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Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 について

Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 に関する発言です。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 古い発言ではリンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。

[1199] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Mar 31 0:34:32 2005

雑誌 The Wire, No.253 (April 2005) が届いたのでさっそくパラパラと捲っていたところ、"Print Run" 欄 (書評欄) で Simon Reynolds の新著 Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) が取り上げられているのに気付きました。をー。3年近く前に談話室に "Independents Day: Post-Punk 1979-1981" (2001) の読書メモ(?)を書いて以来、 本になるのを待ち続けていたんですが、やっと出るんですね (2005/4/21発行)。 ちなみに、書評者は The Wire 誌 Editor-at-Large の Rob Young。 "Reynolds is the Northrop Frye of music criticism -- his most effective mode is the anatomy." って感じでベタ誉めしてます。批評の解剖ですかー。ふむふむ。 (参考までに、 3年近く前に談話室に書いた読書(?)メモを発掘して、 アーカイブに載せておきました。)

"Independents Day" に関するメモでは 「post-punk の動きが拡散して減衰していく1980年代前半くらいまで視野に入れてもいいように思ってしまいました」と書いたわけですが、 本では1984年までに対象を拡げています。それがどのように書かれているのかも楽しみです。 (書評者 Young はそれでもまだ "halfway" て言ってますけど。) あと、タイトルが Rip It Up And Start Again !! 思わず、♪ I hope to God you're not as dumb as you make out, I hope to God, I hope to God... って続けたくなります (Orange Juice, "Rip It Up", Rip It Up, 1982)。

ところで、Reynolds がブログにハマってる (he's taken so comfortably to the blog)、 と Young が書評で暴露してます (笑)。 それで、Reynolds がブログ blissblog を始めていることに気付きました。をー。 Friday, March 11, 2005 のエントリで 新著 Rip It Up And Star Again について触れています。 Scritti Politti の Green とのインタビューの話をしつつ、 「Rip It Up のウェブサイトを立ち上げて、彼との完全な会話録を載せるつもりです。 そのサイトに、さらなる会話録その他資料に加え、全ての章への脚註を少しずつ加えていくつもりです」 なんて言っています。凄い!!素晴しい!! post-punk 研究に欠かせない資料性の高いサイトが出来そうで、楽しみです。わくわく。

Young は The Wire の編集者、 Reynolds は The Wire の常連執筆者で今月号でも "The Primer: Grime" を執筆してます。 「ブログ更新してないで、原稿書け〜」みたいなやりとりが水面下でなされていたりするのだろうか、 と思わず想像してしまいました (はてなや mixi の読み過ぎ)。 ところで、Reynolds の Frye 的な資質がブログにハマってる理由だと、 Young は書評で指摘しています。うーむ。 自分のアプローチが Frye 的だというのは恐れ多いけど、 特に最近の中東欧や地中海の音楽をレビューする時に ジャンル批評的なアプローチを意識していたし、 そういうのを書き留めていくのにウェブサイトって便利だと思っていたので、 確かにそういう面もあるかもしれないなぁと思ったりしました。

ちなみに、Faber & Faber は、 Rip It Up And Start Again の出版に合わせたかのように、 Jon Savage, England's Dreaming (Faber & Faber, ISBN0-571-22720-1, 1991/2005) を新版で出すようです (2005/5/19発行)。 つべこべ言わず2冊併せて買えといわんばかりの勢いです。さすがだ。 2001年の 2nd ed. (ISBN0-571-20744-8) とは ページ数は同じですが値段は安くなって、表紙もISBNも違います。 これは 3rd ed. となるのでしょうか? 最新版では、パンク25年の遺産に焦点を当てたイントロダクション、 1996年の The Sex Pistols の評価、 総合的に更新されたディスコグラフィが収録されているそうです。気になります。 邦訳 『イングランド・ドリーミング』 (シンコー・ミュージック, 1995) の底本は 1st ed. だしなー、邦訳しか持ってないしなー、 これを機会に2冊併せて買っちゃおうかなー (出版社の思う壺)。

ところで、新著の「ある種の味見」として Reynolds がブログで薦めている Scritti Politti, Early (Rough Trade, RTRADCD188, 2005, CD)、 もちろん、入手済みです。最初期のシングル4タイトル Skank Bloc Bologna (St. Pancras, SCRIT1, 1978, 7″)、 2nd Peel Session (St. Pancras / Rough Trade, RT034, 1979, 7″)、 4 A Sides (St. Pancras / Rough Trade, RT027, 1978, 12″)、 The Sweetest Girl (Rough Trade, RT091, 1981, 7″) を収録したCDです。 Songs To Remember (Rough Trade, ROUGH20, 1982, LP) のグルーブ感の無いソフトな soul のような演奏と歌に比べて、 Gang Of Four ほどではないけどガチャガチャとエッジの立った guitar の音と dub 的な bass と hi hat に時代を感じます。 Josef K に似ているでしょうか。かなり好みの音です。 今まで入手困難な音源でしたし、CD化はとても嬉しいです。 けど、post-punk の導入としては、これいいのでしょうか……。

