)



10月17日(火)12:00 p.m.
BGM/Tchaikovsky "Symphony No.5" L.Stokowski & New Philharmonia Orchestra

 インテル×ナポリ(セリエA第2節)を横目で観戦。3-1でインテル。セレソンといい、インテルといい、「監督解任後のバカ勝ち」はもしかするとサッカー界の定理なのかもしれない。五輪帰りのサモラーノが1ゴール。シドニーでは超オーバーエイジだからこその活躍だとばかり思っていたが、実は単に調子が良かったということなんだろうか。

 中国×インドネシア(アジア杯B組)を途中まで見る。クウェートと引き分けて世間(どこの世間じゃ)を驚かせたインドネシアだったが、やっぱり弱かった。開始10分で3失点。どういうわけか、俺は以前から中国のダイナミックなサッカーがけっこう好きだ。続く韓国×クウェートは見ていないのだが、どうなったかと思ってネットでチェックしてみたら……げげっ。韓国、負けてやんの。韓国内の世論がどうなってんのか知らないが、2002年に向けて日本以上にヤバイよな、この国は。だいたい、あんなにW杯や五輪に出てるのに一度も決トナ進出したことがないってのは、もしかして学習能力に問題があるんじゃなかろうか。



10月16日(月)12:20 p.m.
BGM/Berlioz "Symphonie Fantastique" D.Barenboim & Berliner Philharmoniker

 先週は火・水・木と3日連続で終日口述取材、金曜日は上野動物園、と仕事場に来なかったため、更新が滞ってしまった。上野で久しぶりにパンダを見る。日中友好のシンボル、という意味合いをどれだけの人が覚えているんだろうか。ちょうどその日、シュヨーキ首相が来日していたようで、都心の道路には警官がたくさんいた。右翼の街宣車もたくさんいた。街宣車って、どうして昼間でもヘッドライトつけて走るんだろう。眩しくて危ないじゃないか。

*

 日誌をサボっていたあいだもサッカーはどっさり見ていたのだが、もはやよく覚えていない。昨夜だけでも、ユーベ×バーリ、ブレシア×パルマ、ダービー×リバプール、マドリー×デポルティボ、イラン×タイなどをザッピング観戦した。忙しい。一昨日は、日本がサウジに、ラツィオがペルージャにそれぞれ快勝して、久しぶりに寝付きのいい夜だった。明神はえらいなぁ。名波のスルーパスもかっこよかった。でもウナギ沢の先制ゴールは最高に不細工。もうちょっとでハンド or ゴールキックになるところだった。おまえがゴールに入ってどうする。びしっと決めんか、びしっと。



10月10日(火)13:40 p.m.
BGM/Miles Davis "Round About Midnight"

 昨夜は、日本ハム×巨人(1981日本シリーズ第1戦)を途中から観戦。なんか知らんが、そういうのをやっているのだスカパーでは。これがもう19年も前の試合だなんて、ちょっと信じられない。球場は後楽園だ。プロ野球のメッカだ。監督は藤田と大沢だ。王さんは助監督だ。ナボナはお菓子の助監督だ、という冗談が通用した時代だ。巨人の5番はホワイトだ。4番は中畑、原は6番だ。ちなみに柴田は代打だ。イニングの合間に「当時の流行歌」が流れていた。君は天然色(大滝詠一)、心のこり(細川たかし)、おんな港町(八代亜紀)、もしもピアノが弾けたなら(西田敏行)が流行ったのが1981年(昭和56年)だ。

