闇の中の翼たち
ブラインドサッカー日本代表の苦闘
(岡田仁志/幻冬舎/1500円+税)








キャプテン翼勝利学
(深川峻太郎/集英社インターナショナル)

目次 | 12月の日誌 | アジア選手権2009 | 全仕事リスト | 江戸川時代 | home | mail


 平成22(2010)年1月29日(金)

 ソワソワ、ウダウダ、そしてワクワク
 BGM : You Are What You Is / Frank Zappa

 ここには書けない(そのうち書けると思う)事情があって、昨夜からソワソワと落ち着かない。それはもう合格発表を待つ受験生のごとき猛烈なソワソワなのであり、ひとつソワソワすることがあると他のことが手に着かなくなるのは、私のとてもダメなところ(のひとつ)だ。要するに「気持ちの切り替え」というやつが極端にヘタなのである。そもそも、素粒子物理学の仕事を片付けてからもう10日ほど経つというのに、まだ次の仕事に集中できていない。神保町を徘徊中にまた『アインシュタインの望遠鏡』とか『物質のすべては光』とかそんな本を買って拾い読みしては「なるほど、こういうふうに説明すればよかったのか!」などとウダウダ考えているのだから、本当にダメ人間である。そんなところに新たなソワソワが加わるのだから参った。ウダウダは今さら自分ではどうにもできない「過去」、ソワソワは自分ではどうにもできない「未来」にとらわれているわけで、これでは目の前の「現在」に集中できるわけがない。そうこうしているうちに週末が近づき、つくばのホテルを予約したりなんかしていると、ますます目の前の仕事がお留守になる。一泊二日で、ブラインドサッカー日本代表の強化合宿が実施されるのである。こちらはウダウダでもソワソワでもなくワクワクだが、仕事が手に着かないのは同じこと。ちなみに明日は午前中にセガレの試合(杉並Aリーグ)を観戦してからつくばに向かうので、ちょっと遅刻します。べつにそれで迷惑をかけるわけでも何でもないのだが、私がいないと心配する人がいるらしいので、一応、業務連絡。

 そうそう、そうなのだ。ブラインドサッカーにかまけてここに書くのを忘れていたが、セガレのチームは前期の杉並Aリーグ(全6チーム)で見事に残留を果たし、後期もすでに2試合を消化して勝ち点6という好調な滑り出しを見せているのだった。セガレの好セーブもあって強豪SFCを下した試合はアジア選手権の決勝戦と重なったので観戦できなかったが、チームメイトのお父さんが撮影したビデオで見たそのセーブは親バカ抜きで格好良かった。いつの間にやら、GKらしくなったものである。で、明日は誰もが杉並最強と認めるシーダーズとの一戦だ。ここから勝ち点をひとつでももぎ取れば、Aリーグ残留に大きく前進するはず。タッチラインの外から「ハンドだろ!」などと叫んで審判に厭がられることのないよう、冷静に観戦しようと思います。あっちでもこっちでも同じことをしている私。

(12:40)







 平成22(2010)年1月28日(木)

 神保町の午後
 BGM : The Movie / Clare & the Reasons

 きのうは午後3時から神保町の飛鳥新社で打ち合わせ。これまで御縁のなかった版元だが、尊敬する著者のご指名で声がかかったのは、ありがたき幸せである。大御所アーティストのツアーに呼ばれたセッションミュージシャンも、こんな気分なんだろうな。「春に出したい」とのことで、どえらい突貫工事になりそうな雲行きだが、断れるはずがない。まあ、何であれ、この出版不況時に仕事を断る余裕なんかないわけだが。

 打ち合わせ後、祥伝社のK嬢から携帯にメール。リライトした本の見本ができたので送るという。祥伝社と飛鳥新社は目と鼻の先なので、会って持ち帰ることにした。しかし、いま抱えている仕事(私のせいで刊行が3月から4月に延びた仕事)も祥伝社なのであり、そちらの担当者には合わせる顔がない。そもそも祥伝社は20年前に辞めた古巣なので気詰まりだ。なので会社には行かず、靖国通り沿いの珈琲館で密会。と書いたら密会でも何でもないが、そこで見本を受け取るやいなや次の仕事を頼まれるのだから飛んで火に入る夏の虫である。まだ冬だけどね。ともあれ、「この著者の企画なんですけど」と売れ行き好調の某社新書を手渡されたら、断れるはずがない。まあ、何であれ、この出版不況時に(以下略)。