[1231] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Apr 20 0:25:27 2005

先日話題にした Simon Reynolds の新著 Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) に関連する話題です。 Reynolds のブログ blissblog の2005/04/15のエントリによると、 出版日4/28の前夜に、ロンドン (London) の The Boogaloo という所で、 出版記念イベントを行なうそうです。 Reynolds が座長のパネルデスカッションがあって、パネラーは、 Howard Devoto (Buzzcocks、Magazine)、 Paul Morley (音楽ジャーナリスト、Art Of Noise、ZTT レーベル)、 Gina Birch (The Raincoats)、 Richard Boon (Buzzcocks のマネージャー、New Hormones レーベル)。 さらに、パネルディスカッションの後、 New Order, The Fall, Cabaret Voltaire, The Pop Group, Magazine, P.I.L., Orange Juice といったバンドを捉えた60分のビデオの上映があるそうです。 なんと、入場は無料。ああ、行きたいなぁ……。 しかし、さすがにロンドンは無理です……。

あと、来年出版予定の Rip It Up And Start Again のUS版の 内容についても触れています。 4章削って2章を1章にまとめるなど、コンパクトになるようです。 しかし、単純に減らすだけでなくて、"Mutant Disco" の章はちゃんと書き直すようです。 くー。両方買わせようというつもりかと……。

[1239] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Apr 29 2:44:24 2005

度々話題にしてきた Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) が、届きました (フォトログ)。 ペーパーバックで608ページ、35mmの厚さになります。 Faber & Faber のサイトには目次が載っていないので、速報しておきます。

Illustations ix
Author's Note xii
Introduction xiii
Prologue: The Unfinished Revolution xvii
PART ONE: POST-PUNK
1 Public Image Belongs To Me: John Lydon and PiL 3
2 Outside Of Everything: Howard Devoto and Vic Godard 15
3 Uncontrollable Urge: the Industrial Grotesquerie of Pere Ubu and Deve 30
4 Contort Yourself: No Wave New York 50
5 Tribal Revival: The Pop Group and The Slits 73
6 Autonomy In The UK: Independent Labels and the DIY Movement 92
7 Militant Entertainment: Gang Of Four and the Leeds Scene 110
8 Art Attack: Talking Heads and Wire 129
9 Living for the Future: Cabaret Voltaire, The Human League and the Sheffield Scene 150
10 Just Step Sideways: The Fall, Joy Division and the Manchester Scene 173
11 Messthetics: The London Vanguard 198
12 Industrial Devolution: Throbbing Gristle's Music from the Death Factory 224
13 Freak Scene: Cabaret Noir and Theatre of Cruelty in Post-punk San Francisco 245
14 PiL and Post-punk's Peak and Fall 264
PART TWO: NEW POP AND NEW ROCK
15 Ghost Dance: 2-Tone and the Ska Resurrection 281
16 Sex Gang Children: Malcolm McLaren, the Pied Piper of Pantomime Pop 304
17 Electric Dreams: Synthpop 320
18 Fun'n'Frenzy: Postcard and the Sound of Young Scotland 343
19 Play to Win: The Pioneers of New Pop 361
20 Mutant Disco and Punk-Funk: Crosstown Traffic in Early Eighties New York (and Beyond...) 383
21 New Gold Dreams 81-82-83-84: The Peak and Fall of New Pop 403
22 Dark Things: Goth and the Return of Rock 420
23 Glory Boys: Liverpool, New Psychedelia and the Big Music 439
24 The Blasting Concept: Progressive Punk from SST Records to Mission of Burma 455
25 Conform to Deform: The Second-Wave Industrial Infiltrators 474
26 Raiding the Twentieth Century: ZTT and Frankiemania 491
Afterchapter 517
Appendix: MTV and the Second British Invasion 529
Bibliography 539
Post-punk timeline 545
Acknowledgements 555
Index 557

それから、本に載せられなかった以下の章が Faber & Faber のサイトのページ でPDF形式で公開されています。

DISCOGRAPHY: The Core Curriculum
DISCOGRAPHY PART TWO: Post-punk Esoterica

"The Core Curriculum" はアーティスト別レコードリストで26ページ、 "Post-punk Esoterica" はレコードを通してまとめた本の要約といった内容で58ページもあります。 章立てが Rip It Up And Start Again とは異なりますが、 "Post-punk Esoterica" を読めば、この本が扱っているおおよその範囲と 本のアウトラインがわかるようになっています。 あと、この本のフォローアップのサイト www.simonreynolds.net が準備中です。

Rip It Up And Start Again と併せて、Simon Reynolds の Energy Flash: A Journey through Rave Music and Dance Culture (Picador, ISBN0-330-35056-0, 1998) も買ってしまいました。これはUK版でコンピレーションCD付きです。 US版 Generation Ecstasy: Into the World of Techno and Rave Culture (Little Brown, 1998) はUK版から削られているところがあるうえCDも付いてませんので、UK版の方がお薦めです。 Energy Flash は528ページ厚さ40mmもあります。 ちなみに、この本の出版に合わせて、Reynolds は Perfect Sound Forever"Rave and Jungle on UK Pirate Radio" (June 1998) という記事を寄稿しています。Energy Flash の中でも取り上げている アンダーグラウンドなクラブ音楽に海賊ラジオが果たした役割についての記事です。

[1258] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sat May 7 3:23:21 2005

Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) は一気に読み終えられる代物でもないので、備忘録的な読書メモを付けておこうかと思います。 ちなみに、今はどこにどんなことが書かれていそうか、気になる章を飛び飛びに斜め読みしているような状態です。

本の構成は章ごとに比較的独立していて、 頭から順に読んでいないと話が通じないということは無いように思います (僕はミュージシャン等にある程度予備知識を持っているからかもしれませんが)。 今まで斜め読みした限り、批評というより歴史という面が強いせいか、 変な修辞を使わず比較的平易な英語で書かれているように思います。

この本においても、 punk のポピュリストと前衛との分離というのを基本的な構図としています。 音楽形式の革命を進めた前衛の側を post-punk としています。 ちなみに、ポピュリストの側はイギリス (UK) では Oi! へと、 アメリカ (US) では hardcore へと展開したとしています。 そして、Oi! や hardcore についてはこの本の範囲外としています。 また、post-punk のミュージシャンやレーベル関係者には アートスクールや大学出身者がそれなりの割合で含まれており、 労働者階級上層から中流階級下層のグレーエリアから出てきていると指摘しています。

ちなみに、post-punk なアートスクールバンドの典型として選ばれているのは、 アメリカ (US) の Talking Heads とイギリス (UK) の Wire です (第8章の "Art Attack: Talking Heads and Wire")。 David Byrne & Brian Eno, My Life In The Bush Of Ghosts (EG, 1981) と Dome, Dome 3 (Dome, 1981) の対比とか。 両方とも大好きなバンドですが、似た傾向を持つバンドだとは思わなかったので、 対比して書かれているのは興味深かったです。繋ぐ鍵は Brian Eno ですか。

そんなわけで、出身階級や学歴などの記述もけっこうあるのですが、 Wire の Bruce Gilbert は デビュー時 (1977年) に抽象画を書く画家をしながら Watford Art School で映像・音響の技官をしていて 31歳だった (p.142) ということを今更ながら知りました。そうだったのかー。 The Raincoats の Ana Da Silva は Dylan で学位論文を書いて語学の博士号を持っていて (had a doctorate in languages and a thesis on Dylan under her belt)、 結成時 (1979年) に27歳だった (p.213) というのは、もっと驚きでしたが。 あと、Factory レーベルの Anthony Wilson が Cambridge 卒だ (p.95) というのは知ってましたが、 Rough Trade レーベルの Geoff Travis もそうだった (p.103) のか〜。

post-punk な独立系レーベルとそれ以前の独立系レーベルの違いとしては、 資本と配給の面でもメジャーから独立しているということを挙げています (第6章 "Autonomy In The UK: Independent Labels and the DIY Movement")。 しかし、この場合の対比となるレーベルは Virgin、Island、Chrysalis です。 先行する独立系レーベルとして jazz / improv の Incus や British folk の Topic も挙がっていますが、 地域的な市場やニッチなジャンルのレーベルとして対比の相手としていないように思います。 Incus や Topic も資本や配給の面でもメジャーから独立していますから。 しかし、post-punk な独立系レーベルも、ニッチのように思うのですが。

[1272] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon May 16 23:20:04 2005

Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) 関連のメモ。 post punk リハビリ日記、というか。

まずは、地元イギリス (UK) での評判をクリップ。 The Observer (『オブザーバー』) 紙に 書評 (Ketty Empire, 2005/4/17) が出てました。 あと、The Gardian (『ガーディアン』) 紙の方にも 寸評 (2005/4/23) が出てます。 (ちなみに、The Gardian はイギリスの新聞で、三つの高級紙のうちの一つ。 The ObserverGardian の日曜版相当。)

The Gardian 紙の寸評で気付いたのですが、 Martin Lilleker, Beats Working For A Living: Sheffield Popular Music 1973-1984 (Juma, 2005) というシェフィールド (Sheffield) の音楽シーンに焦点を当てた本が出ているようです。 寸評によると Cabaret Voltaire や Human League といった post punk 関連だけでなく heavy metal 関連の Def Leppard も取り上げているようです。

これに関連して、シェフィールドの音楽シーンについて Made In Sheffield (Eve Wood (dir.), 2001) というドキュメンタリ映画 (レビュー, BBC South Yorkshire, 2002/09) が作られていたことを知りました。そして、そのDVD Made In Sheffield (Plexifilm, 017, 2005, DVD(NTSC/0)) もこの5月にリリースされるそうです。 登場するのは、Phil Oakey (The Human League), Martyn Ware (The Human League, Heaven 17), Ian Marsh (The Human Leauge, Heaven 17), Chris Watson (Cabaret Voltaire, The Hafler Trio), Stephen Singleton (ABC), Jarvis Cocker (Pulp), Joanne Catherall (The Human League), Susan Sully (The Human League)、 あと、John Peel のインタビューもあるそうです。 DVD版のパッケージとメニューのデザインは The Designers Republic

Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again でも シェフィールドのシーンに1章割いています (第9章の "Living for the Future: Cabaret Voltaire, The Human League and the Sheffield Scene")。 しかし、この章で触れられているバンドは The Human League, 2.3, Clock DVA, Cabaret Voltaire と限定的です。 分裂後の The Human League と Heaven 17、それに ABC は 本の後半、post punk ではなく new pop の文脈で、シェフィールドの地縁から離れて、 Trevor Horn やポップになってからの Scritti Politti と一緒に触れられています (第19章の "Play to Win: The Pioneers of New Pop")。