 先発の江川が打たれて、6回を終わったところで4-0。しかし7回表に1点を返した巨人は、続く8回表、ハムの先発・高橋一三(!)を攻め立てる。1死1−2塁。ここで日本ハムは江夏を投入。山倉を三振に討ち取った江夏だったが、ボールが高めに浮いている。ワイルドピッチで2−3塁にした後、そういえば「左殺し」で有名だった平田(!)のツーベースで1点差。さらに松本のタイムリーで、巨人が4-4の同点に追いついたのであった。ところが8回裏、加藤初(!)が岡持(!)にソロ本塁打を食らって5-4。万事休すかと思われたが、9回表、先頭の代打・松原誠(元大洋!)が江夏の初球をレフトスタンドに運んでまた同点。江夏をマウンドから引きずりおろした。その後、リリーフの工藤(公康じゃないぞ!)を2死1−3塁まで追いつめるが、同点止まり。そして9回裏、四球でランナーをためた角が井上(元中日!)にサヨナラヒットを打たれて、熱戦が劇的に幕を閉じたのであった。ふう。19年前の試合を見ながら手に汗を握るとは。いい試合だった。懐かしかった。選手たちの目に、「男」を感じた。スタンドの空気も、どこかやさぐれていた。そこにはまだ、70年代の残滓があった。ああいう殺気を孕んだ光を目に浮かべている野球選手が、今どれだけいるだろうか。……というのは、オヤジのノスタルジーに過ぎないんだろうか。あのころのプロ野球は、ちょっとセリエに似ていたのかな、と思った。



10月9日(月)

 アルゼンチン×ウルグアイ(W杯南米予選)を見る。ベーロンやオルテガの欠場でチャンス到来のガジャルドが元気はつらつ。そういう選手がきっちり先制点を決めてアピールするあたりが、競争原理の威力である。さらにバティも豪快に追加点を決めて、アルゼンチンの2-1。

 ベネズエラ×ブラジル(W杯南米予選)は、0-6。ルシェンブルゴ解任でどうなるかと思われたが、ブラジルは実に伸び伸びとサッカーをエンジョイしておった。ロマーリオは2試合連続ハットトリックである。

 キプロス×オランダ(W杯欧州予選)は0-4でオランダ。前半は0-0だったが、セードルフのFKで均衡が破れてからは一方的な展開になった。それにしても、クライファートのシュートはなぜ入らないんだろう。最後に1ゴールは決めたものの、ぜんぜん物足りない。弱小国相手でもがつがつとゴールを貪るロマーリオのようなメンタリティが欲しい。



10月8日(日)

 パリSG×日本代表(練習試合)をライブ観戦。練習だと思えば腹も立たないけれど、そういやフル代表(without 中田)ってこんな感じだったよなー、と溜め息ばかり出る。名波&森島のスーパープレイでゲットした1点を守りきれず、1-1のドロー。調整とはいえ、アジア杯で優勝できるような雰囲気は微塵も感じさせない。日本と韓国とクウェートが五輪にうつつを抜かしているあいだ、他の国はここに照準を合わせて仕上げていたのだし。



10月7日(土)

 イングランド×ドイツ(W杯欧州予選第2節)をライブ観戦。すでに1.5等国同士の対戦だと思ってそれほど気分は高まっていなかったのだが、いざ始まってみると、ウェンブリー改修前のラストマッチということもあって、場内の雰囲気はやはり凄まじい。「66年W杯決勝の再現」というファンタジーのなせる業か。前半、イングランドの選手が壁作りにもたついているあいだに、ハマンが虚をついてFKを蹴る。ゴールイン。伝統も格式も感じさせない、間抜けなドイツの先制点であった。ドイツの術中にはまったイングランドは、攻めても攻めてもゴールが奪えない。奪えそうな気がしない。0-1でドイツの勝ち。重要な意味を持つホームゲームを落としたキーガンは、辞意を表明したとか。ま、当然だわな。っていうか、遅すぎる。EURO予選敗退の時点で、去るべきだった。



10月6日(金)

 どうしてそんなこと思いつくのか判らないのだが、両親の誘いで東京湾サンセットクルーズなるものを初体験。ゆりかもめ、という乗り物にも初めて乗った。日の出桟橋を16時半に出航して、およそ2時間の食事&夜景である。他のテーブルは、ロマンチックな雰囲気を消費しに来ているカップルばかりだったので、騒がしいセガレを黙らせることばかり考えていた。「ピアノやめて!」って言うなよな。ピアノの生演奏も料金のうちなんだからさ。曇っていたのでサンセットは拝めず、料理はレベル低すぎ。しかし愚母は、もう34年も東京に住んでいるにも関わらず、電飾のついた東京タワーを初めて見たと言って喜んでいた。ほんまかいな。



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