 というわけで、神保町を歩けば棒に当たるのか何だか知らないが、6月までスケジュールが埋まった。執筆中の本を含めて5冊。仕事は取ってきてやったから、あとは頼んだぜ……と、現場の若いモンに丸投げできる立場だったら、どんなに楽だろうか。セガレの成長を待ちたいところだが、あろうことか作文の成績が悪いのだから困る。

(12:10)







 平成22(2010)年1月26日(火)

 監視カメラは検閲カメラ
 BGM : Kohntarkosz / Magma

 どれもこれも区別がつかないのでどの局の何という番組だかわからないが、今朝のワイドショーが、コンビニや商店街の監視カメラがいかに進歩しているかを伝えていた。そういうものがあるのは前から知っていたが、「異常行動」を自動的に識別して警察に通報するカメラって、本当に気持ちが悪い。たとえば、何かすごく良いことがあってゴキゲンが最高潮に達した人が「ひゃっほーう」とか口走りながら腕をぶんぶん振り回してスキップしてたら、通報されてしまうのだろうか。それに反応しないカメラは監視カメラとして役立たずだが、これはもう行動の「検閲」でしょう。「道端で胴上げ」なんかも、集団暴行と見分けがつかないから絶対にダメ。それはつまり「シャレの通じない社会」ですわな。通報を恐れて自主規制を始めた人々が、「李下に冠を正さず」とばかりに不自然なほどお行儀のよい歩き方をするようになるまで、そう時間はかかるまい。そのうち「犯罪者風の表情」までチェックされるようになって、みんな北朝鮮のマスゲームみたいな作り笑顔で歩き始めるわけだ。ああ気味が悪い。

 たまたま数日前から『なぜ、ナチスは原爆製造に失敗したか 連合国が最も恐れた男・天才ハイゼンベルクの闘い』(トマス・パワーズ/鈴木主税訳/福武文庫)を読んでおり、そこにはナチス政権下でドイツの物理学者たちが味わった監視社会の息苦しさが描かれていることもあって、「監視」を不気味に思う感覚を失ってはいかんよな、と改めて思う。監視カメラがもたらす安心や安全はたしかにありがたいものだが、それは一方で必ず何かを奪う。パーフェクトに「安心・安全」な世の中は、たぶん、とてつもなく窮屈かつ退屈な世の中。リスクのないところには希望もない。たとえばブラインドサッカーも、視覚障害者の「安心・安全」を最優先する発想からは生まれなかったのである。

(15:30)







 平成22(2010)年1月25日(月)

 シンポジウムの夜
 BGM : MInd, Body & Soul / Joss Stone

 土曜日は、西新宿の角筈区民ホールでブラインドサッカーのシンポジウムに出席。聴衆は疎らで、日本野鳥の会を呼ばなくても舞台の上からカウントできる程度だったので、とても気が楽だった。パネリストの人数が多く、そのわりに時間が短かったため、あまり対話はなく(9人で「バトル」は無理だわな)、司会者の質問に各自が順番に答えるような感じ。いくつかのことをとりとめもなくダラダラと喋って退散してきた。いちいち話が長くなるのは私のダメなところだが、悪いのは私ではなく、そんな奴を呼ぶ主催者だということにしておく。終了後に風祭監督および松崎事務局長と久しぶりにじっくり飲めたので、私にとっては実に有意義な1日だった。監督は12時すぎに宿へ戻ったが、松崎さんと別れたのは3時だよ。また飲み過ぎたよ。でも店が閉まらなければ朝まで飲んでしまったかもしれない。男ふたりで何をそんなに喋ることがあるのかと思われるだろうが、そんなことはここには書けません。

 それにしても、やはり喋る仕事は苦手なのであって、その場で考えを整理せずに発言するとどうしても言葉足らずになるのだし、しかもその言葉が喋った瞬間に消えていく(3行前に戻って流れを修正したりできない)のがイヤだ。JBFAは私を常に「ジャーナリスト」と紹介するが、その肩書きだと話し言葉でもまともな伝達能力を持たないといけないわけで、しかし私は「書く」のが専門なのだから、やっぱ「ライター」だよなと思いました。

 そんなわけで、喋ったことについて弁解や補足をしたい点は多々あるのだが、そろそろ次の仕事に本腰を入れないとまずいので時間がない。いずれソシオのコラムが再開するようなことがあれば、そちらで書くことにしよう。

(12:55 p.m.)