ちなみに、Made In Sheffield のUS版 DVD をリリースする Plexifilm はUSの独立系DVDレーベルですが、 ここのカタログはどれも興味深いです。 他には Space Is The Place (1974 / Plexifilm, 010, 2003, DVD) と Ilé Aiyé (1989 / Plexifilm, 016, 2004, DVD) しか持っていませんが、観る時間に余裕があったなら全部買い揃えてしまいそうなくらいです。

そんなわけで、The Human League の1stアルバム Reproduction (Virgin, V2133, 1979, LP) を発掘して聴いています。 久々に聴くとカッコいいなー。 synthesizer の音に1980s以降の electro 的なシャープさが無いとはいえ、 実は Phil Oakey の歌声が好きだったりします。く〜。 The Human League ってCDでは持っていなくて、アナログもこの1stと 独立系の Fast Product レーベル時代のシングルが収録されている Various Artists, The First Year Plan (Fast Product, F11, 1979, LP) しか持っていません (フォトログ)。 The Human League もCDで持っておきたくなってしまいました。 Made In Sheffield のDVDも欲しいように思います。 本 Beats Working For A Living は post punk 関連だけなら Rip It Up And Start Again で充分な気もしないでもないです。 しかし、いずれにせよ、積読積聴積観の山を消化してからです……。

[1276] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu May 19 21:57:49 2005

予告されていた Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) 関連記事を載せるサイトがオープンしました (Blissblog, 2005/05/18)。 まだほとんど内容が無いですけど、やはり5/18オープンを狙っていたのでしょうか。 あと、Blissblog からリンクされていて気付きましたが、 4/26 のトークショーのレポート "Rip It Up" (David Stubbs, Mr. Agreeable, 2005/5/10) があります。煙草もくもくでしたか。Shane McGowan (The Pogues) がいたって、 それはいつものことではないのかと。 Howard Devoto 代理で出た Jon King と Paul Morley の話が良かったようですね。ふむふむ。

[1287] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed May 25 0:12:33 2005

一週間余り前に The Human League のを書いていた時に 発掘して聴いたレコードに、 Various Artists, The First Year Plan (Fast Product, F11 / EMI, EMC3312, 1979, LP) というアルバムがありました (フォトログ)。 これは、独立系レーベル Fast Product が最初の1年間 (1978年) にリリースした 6枚のシングルの音源を集めたアルバムです。

Fast Product は1978年にスコットランドのエジンバラ (Edinburgh, Scotland) で Bob Last が作った独立系レーベルでした。 しかし、最初の1年にリリースしたバンドのうちスコットランドのバンドは The Scars のみ、 Mekons と Gang Of Four はリーズ (Leeds) のシーンから、 The Human League と 2.3 はシェフィールド (Sheffield) のシーンから出てきたバンドです。 後の Postcard レーベルのようなスコットランドのローカルシーンを紹介する レーベルではありませんでした。 残念ながら持っていないのですが、 Various Artists, Earcom 2 (Fast Product, FAST9, 1979, 12″) には Joy Division が2曲 "Autosuggestion" と "From Safety To Where...?" を提供しています。 短命でリリースの少ない割に、Mekons や Gang Of Four、The Human League に Joy Division と 注目に値するバンドの音源を多くリリースしていたわけです。

The matador is saying, 'You know, we're both in the entertainment business, we have to give the audience what they want. I don't want to do this, but I earn double the amount I'd get if I were in a 9-to-5 job.' The bull is saying, 'I think that at some point we have to take responsibility for our actions.'
闘牛士曰く「わかってるだろうけど、我々はエンタテインメントを仕事にしているのだから、観衆の望むことを提供しなくちゃいけないだ。こんなことはしたくないけど、9時5時仕事の倍は稼げるしな」。雄牛曰く「ある点で我々は自分達がやることに責任を持たなくてはいけないと思うな」。(引用者訳)

というキャプションを付けた闘牛士の写真を載せた Gang Of Four のデビューシングル Damaged Goods (Fast Product, FAST5, 1978, 7″) のジャケットは Gang Of Four の歌詞のコンセプトを的確に表していましたし、 その手のコンセプトも秀逸なレーベルでした。

こんな独立系レーベル Fast Product について、 Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) は、第6章 "Autonomy In The UK: Independent Labels and the DIY Movement" の中で、 こんなエピソードと一緒に紹介しています (pp.94-97)。

'The first really arty, clever label was Fast Product,' says Tony Wilson, co-founder of Manchester independent Factory Records. 'A damn sight artier than us. If I could have put orange peel in a plastic bag and released it with a catalogue number, I would have been very proud.'
「最初の本当にアートっぽく気の利いたレーベルは Fast Product だった」とマンチェスターのインディ Factory Records の共同創設者 Tony Wilson は言う。「我々よりアートっぽい素晴しい視点があった。もし、私がオレンジピールをビニール袋に入れてカタログ番号を付けてリリースすることが出来ていたら、私はそれをとても誇りに思っただろう。」

