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Review: Young Marble Giants, Colossal Youth & Collected Works
2007/09/09
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(Domino, REWIGCD32X, 2007, 3CD)
CD1: 1)Searching For Mr Right 2)Include Me Out 3)The Taxi 4)Eating Noddemix 5)Constantly Changing 6)N.I.T.A. 7)Colossal Youth 8)Music For Evenings 9)The Man Amplifier 10)Choci Loni 11)Wurlitzer Jukebox 12)Salad Days 13)Credit In The Straight World 14)Brand - New - Life 15)Wind In The Rigging CD2: 1)This Way 2)Posed By Models 3)The Clock 4)Clicktalk 5)Zebra Trucks 6)Sporting Life 7)Final Day 8)Radio Silents 9)Cakewalking 10)Ode To Booker T 11)Have Your Toupee Ready 12)N.I.T.A. 13)Brand - New - Life 14)Zebra Trucks 15)Choci Loni 16)Wind In The Rigging 17)The Man Shares His Meal With His Beast 18)The Taxi 19)Constantly Changing 20)Music For Evenings 21)Credit In The Straight World 22)Eating Noddemix 23)Ode To Booker T 24)Radio Silents 25)Hayman 26)Loop The Loop CD3: 1)Searching For Mr Right 2)Brand - New - Life 3)Final Day 4)N.I.T.A. 5)Posed By Models
CD1) Originally released as Colossal Youth (Rough Trade, ROUGH8, 1980, LP).
CD2:1-6) Originally released as Testcard EP (Rough Trade, RT059, 1981, 7″).
CD2:7-9) Originally released as Final Day (Rough Trade, RT043, 1980, 7″).
CD2:10) Taken from the compilation Is The War Over? (Z-Block, 1979, LP).
CD2:11-25) Taken from the demo casette Colossal Youth (self published, 1979, casette).
CD3) Recorded for the John Peel Show on BBC Radio 1. First transmitted on 1980/9/26.
CD1+CD2:1-6) Reissued as Colossal Youth (Rough Trade, ROUGH LCD8, 1990, CD).
CD1+CD2:1-10) Reissued as Colossal Youth (Les Disques Du Crepescule, TWI984-2, 1994, CD).
CD2:11-26) Previously released as Salad Days (Vinyl Japan, ASKCD113, 2000, CD).
CD3) Previously released as Peel Sessions (Strange Fruit / WMD, 672025, 1991, CD).
CD1) Produced and arranged by Young Marble Giants and Dave Anderson.
Alison Statton (voice), Philip Moxham (bass), Stuart Moxham (guitar, organ); Dave Dearnale (naive slide) on CD1:2.

1978年にウェールズのカーディフ (Cardiff, Wales, UK) で結成された post-punk の文脈で活動したグループ Young Marble Giants が残した音源を ほぼ網羅したアンソロジーがリリースされた。 初回限定は3枚組、通常版はCD1とCD2の2枚組だ。 未発表音源は含まれていないが、32ページのブックレットも充実しており、 リバイバルの文脈の中で音楽様式を表す言葉になってしまった post-punk とは異るが、 post-punk の音作りの一典型を捉えたアンソロジーに仕上がっている。

チープな音の rhythm box が刻むリズムに乗せて、 リードを取るかのように Philip Moxham が bass がフレーズを弾き、 軽く切り込むような guitar や緩い origan のフレーズが音を添える。 そういう拙さも感じる疎な演奏を背景に まるで街中を散策しながら口づさむように Alison が不安定な歌声で歌う (ちなみに、このようなコントロールが効いてない歌い方をする Statton を グループに入れることを Stuart は望んでいなかった)。 歌詞はミニマルで抽象的な印象を与えるものだ ("Nature intended the abstract" というか)。

「ロックは楽器が演奏できる人より演奏できない人の方が実際にうまくやれる唯一の様式である」 (rock is the only form music which can actually be done better by people who can't play their instruments than by people who can) というのは、 Mekons, The Mekons Story (CNT Prod., 1981) のジャケットに引用された音楽ジャーナリスト (当時) Mary Harron (The Sex Pistols のインタビューを初めてアメリカ (US) の雑誌に載せたことで知られる; ⇒ en.wikipedia.org) の言葉だが、Young Marble Giants の音楽は、まさに 「楽器が演奏できる人より演奏できない人の方が実際にうまくやれる様式」の音楽だ。 (Young Marble Giants だけでなく、The Raincoats や Swell Maps など、 初期の Rough Trade は 「楽器が演奏できる人より演奏できない人の方が実際にうまくやれる様式」 を多くリリースするレーベルだったとも言えるだろう。)

といっても、さすがに demo 音源である Salad Days は、 Rough Trade からリリースされた LP や single の音源はもちろん、 Peel Session 音源と比べても聴き劣りするのもの。 Rough Trade からリリースされることの無かった曲も含まれ、 興味深いけれども、熱心なファン向けであることは否めない。 そういう点では、Rough Trade のLPと single の音源をコンパクトに1枚にまとめた 1994年の Les Disques Du Crepuscule のリイシューの方が一般向けだったと思う。 しかし、今回のリイシューも3枚 (2枚) 組で1枚相当の廉価で売られている。 Salad Days からのトラックも、おまけと考えればむしろ有り難い程だ。 Peel Sessions も、 1991年のCD化はフランス配給盤のみで流通も限られていた。 今回のリイシューで限定盤のみのオマケにせずに通常盤にも収録して欲しかった。

32ページのブックレットには、post-punk 歴史本 Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) (関連発言) の著者として知られる Simon Reynolds が、Young Marble Giants の伝記のような長いテキストを載せている。 もちろん、録音のクレジットや、歌詞も載せている。 写真・図版も多くとても資料的価値の高い丁寧な作りだ。 これで、Les Disques Du Crepuscule からのリイシューCDのブックレットに載っていた、 Stuart Moxham のインタビューが再掲されていたら、申し分なかったのだが。

この Simon Reynolds のテキストで、 Colossal Youth のプロデュースをした Dave Anderson が、 1970年前後に Amon Düül II 〜 Hawkwind で bass を弾いていたことを知った。 Dave Anderson は Foel Studio で 録音されたいくつかの初期 Rough Trade 音源にプロデューサ/エンジニアとしてクレジットされており、 スタジオ・エンジニアなのだろうと思っていたが、 ex-Amon Düül II 〜 Hawkwind というのは音楽性からして意外だった。