 平成22(2010)年1月22日(金)

 次はことわざだ!
 BGM : Duchess of Coolsville: An Anthology / Rickie Lee Jones

 仕事が一段落した(一段落するまでに千段落ぐらい書いた)し、明日は人前に出るので、駒場東大前で髪の毛を切ってきた。このところあまり短くしていなかったが、今回は洗髪してから3分で自然乾燥しそうなほどの短髪。美容師のキリカ姐さんは自画自賛の人で、「あら岡田さんたら、すっきりしてカッコイイじゃな〜い」とのことだが、そのあとで「2丁目とか行ったら、すんごいモテるわよコレ」と付け加えられたのが、たいへん気になる。

 報道によると、われらが首相は「朝三暮四」と「朝令暮改」の区別がついていなかったそうで、こんどは四字熟語の本がバカスカ売れたりするに違いない。最初に出すのはどこの出版社だろうか。そんなもん、どうせ古い本の焼き直しに決まっているわけだが、新しそうなタイトルや帯に目を奪われて中身が同じだと気づかないのが、まさに朝三暮四。まあ、私も日頃からビジネス書の焼き直しはうんざりするほどやっているので、批判できる立場ではありません。しかし、そうなるとアレだな。漢字の読み方、四字熟語と来たからには、次の首相はことわざや慣用句の誤用で躓くに違いない。いまのうちに「恥をかかない慣用句・ことわざの使い方」的な本の原稿でも書いておくか。総理大臣が、生活保護費カット的な政策を「情けは人のためならずと申しますから」と説明した瞬間にリリースだ。

 そもそも私は以前から、世のビジネス書や自己啓発書に書かれている内容なんて、大半がことわざで事足りるんじゃないかと疑っている。「成功を呼ぶ7つのことわざ」とか「運命を変えることわざの法則」とか「会社でチャンスをつかむ人が実行していることわざ」とか「しがみつかないことわざ」とか「勝間さん、ことわざで幸せになれますか」とか「ことわざ力」とか「ことわざだけダイエット」とか、大量にシリーズ化すれば、もうビジネス書の焼き直しをせずに済む世の中になるかもしれない。最後のはドサクサ紛れ。

(14:05)







 平成22(2010)年1月21日(木)

 新書七十五番勝負
 BGM : Tokyo Rose / Van Dyke Parks

 友人で詩人の渡邊十絲子さんが、最新刊『新書七十五番勝負』(本の雑誌社)を送ってくれた。渡邊さんは詩人だがこれは詩集ではなく(このタイトルで詩集だったらそれはそれで面白いとは思うが)、新書の書評集である。彼女は、知る人ぞ知る「新書読み」なのだった。私は以前、渡邊さんの主宰する「新書の会」なる読書会のメンバーだったことがあるので、それを「知る人」のひとりだ。なんだか知らないが(いや私は「知る人」なのだが)、ひたすら新書ばっか読んでいる。もちろんほかの本も読むのだが、とにかく新書が好きらしい。そんなわけでもう何年も『本の雑誌』で新書に関するコラムを連載しており、それにいくつかの書き下ろしを加えてまとめられたのがこの本である。