Wilson が言う、ビニール袋にその手の物を入れたものカタログ番号を付けてリリースする、 ということをやったのが Fast Product だったのでした。 この本で知ったのですが、The Quarity Of Life (Fast Product, FAST3, 1978) というのがそれです。 さらに非売品で仮想的なプロモーション・グッズという SeXex (Fast Product, 1978) というものもあったそうです。 なるほど、Factory はイベントなどにもカタログ番号を付けていったわけですが (例えば、クラブ Hacienda は FAC51)、 それは Fast Product のやり方を受けたものだったのですね。

ちなみに、Fast Product を設立した Bob Last は建築科の学生をした後、 travelling theatre club (移動式劇団?) の技術スタッフ/デザイナをしていたそうです。 そして、まずは仮想的なブランドとして "Fast Product" を考え付き、 ロゴ等はデザインしたものの扱う物については特に考えていなかったそうです。 その後、Buzzcocks, Spiral Scratch (New Hormones, ORG-1, 1977, 7″) を手にして、 レコードをリリースすることに決めたそうです。 それでリリースしたのが Mekons や Gang Of Four、The Human League のデビューシングルだというのも凄いと思いますが、 そういう経緯で生まれたレーベルだからこそ彼らをリリースできたのかもしれないですね。

ちなみに、Simon Reynolds によると、Spiral Scratch は インディであることが実際の論点となった最初のレコードで、 その後のインディーズに多くの影響を与えた重要なレコードなのだそうです。 Spiral Scratch をリリースしたマンチェスターのレーベル New Hormones が エジンバラの Fast Product が設立されるきっかけを与え、 そんな Fast Product のリリースがまたマンチェスターの Factory に影響を与えたという 影響の連鎖も面白いです。

しかし、自分にとっては、Fast Product は 「短命ながら Mekons、Gang Of Four、The Human League をデビューさせ、 Joy Division もリリースするセンスの良さを持った エジンバラの伝説的な post punk レーベル」 程度の認識しか今まではなかったので、 ビニール袋の作品のエピソードなどとても興味深く読めました。 そういうレーベルということなら、 The First Year Plan を入手したことで満足なんかせずに、 1980年代のうちにもっと熱心にオリジナルのシングルを探しておけばよかったと、少し痛恨。 今から探すの大変そうだもんなぁ……。

[1294] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Jun 2 0:47:28 2005

post-punk リハビリ日記。 The Human League, Dear / Love And Dancing (1981-82; Virgin, CDVX2192, 2002, CD) を入手して聴きました。 これは、Dear (Virgin, V2192, 1981, LP) と その instrumental dance remix 集 The League Unlimited Orchestra, Love And Dancing (Virgin, OVED6, 1982, LP) を 2 on 1 でCD化した "21th Anniversary Edition" です。 オリジナル・メンバーは Martin Ware、Ian Marsh、Philip Oakey、Philip Adrian Wright の4人ですが、 Ware と Marsh が脱退して Heaven 17 を結成した後の Philip Oakey が中心となっての新生 The Human League の第1作です。 Joanne Catherall と Susanne Sulley の2人の女性歌手を加え euro disco 色を濃くし、 "electric Abba" と呼ばれるようなスタイルを確立したヒット作です。

DearLove And Dancing も、 リリース当時に借りてカセットテープに録音して聴いていましたが、 LPやCDで買い直すこともなくカセットも捨ててしまい、 こうして聴くのも10余年ぶりです。 "The Things That Dreams Are Made Of" や "Don't You Want Me" は名曲だとは 思いますが、通して聴くと、 やはりシンセサイザーの持続音で塗重ねるような使い方は好みではないと再確認。 初期の Depeche Mode や Yazoo のような、 細かく音を刻む感じや音の隙間を生かした音作りの方が、やはり良いなぁ、と。

しかし、その音の disco 色から快楽主義的な歌詞と思われがちな気もしますが、 Dear は歌詞が意外と面白いのです。 アメリカのロック評論家 Dave Marsh は当時こんなことを言っていました。

たとえば、ヒューマン・リーグやユーリズミックス(クラッシュまでは入れてもよいかもしれない)のようなしっかりとした考えをもっとブリティッシュ・グループの話す言葉でさえ、大部分のアメリカ人には理解不能になりつつある。(アメリカの教育ではほとんど身につけることが不可能な)社会主義の知識や、政治体系に関する系統だった考えかたの基礎がないかぎり、「スイート・ドリーム」のような歌にみられる遠まわしな表現や批判は耳を素通りするだけだ。
デイヴ・マーシュ「ロックンロール最前線」 (初出等不明; 『ロックンロール・コンフィデンシャル』 晶文社, 1988)

ここで具体的な曲が挙がっているのは Eurythmics, "Sweet Dreams" だけですが、 Marsh が念頭に置いていたのは、"Sweet Dreams" と同じような主題を歌った The Human League, "The Things That Dreams Are Made Of" や The Clash, "Lost In The Supermarket" のような反消費主義的な社会批判の歌ではないかと思います。

