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Review: Danças Ocultas, Travessa De Espera; Danças Ocultas, Pulsar
2007/06/24
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Travessa De Espera
(L'Empreinte Digitale, ED13144, 2002, CD)
1)Diatónico 2)Queda D'Água 3)No(c)turno Das 7 4)Quatro Ilusões 5)Contradança 6)Escalada 7)Hinos À Noite 8)Do Fundo Do Mar 9)Meia Folia 10)Dança D'Alba 11)Moda Assim Ao Lado 12)Neia 13)Bulgar 14)Vaguear 15)Dança II
Production & Aritistic Direction: Gabriel Gomes.
2, 3, 9, 11, 15) taken from the album Danças Ocultas (EMI (Portugal), 1995).
1, 4, 5, 6, 7, 8, 10, 12, 13, 14) taken from the album Ar (EMI (Portugal, 1998).
Danças Ocultas: Artur Fernandes (accordion), Filipe Cal (accordion), Filipe Ricardo (accordion), Francisco Miguel (accordion).
(Magic Music, MMR20042, 2004/?, CD)
1)Tristes Europeus 2)Primeira Hora 3)Fantasia 4)Porto Seguro 5)Distância 6)Casa Do Rio 7)Alento 8)Sirocco 9)Alchimie 10)Pandora 11)La Danse Idéale 12)Esse Olhar (Ao Fole) 13)Danças Ocultas 14)Queda D'Água 15)Moda Assim Ao Lado
1-13) Artistic production: Gabriel Gomes, 2004. 14) Recorded live 2005/11. 15) Recorded live 2004/10.
Danças Ocultas: Artur Fernandes (accordion), Filipe Cal (accordion), Filipe Ricardo (accordion), Francisco Miguel (accordion); Gabriel Gomes (accordion, synthesizer) on 1, 7, 9, 14, 15; António Augusto Aguiar (double bass) on 1, 10, 11; Maria João (voice) on 3; Mário Laginha (piano) on 3, 9; Tiago Abrantes (bass clarinet) on 4; Edu Miranda (mandolin, acoustic guitar) on 5; Gaiteiros De Lisboa on 6; Rui Júnior (percussion) on 8; Abed Azrié (voice, percussion) on 9; José Salgueiro (drums) on 11; Ricardo Neves (voice) on 12.

Danças Ocultas はポルトガルのポルト (Porto, Portugal) から60kmの 所にあるという小さな町 Agueda 出身の diatonic accordion の4tetだ。 1990年代にEMIから2枚のリリースをした後、 2004年に独立系レーベルから最新作をリリースしている。 ちなみに、アルバムの制作は全て Madredeus (ポルトガルの world music のグループ) の結成メンバーだった accordion / keyboards 奏者の Gabriel Gomes が行っている。 最新作では Gomes 自身もゲストとして演奏に加わっている。 以前に1990年代の2枚のアルバムをまとめたCD Travessa De Espera を入手してとても気に入っていたのだが、 最近になってやっと豪華なゲストが参加した最新作を入手することができたので、 併せて紹介。

何曲か伝承曲があるが、曲の多くはメンバーによる自作だ。 曲は folk/roots 色を感じる少々ノスタルジックな旋律をベースにしたもので、 それをゆったりとしたテンポで演奏する。 技巧的に歯切れよくフレーズを聴かせる曲もあるけれども、 柔らかく優しい accordion 4台の響きをゆったりめのリズムで絡み合わせながら、 音の間合いも生かしたテクスチャを組み上げていくという感じの展開が多い、 あまりアウトな演奏にはならないが、 リードを鳴らさずに空気が蛇腹から抜ける音を生かした曲もやったりしている。 accordion の鳴る音自体のテクスチャ感も生かした演奏がモダンに感じられる。 そこが、このアンサンブルの魅力だ。

1990年代の2枚のアルバムは入手困難になっているが (自分も未入手)、 それらを1枚にまとめた Travessa De Espera は、 そんな彼らの accordion の響きのみからなるミニマルな魅力を聴くのに良いアルバムだ。 ダウンテンポな3拍子の "No(c)turne Das 7" は、 音のテクスチャの中で回し揺られているような気持ちよさだ。 リードを鳴らさない音を高揚するような展開に生かした "Dança II" も 短いながらとても気に入っている曲だ。

一方、現時点での最新作 Pulsar では、 ポルトガルの folk/roots 〜 jazz/improv シーンで活躍する ミュージシャンたちを多くゲストに迎え、 accordion のみのミニマルな音作りとはまた異る面白さが楽しめる。

gaiteiro (bagpipe) のアンサンブル Gaiteiros De Lisboa を迎えた "Casa Do Rio" も、percussion (おそらく José Salueiro) や gaiteiro の音色も加わった avant folk な展開がかっこよい。 Gaiteiros De Lisboa だけでなく Clean Feed 界隈の jazz/improv 文脈でも活躍する Salgueiro の drums と António Augusto Aguiar の doublebass のリズム隊が、 少々 jazz 的な下支えをする "La Danse Idéale" も良い。

また、Rui Júnior による darbuka 風の乾いた hand drum がリズムを刻む "Sirocco" や、 シリア (Syria) 出身でフランス (France) を拠点に活動する歌手 / percussion 奏者 Abed Azrié をフィーチャーした "Alchemie" などの、 Arabic な展開の曲も悪くない。

しかし、中でも最も気に入った曲は、jazz/improv の文脈で活動する女性歌手 Maria João をフィーチャーした "Fantasia"。 saxophone 4tet である Saxofour と共演した作品 (レビュー) でも思ったことだが、 João の華のある個性的な声でのスキャットや抽象的なヴォイシングは、 少々変則的なアンサンブルに映えるように思う。 1曲といわず、この組み合わせでアルバムを作成して欲しいと思う程だ。

CDのリリースが多くないうえ若干入手が難しいのが難ではあるが、 ミニマルな accordion のアンサンブルと 様々なミュージシャンとの共演の両面で、今後の活動を期待したい。