 で、私はまだ読み始めたばかりで、ふと気づくと愚妻に横取りされていたので先を読めずにいるのだが、これが阿佐田哲也『雀鬼五十番勝負』に匹敵するほど面白い本であることは冒頭の十数ページを読んだだけでわかった。何はともあれ、うまいんだよこの人は文章が。2年前に出たエッセイ集『兼業詩人ワタナベの腹黒志願』(ポプラ社)もそうだったが、私は彼女の文章を読むたびに、嫉妬で身悶えする。彼女と私は大学の「文芸科」っつうところの同級生で、そうでなければ嫉妬なんかせず単に「世の中には文章の上手な人がいるよね」と思うだけなんでしょうけれども、そういうことだとどうしたって比較しちゃうわけで、じゃあ何が私と違うかといえば、どうやら渡邊さんもこの日誌を見ているようなので書きにくいものの、私は自分がどうやって文章を書いているのか知らないが、渡邊さんは自分がどうやって文章を書いているのか知っているんだろうなあ、なんて思ったりするのである。よくわかんない。まあ、要はちゃんと修業を積んだ人とセンスだけでその場をしのいでいる人間の差であろう。とにかくですね、「私は昔から文章を書くのが好きで」とか言いながらヘラヘラとブログとか書いて自己満足に浸ってる人は、たまにこういう人の文章を読んで打ちのめされておいたほうがいいと思うよ。いやマジで。

 で、そんな人が新書における「良い文章」について語ったりしているのだから、ふだん新書の原稿をエイヤーッと書き散らしている(というか2日前にも書き散らし終えたばかりの)ライターには、ひどく耳が痛いのである。ふつうの読者にとってこれは新書の「読み方」についての本だろうが、私には「書き方」の本だ。日々「わかりやすさ」を求められ、噛んで含めるように書いた挙げ句に離乳食みたいになった原稿を量産しているライターは、この本の冒頭の一編を読んで打ちのめされておいたほうがよい。というわけで、全部読んだらまた何か書くかもしれないが、ちくしょう、おれもいつか、渡邊十絲子が勝負を挑みたくなるような新書を書いてみてぇもんだよなぁ。

(17:40)







 平成22(2010)年1月20日(水)

 開き直る目クソ
 BGM : Balm in Gilead / Rickie Lee Jones

 壮絶な肩凝りと疲れ目に耐えながら、きのうの夕刻に素粒子物理学本を脱稿。くたびれた。なんかもう、脳がカラカラな感じ。当初は12月中に著者に渡す予定だったので、ほぼ1ヶ月遅れである。あーあ。詫びる私を、心やさしい担当編集者は「11月末締切なのにまだ届かない原稿がありますから」と、もっとダメなライターの例を挙げて慰めてくれたが、まさに五十歩百歩。いや、こういうのを目クソ鼻クソという。「鼻クソより目クソのほうが断然マシ。なぜなら他人の鼻クソは絶対に触りたくないが目クソはギリギリ触れるから」がかねてからの私の持論ではあるものの、まあ、クソはクソだ。次の仕事(心理学関係の本)も着手が遅れたので、3月刊行の予定が4月刊行になった。ぐるりの皆様に迷惑かけ放題だ。こうして人は信用を失っていく。心を入れ替えて頑張ろう。と、日記には書いてみるものの、心がそう簡単に入れ替わったりはしないんである。もう20年もこんなことやってんだから、いまさら信用もへったくれもねえよな。おいおい完全に開き直ってるぞコイツ。でも、開き直りは歳を取った人間の特権。いやはや、次はどうなることかと思ってた(なにしろ2週間で1冊書くハメになりそうだったのだ)けど、刊行が先送りになって、すんげえ楽になっちゃったよなあ。これで心おきなく月末の強化合宿@筑波にも遊びに行ける。やっほー。

 と、開放感に浸っている暇はないのであって、JBFAから依頼された原稿の締切が今日なのだった。なにやらアジア選手権の報告書に載せるから大会の総評を書けとのこと。もう、あの大会のことはさんざん書いたのでいささか飽きたような気がしなくもないし、外部のライターが書くような類のものなのかどうかもよくわからないが、頼まれればイヤとはいえない。惚れた者の弱味である。そういや、ずっと素粒子にかまけていたので緊張する暇もなかったが、こんどの土曜日はシンポジウムじゃん。まだとくに打ち合わせもないので、そこで自分が何をするのか想像がつかない。しかしまあ、シンポジウムは本来「いっしょに酒を飲む」という意味だそうだから、遊びに行けばいいんだな、きっと。いや、話は逆なのか。「いっしょに酒を飲む」とは、本来、シンポジウムのように会話をすることなのか。

 それにしても眠い。

(12:53)