確かに "The Things That Dreams Are Made Of" の歌詞もいいのですが、 僕はヒット曲 "Don't You Want Me" の歌詞が Dear の中では最も好きだったりします。 この歌は、男性歌手の Oakey が水商売をやっていた女性をスターに拾いあげた男という役で、 女性歌手の Sulley が拾いあげられた女という役で、デュエットするものです。 Oakey の演じる男は、相手の女性に別れをほのめかされたようで、 「今のおまえがいるのはおれのおかげだということを忘れるな / いつでも元の水商売に戻せるんだぞ」と前半の歌詞で言い (というか歌い) ます。 それに対して後半の歌詞で、Sulley 演じる女性は 「あなたがいてもいなくても遅かれ早かれあそこより良い所を見付けてたわ / 今、自分自身の人生を生きるべき時が来たと感じるの」と歌い返すのです。 "Don't you want me, baby?" と繰り返されるコーラスは、Sulley の歌の後では、 恋愛感情による切実に相手を求める気持ちというより勘違い男のたわごとという感じで、 Oakey が心を込めて繰り返すほどに情けないものになっていくところが、 この歌詞の面白さだと思います。

"Don't You Want Me" は男女関係と支配に関するちょっとした風刺劇的なデュエット曲なわけですが、 そういう歌で僕が連想するのは、 恋愛と暴力の社会機構を女性歌手 Sarah Lee と男性歌手 Jon Gill の掛け合いで歌った Gang Of Four, "I Love A Man In A Uniform" です。 風刺の辛辣さでは Gang Of Four の方が上ですが。 "The Things That Dreams Are Made Of" のような反消費主義的な歌に "We Live As We Dream Alone" がありますし、 Gang Of Four, Songs Of The Free (EMI, 1982) と The Human League, Dear の歌詞の世界観、政治観はかなり近いものです。 性 (男女関係)、政治 (暴力やミクロな支配)、経済 (消費生活) の三題話的な歌詞というのは 当時の post-punk の流行だったとも思いますが、 The Human League がインディーズ時代 Gang Of Four や Mekons と同じ Fast Product のレーベルメイトで、 Dear の時点でも Fast Product の Bob Last (関連発言) がマネージャをやっていたことを考えると、 歌詞に共通する所が多いのもさもありなん、とも思います。 それでも、Gang Of Four や Mekons が先鋭的な左翼バンドと見なされる一方、 The Human League が "electric Abba" と見なされるというのは、 Marsh が指摘するような「社会主義の知識や、政治体系に関する系統だった考えかたの基礎がないかぎり、(中略)遠まわしな表現や批判は耳を素通りするだけ」ということだけでなく、 ポピュラー音楽におけるサウンドやファッションの力の大きさを物語っているようにも思います。

The Human League は Dear の後も レバノン内戦を歌った "The Lebanon" (1984) のようなシングルをリリースして、 「社会派」的な面を残してはいましたが、 やはり "electric Abba" の軛に囚われたかのように 普通の pop バンドになって行ったというのも否めません。 そういう点でも、The Human League, Dear は絶妙なバランスの上で成立した 稀有な作品だったのかもしれないなぁ、と、 "The Things That Dreams Are Made Of" や "Don't You Want Me" を聴きながら 思ったりしました。

ちなみに、Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) では、The Human League, Dear について 第17章 "Electric Dreams: Synthpop" の中で 6ページ使って制作の経緯などの話をしています。 "I Am The Law" は The Clash, "I Fought The Law" を受けての歌だったのかー。 Oakey と Sulley が実生活でのカップルだったということを知ると、 "Don't You Want Me" でのデュエットはますます味わい深いというか……。

[1554] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Feb 22 23:52:45 2006

イギリス (UK) の音楽評論家 Simon Reynolds への インタビュー記事 (w/ Wilson Neate) と、 Simon Reynolds の記事 "It Came from London: A virtual tour of Post-punk's roots" (originally published in Time Out London, April 2005) が、 オンライン音楽誌 Perfect Sound Forever の 最新号 (Feb/Mar 2006) に掲載されています。 ちなみに、Reynolds は、去年4月に Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) を出版 (関連発言)。 Perfect Sound Forever の記事は、この本に関するものになっています。

インタビュー記事では、 Rip It Up のもともとのアイデアは "punk diaspora" だったと言っています。 goth とか anarcho punk、Oi! とかも含め grunge までを描くという。 grunge の1992〜94年くらいを区切りとしてそこまで書く、 というのは判らないではないですし、そういう内容で読んでみたかった気もしますが、 今の3倍以上の長さになりそうです……。

最近の post-punk revival について、「新しいことやってるバンドもいるけど、 そういうバンドは post-punk とほとんど関係ない」し、 「実際のところ、少からずのバンドは実は新しいことは何もやってない」と 言っていたり。 あと、art rock の伝統と post-punk の連続性について具体的に語っている所も興味深いです (Rip It Up では、prologue で軽く語っている (pp.xx-xxi) だけなので)。

しかし、最も興味深かったのは、 当時のサッチャリズム (Thatcherism) の抑圧と post-punk の関係を問われた所。 ここで Reynolds はこう言っています。

当時の音楽には、これ (訳者注:サッチャリズム) に抵抗するエネルギーが充ちていたというなら、 それは全て究極的には失敗に終わったともいえる。 それは何も変えなかったし、続きもしなかった。 そして、人々の中にあるその失敗の記憶が、 現在人々がそういったことを避ける理由の一部になっているのかもしれない。
As much as I say there was all this oppositional energy in music then, it all ultimately failed. It didn't change anything and it didn't last, so maybe the folk memory of the failures is part of what disinclines people from doing it now.