 平成22(2010)年1月19日(火) 体重不明

 小沢と反小沢
 BGM : Blue Note Sessions / Nigel Kennedy

 素粒子物理学の原稿で必死こいて「物質と反物質」について書いている合間に、ふと立ち寄ったニュースサイトで「反小沢」という言葉を見つけたので、ゲラゲラ笑った。わからない人はWikipediaの該当ページでも読んでちょっと勉強しなさい。つまり反小沢は、それを構成する素粒子の質量やスピンなどの性質が小沢とまったく同じで、電荷のプラスマイナスだけが小沢と反対なのである。書いていて、意味がさっぱりわからない。なんだ小沢の電荷って。それはプラスなのかマイナスなのか。まあ、たぶん4億円の出入りが逆なのだろう。建設会社に4億円あげてどうするのかよくわからないが、相手も建設会社ではなく反建設会社なのだし、作るのもダムではなく反ダムだから、何とかなるのかもしれない。「何とかなる」ってやけに無責任な言い草だ。でも、これでは「性質」が反対だから反物質にならないか。反小沢は、日本円ではなく中国元かウォンで受け取るのかもしれない。それはともかく、小沢と反小沢は出会うやいなや凄まじいエネルギーに変換されて爆発し、瞬く間に消滅するのだった。小沢の体重が何キロだか知らないが、映画『天使と悪魔』でバチカンの脅迫に使われた反物質は、たった0.25グラムだった。それでも原爆並みだというから、気をつけたほうがいいぞ、反小沢の人たち。「性質」は同じだから、消えてくれても一向にかまわんが。

(11:30)







 平成22(2010)年1月18日(月) 体重不明

 それでも言葉で書く仕事なんですけど
 BGM : Barefoot / Anna Maria Jopek

 書いても書いても終わらない素粒子物理学の原稿は、やっと最終章に入ったところ。こんなに遅れまくって次の仕事どうすんだ!という話だが、なぜこんなに手間取っているのかというと、思った以上に私の頭が悪かったということだから、まあしょうがないわな。もうちょっと理解できてると思っていたが、いざ書いてみるとわからんことばっかりだ。ゴーストライターは「プロの知ったかぶり屋さん」みたいなもので、実際この20年間ずっと知ったかぶりの日々だったわけだが、それにも限界はあります。だいたい、われわれ文系の出版関係者というものは、理系の難解な理論を数式を使わずにタテガキの言葉だけで誰にでもわかるように書けるはずだという奇妙な信念を持っていたりするわけだが、それは無理。たぶん無理なのです。そんなことできたら、物理学者だってわざわざ数式なんか書かないんじゃないかな。今朝5時頃、朦朧とした頭で「CP対称性の破れ」をどうしたらわかるように書けるか考えていたら、気が狂いそうになった。言葉の外にも世界はある、というか、そっちの世界のほうが広いんだっつうことを痛感する今日この頃。

 あれは先週の土曜日だったか、TBSラジオの「久米宏 ラジオなんですけど」にブラインドサッカー日本代表のコーラー魚住先生が出演されたそうで、そこで久米さんが「この『闇の中の翼たち』という本によりますと」とか何とか書名を出して喋ってくれたらしい。と、愚妻の大学の同級生で魚住先生の元同僚でもある(おまけに私の高校の先輩いや同窓生でもある)方が教えてくれた(と愚妻から聞いた)。そういう人がたまたまその番組を聞いていたというのだから、なんとも世の中うまくできている、と妙に感心したりするわけだが、同じTBSでもちゃんと出典を明らかにするあたりはさすが久米さん、しっかりしている。有り難いことだ。でも、まさか「〜によりますと魚住さんのお名前は土ヘンになっておりますが、本当はノギヘンですよねぇ、アハアハ」とかいう話じゃないよな?

 あれ? TBSといえば「情報7days ニュースキャスター」がアジア選手権を取材していたはずだが、オンエアはまだなのかしら?

(17:25)







 平成22(2010)年1月17日(日) 体重不明

 実行委員会とシフォン主義と全面対決
 BGM : シフォン主義 / 相対性理論

 仕事の手を止めている場合ではないのだが、きのうの土曜日は13時から17時まで千駄木でYBOの練習。5月28日にコンサートが予定されており、ずいぶん先のことのようにも思うものの、残された練習回数はそう多くない。あと4ヶ月で、「ほぼ初心者」から「けっこうリコーダーの上手な人」にまでジャンプアップしなきゃいけないんだから困ったものだ。もうひとつ困るのは、本番前最後の練習となる週末に、ブラインドサッカーの日本選手権が大阪で開催されること。どちらかに不義理をせねばならなくなるやもしれん。

 練習終了後は、仕事の手を止めている場合ではないのに、いったん帰宅して楽器を置いてから武蔵小金井へ。今年は中学(小金井市立第一中学校)卒業30周年にあたるので同窓会を決行しようという話になり、十数人が集まって実行委員会的なものを開いたのだった。大半が30年ぶりに会う連中だったので、それ自体がすでに同窓会の2次会みたいな感じ。11月に開催することになり、それまでにいかにして人を集めるかが問題なわけだが、この実行委員会を毎月やっていれば、ちょっとずつ人数が増えて、11月には100人を越えるような気もする。ただしその場合、夏あたりには気が済んでしまって「もういっか」になるに違いない。

 意外だったのは、私がある女の子と「つきあっていた」と誤解している奴が何人もいたことだ。その女の子の名誉のために「オレはフラれたんだっつうの」と言ったのだが、なんでそんなことを声を大にして叫んでいるのだ私は。情けない。寝不足やら何やらでクタクタだったのでベロベロになり、それ以外にどんな話をしたのか記憶があやふやだが、同窓会と関係ない話に終始したことは間違いなく、最終的には生徒会長だったミヤモト君に「すべて任せた」と丸投げして帰ってきたのはよく覚えている。ミヤモト君には「おまえは副会長だったときからそういう奴だった」と糾弾されたが、それはよく覚えてません。

 というわけで仕事に戻り、相対性理論を聴きながら素粒子物理学を書く日曜日。アルバムタイトルの「シフォン主義」が何のことだかわからず、ジャケットに「Chiffon/Capitalism」とあるのを見ても「……ん?」と首をひねり、「ああ、はいはい、そういうことか」と理解するまでかなり時間のかかった私は、やはり頭の回転が遅すぎる。

 民主党の党大会で、小沢幹事長が「こういう権力の行使の仕方について、全面的に対決して参りたい」と語ったそうだ。石川議員らの逮捕のことである。この「権力」を司法権のことだと思っている人もいるかもしれないが、検察は司法権なんか持っていない。憲法には「すべて司法権は裁判所に帰属する」と書いてある。検察が行使したのは行政権ですね。つまり民主党幹事長は「行政権と全面対決」すると言ったわけで、それは行政の長たる「内閣総理大臣との全面対決」という意味になり、その発言に拍手喝采した民主党の議員たちはただちに倒閣運動を始めなければいけないような気がするのだが、違うんでしょうか。

(17:20)







 平成22(2010)年1月14日(木) 体重不明

 いろいろ不正確
 BGM : Guitar / Frank Zappa

 家の体重計が不調だ。きのう乗ったら数字がぐんぐん上がって88キロまで到達したので、「そんなバカな!」と慌ててやり直したら、こんどはぐんぐん下がって80キロだといいやがる。アインシュタインの相対性理論によると、エネルギーは質量に変わり質量はエネルギーに変わるそうなので(エネルギー=質量×光速の2乗)、私の体が瞬時にエネルギーを吸ったり吐いたりしているのかもしれないが、こんなことでは今までの計測値もどこまで正確だったのか頼りない。新しいのを買わねば。あんまり関係ないが、このあいだ原稿執筆中に「相対性理論」と書いたつもりで変換したら「早大生理論」と出たので笑った。「在学中のエネルギー=出席日数×雀荘滞在時間の2乗」とかそういうこと? 私が卒業できたのは、特殊早大生理論によるものだろうか、それとも一般早大生理論によるものだろうか。