確かに、この手の歌を「状況を変える」という点から評価したら、 否定的にならざるを得ないように思います。 自分も、ちょうど1年余り前に、post-punk 期の歌の中には 《社会的弱者》に転落していく若者の心情を歌ったものがかなりあるという をしたときに、 「そういうことを歌うことがよいことだとは必ずしも思っていませんし、社会的な実効性についても本当に《社会的弱者》に転落してしまった若者たちにメッセージが届いたかどうかはかなり怪しいところがあるとは思います」 と書きましたし。 ところで、この1年余り前の話で、具体例として Robert Wyatt, "Shipbuilding" や Billy Bragg の歌詞に触れたわけですが、Simon Reynolds も同じ例に触れています。

長い間、僕はプロテスト・ソングを演ることは意味がないと思う人間の一人だった。 そこにはいつもジレンマがある。 Robert Wyatt の "Shipbuilding" のようなものがあり、それは一つのやり方だ。 この歌はとても良くできた歌だけれど、おそらく判りづらい表現に過ぎるだろう。 もしくは Tom Robinson や Billy Bragg のような他のやり方もある。 僕は Billy Bragg にちょっと意地悪なことを言っているのかもしれないが。 彼の歌も、比較的判りづらいものだろう。 彼は鈍いプロテスト歌手のようなものではなく、彼の歌はとても賢いものだ。 そして、それは、Phil Ochs に類する事の手本だ。
For a long time, I was one of those people who thought, oh, there's no point in doing a protest song. There's always a dilemma. There's something like Robert Wyatt's "Shipbuilding" and that's one way of doing it. That's a very clever song but possibly too subtle. Or you do it the other way, the Tom Robinson way or the Billy Bragg way -- I'm probably being a bit mean to Billy Bragg. His songs are probably relatively subtle. He's not like a crass protest singer, his songs are quite smart. But it is that model of a Phil Ochs sort of thing.

そうかー、Robert Wyatt, "Shipbuilding" や Billy Bragg の歌詞も、 やはり "subtle" なものだったのだなぁ。まあ、そうかもしれないなぁ。 post-punk の政治的な歌詞が難解で一般の人に理解されていないという批判は、 1980年代から主にポピュリスト的な文脈 (例えば Dave Marsh とか) から さんざんされていることではあります (関連発言)。 自分も、実際に社会を変える歌としてのプロテスト・ソングのようなものを 必ずしも信じていない、というのはあります。 Reynolds の場合と違い、僕にとっては Bragg はとても好きな歌手ですが、 プロテスト歌手として好きかというとやはり違いますし (関連発言)。

しかし、Reynolds のインタビューを読んでいると、 逆の意味で、社会を変えるという点に拘り過ぎているのではないかなぁ、と思う所もあります。 (そして、post-punk revival を否定的に語る際の "new" への拘りも、それと同根かなぁ、と思ったり。) 表現の契機に (そして聴き手の受容の契機) としての時事問題 (そして、それが歌となったトピカル・ソング) というのは それはそれとしてアリだと、僕は思っています。 それに、当時、Greil Marcus が指摘したように、 post-punk における政治性はプロテスト・ソングとはちょっと違ったようにも思っています。

地平を切り開く爆発、そして失敗に終わる反逆でもある爆発は、政治運動としての芸術、 世の中を変える動因としての芸術というのは幻想であるということをはっきりさせるし、 それにまた、その爆発が可能にした新しい種類の自由をつかんでいる者たちに、 芸術は芸術として興味深いもの、有効なもの、持続性のあるものであるためには 政治運動化されなくてはならないということを納得させもする。
ポストパンクの場合には、それは、芸術は抗議とか扇動という形をとるべきだということを意味するようにはならなかった。 それとは逆に近いことを意味するようになった。 つまり、「ノイエ・ザッハリッヒカイト」の抱負を説明したロバート・ヒューズの言葉を借りれば、 新しい音楽は「模範的演説」として作用すべきだということを意味するようになっている。
それがいま起きていることであり、それがポストパンク・レコードがこんなにも生き生きとしている理由だ。
グリール・マーカス「ダダとパンクとポストパンク」 (1981; 『ロックの「新しい波」』, pp.109-112, 晶文社, 1984)

もちろん、自分の場合、Reynolds がインタビューで言及しているような ベネフィットなどの活動の実際を自分は直接知らないことが、 post-punk の歌詞はプロテスト・ソングとはちょっと違うという印象を強く持っている 一因なのかもしれない、と思うところもあったりします。

[1592] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Mar 28 23:07:38 2006

Simon Reynolds の blissblog の Thursday, March 23, 2006 のエントリより。

ニューヨーク (New York, NY, USA) の Grey Art Gallery & The Fales Library, NYU (New York University) で、 The Downtown Show: The New York Art Scene 1974-1984 という展覧会をやっています (4/1まで)。 展覧会自体も興味深いのですが、これに関連して 3/28に Simon Reynolds が Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005) (関連発言) のサイン会と称して講演をするそうです。内容は "postpunk New York and the synergy between the downtown art world and the No Wave/mutant disco scene"。 聴きたいなぁ。講演録がどこかのウェブサイトに載らないかしらん。