 アジア選手権用特設ページで、12月14日にイランのブラインドサッカーについて書いたが、それについて同じネタ元から訂正が入った。「イランにはまだ国内リーグがなく、代表チームだけがブラインドサッカーをやっている」というのは間違いで、テヘランだけで3つ、イラン全体では8つのクラブチームがあるとのこと。リーグ戦もあるらしい。大会直前に間違った情報をお伝えしてしまい、すみませんでした。ちなみに、クラブチームはすべてイラン政府が管理・運営しているそうだ。代表選手の中には「プロ」もいるとのことだが、どういう意味なのかはよくわからない。旧ソ連や旧東ドイツのステートアマみたいなものだろうか。代表チームは、アジア選手権前に週4日も練習していたという。以上、あやふやな伝聞情報で申し訳ないが、そういうことだとすると、日本がイランと引き分けたのは、思っていた以上に高く評価できるような気もする。世界選手権出場を逃したイランの選手たちが帰国後にどう扱われているのか、ちょっと心配になったりもしますが。

(11:35 a.m.)







 平成22(2010)年1月12日(火) 82.4 kg

 アイドル発見
 BGM : Bible Belt / Diane Birch

 ひたすら原稿書きの日々。素粒子物理学の仕事がまだ終わらない。終わらないどころか、相対性理論と量子力学から場の量子論、そして量子電磁力学へ……という最大の難所を迎えている。こんなところで日誌なんか書いている場合ではないのだった。なので、最近出会った女神の歌声だけ下に埋め込んでおく。ダイアン・バーチの「Nothing But a Miracle」と「Choo Choo」。どうやら前者はFNNスピークの天気予報で流れている(流れていた?)らしいが、そういう安っぽい使い方をしないでもらいたい。いまごろ彼女の存在を知った私は遅れているのかもしれないが、久々に「ああ、もう、どうにでもして」と思いました。きゃわいらしいお顔と味わい深い声のギャップが衝撃的。ただちに「アルバム全部オトナ買いしてやる!」と思ったのだが、まだデビューアルバムしかないのが残念でならない。もしかしたら、ローラ・ニーロのデビュー当時もこんな感じだったのかもな、などと想像した。




(10:05 a.m.)







 平成22(2010)年1月8日(金) 81.6 kg

 シンポジの不安
 BGM : Kafka / Nigel Kennedy

 年が明けても、なんだかんだとブラインドサッカーの話題ばかりである。こんどはシンポジウム(のようなもの)が今月23日に開催されるのだった。11月初旬に依頼を受け、恥ずかしながら私も顔を出すことになっている。喋る仕事はほんとうに勘弁してほしいのだが、「ブラインドサッカートークバトル 〜アジアから世界へはばたく闇の中の翼たち〜」なんてタイトルを掲げられちまったら、断るわけにもいかない。しかし、JBFAサイトの告知を見て、腰を抜かしそうになった。ゆ、有料じゃん……。しかも2000円て。映画より高いぞオイ。てっきり無料イベントだとばかり思っていたので(もちろんギャラをもらうわけではないし、おそらく入場料はチャリティ的な意味合いなのだろうと想像してはいるものの)にわかにプレッシャーがレッドゾーンに達してしまいましたとさ。あわわ。私自身は本やコラムやブログで書いてきたようなことしか喋れそうにないので、せめて選手や監督から値打ちのある言葉を引き出せるように努力したいと思います。だけど「バトル」だもんなぁ。ちゃぶ台ひっくり返したほうがいいのか?

(11:15 a.m.)







 平成22(2010)年1月7日(木) 81.6 kg

 乃木坂の夜
 BGM : Colour Me Free / Joss Stone

 ゆうべは8時前に都立青山公園へ行き、久しぶりに「乃木坂ナイツ」を見物。いきなりこう書くと歌や踊りやミラーボールのあるイベントみたいだが、これはブラインドサッカーの自主練習会である。詳しくは『闇の中の翼たち』を読むように。代表選手4名や成人式を間近に控えた女子大生(しかもフェリスだぞフェリス)を含む十数名が集まり、和気藹々。アジア選手権前と同じ人たちとは思えぬゆるゆるムードに、心がなごんだ。あらためて、彼らが感じていたプレッシャーの重さを知る。しかし、乃木坂のリーダー葭原さんが早くも「中国対策」と称する新たな練習方法を試しており、次の戦いが始まっていることも実感。楽しみだよなぁ。今年中に、日本が中国に一矢報いるところを見たいものである。

 練習後は近所の沖縄料理屋へ。ソシオの連載コラムで日本チームの得点王に授与すると予告した「闇翼賞」を、3分間でハットトリックを決めて怪獣マレーシアを倒したウルトラマンに進呈した。賞品は、CDなどが買える全国共通ミュージックギフト券。サッカーとまるで関係ない。「それはおまえが欲しい物じゃないか」という声が聞こえてきそうだが、私が勝手にあげるんだから、それでいいのである。「闇」の字には「音」が入ってるしね。そんなこんなで、終電までギャーギャーと飲む。最近、彼らと飲んでるときがいちばん愉快。

(11:55 a.m.)







 平成22(2010)年1月6日(水) 81.2 kg

 記事掲載のお知らせ
 BGM : Szeptem / Anna Maria Jopek

 本日発売の「週刊サッカーダイジェスト」(1/19号)にブラインドサッカーアジア選手権に関する拙稿が掲載されている。写真も8点と豊富。私の取材メモにあった、イラン戦における加藤選手の「強い突破」(アジア選手権特設ページ12/19参照)は44ページ左上のシーンかもしれない。こういうときのカトケンって、とってもフォトジェニック。ところで、記事中の小見出しに「雪辱を晴らすべく」「強豪・中国には引き分け」という誤りがありますが、私が書いたのは本文だけで、ゲラのチェックもなかったので、どうかご勘弁ください。正解は「屈辱を晴らす(もしくは雪辱を果たす)べく」であり、「強豪・中国には惜敗」であります。あと、私の原稿では「行く」「世界選手権イングランド大会」とした部分が、記事では「行くぞ」「イギリス・世界選手権」となった。どっちでもいいんだろうし、あんまり細かいことばかり言うと嫌われるが、私は「voy」はスペイン語の「行く」、今年8月の第5回世界選手権開催地は「イングランド」だと(今のところ)思っております。

(12:30 p.m.)







 平成22(2010)年1月5日(火) 82.4 kg

 世の中そういうふうに出来ている
 BGM : Jasnoslyszenie / Anna Maria Jopek

 表も裏も印刷オンリーの寒々しい年賀状が多くなった中で、手書きのひと言を添えてくださるのは、それだけで有り難いものである。たとえ「本読みました!」よりも「テレビ見ました!」のほうが圧倒的に多いとしてもだ。なるほど、と、今年一発目の軽い溜め息。

 フジテレビ「めざましテレビ」から、「めざまし君」なるキャラクターのぶら下がった携帯ストラップが届いた。年間平均視聴率で「ズームイン!SUPER」を初めて抜いたとのこと。フジテレビの早朝番組では「初めての快挙」だそうだ。スコアは、10.4%対10.3%。大差ないように見えるが、その0.1%だけで、本ならベストセラーである。なるほど。

 そんな暇はないはずなのに、デザインをちょいといじってみた。デザインとか関係ない音声読者も増加中の昨今だが、もしかしたらデザイン変更が私の無意識に働きかけて文体が変わるかもしれないので、そのつもりで読んでください。

(14:15)







 平成22(2010)年1月4日(月) 82.6 kg

 謹賀新年
 BGM : Nienasycenie / Anna Maria Jopek

 31日の夕方まで働き、1日は愚妻の実家(調布)、2日は私の実家(小金井)で過ごして、3日の午後から働いている。仕事納めは、こんどの連休明けぐらいになりそう。要するに、またそういう1年が始まりやがったということである。この4月でライター稼業20周年を迎えるのだが、リフレッシュ休暇は取れるのだろうか。あ、8月のヘレフォード行きをそれにすればいいのか。いや、それは仕事か。いや趣味か。うーん、趣味とはちょっと違うよな。どうなんだそのへんのことは。まあ、あえて言うなら、いわゆるひとつの生き甲斐ってやつですかね。なんちゃって。と、そんな果てしない自問自答に今年もおつきあいいただければ幸いです。話は変わるが、アンナ・マリア・ヨペックの「Nienasycenie」は、タイトルの読み方も意味もさっぱりわからないものの、これを聴かずにAMJファンを自称していたのが恥ずかしくなるくらいの傑作。

(12:45 p.m.)