また、Reynolds は関わっていないようですが、 3/31 には "Nightclubbing -- Greatist Hits, 1975-1980" と題した 当時の Downtown の音楽シーンのライヴ映像の上映会もあるようです。 これも観たいなぁ……。DVDとかにならないかしらん。

さらに、The Downtown ShowPlaylist が公開されています。このリストが、また、とても興味深いです。 現代音楽はもちろん、 Reynolds の講演に対応する postpunk な rock/pop だけではなく、 Art Ensemble Of Chicago, Anthony Braxton, David Murray といった loft jazz シーンを意識した曲もちゃんと含まれているのが、いい感じです。 iTunes からMP3をダウンロードできるようにもなっているようです。 iTunes を使っていないので、今のところ聴かれません。残念。

こういう展覧会も日本にまで巡回してこないかしらん……。 仮に日本に回ってきたとしても、 その時点で音楽関連は抜け落ちてそうな気もしますが……。

[1769] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Nov 1 0:39:24 2006

Nouvelle Vague による "Let Me Go" のカヴァー (Bande A Part (Peacefrog, PFG079CDLTD, 2006, CD) 所収。 レビュー) がけっこうツボにはまったので、その勢いで、 今年にボーナス・トラック入りでリマスター再発された Heaven 17 (⇒ Wikipedia) の2タイトル Penthouse And Pavement (1981; Virgin, CDVR2206, 2006, CD) と The Luxury Gap (1983; Virgin, CDVR2253, 2006, CD) を買ってしまいました。 (ちなみに、Heaven 17 は1970年代末にシェフィールド (Sheffield, UK) から出てきた synth pop グループ The Human League から分かれて結成されたグループです。)

Heaven 17 を聴いていたのは中学高校時代。 図書館で借りてテープで録音して聴いていたものの、 そのままLPも再発CDも買わずにいたので、聴くのも15〜20年ぶり。 な、懐かしい……(遠い目)。 Depeche Mode, Yazoo や Colourbox の方が好み、と当時も思っていましたし、 今回聴き直してもそれは変りませんでしたが。 それでも、"(We Don't Need This) Fascist Groove Thang" のような曲は、 やっぱりカッコいいなぁ、と。 あと、Penthouse And Pavement のボーナス・トラックに入ってる Buzzcocks, "Are Everything" のカヴァーのちょっとアウトな感じも、かなりツボ。 "Let Me Go" (The Luxury Gap 所収) のオリジナルも やはり良い曲だったなと再確認しました。

しかし、この再発で一番興味深かったのは解説でした。 ちなみに、Heaven 17 再発2タイトルの解説を書いている John Gill というのは、 初期 The Human League 時代、Fast Product (関連発言) でレーベル・メイトだったリーズ (Leeds, UK) のグループ Mekons の John Gill だと思います。 解説はリリースされた年の政治状勢から話を起こしています。 例えば、Penthouse And Pavement がリリースされた1981年は、 Ronald Regan が Jimmy Carter に代わりアメリカ大統領になり、 Madrid, Spain でクーデター未遂があり、 IRA の Bobby Sand がハンガーストライキで死亡し、 Argentine (sic。正しくは Chile の) Augusto Pinochet が大統領3期目に入った年、 という感じです。 明らかに左翼的だった Mekons のメンバーらしい書き出しだと思う一方、 そういう解説が必要なことを Heaven 17 は歌っていたのだと気付かされました。

John Gill の "Luxury Gap - a very H17 conceit (cf. 'Penthouse and Pavement') on the haves/have-nots divide" という 解説での指摘で今さらながら気付いたのですが、Heaven 17 の歌詞のテーマは格差社会です。 それも、昔ながらの階級社会というよりも、 新自由主義的な Thatcher 政権 (1979年成立) を意識したものです。 Penthouse And Pavement というのは、 高級マンション (ペントハウス) に住む者と路上 (ペイヴメント) に生きる者、というか、 今の日本に例えれば「ヒルズ族とワーキングプア」とでもいうタイトルなのです。 そして、The Luxury Gap というのは、まさにその二者の間の格差。 それを意識して Penthouse And Pavement のジャケットの絵 (⇒ Amazon.co.uk) を見直すと、 勝ち組企業で働くエリート・ビジネスマンを描いたものだと気付かされます。 そして、Heaven 17 の Martyn Ware と Ian Craig Marsh によるプロジェクト名 B.E.F. (British Electric Foundation) が 会社名のようにジャケットにあしらわれ、 "The New Partnership - That's opening doors all over the world" という企業のモットーのような謳い文句も書かれています。 Penthouse And Pavement のジャケットは、 勝ち組企業のPRパンフレットのパロディになっているのです。 もちろん、Heaven 17 の歌詞の対象は大西洋の向こう側にも及んでいて、 Penthouse And Pavement のオープニングを飾る "(We Don't Need This) Fascist Groove Thang" では、 「民主党は力を失い / その大きく広い海の向こうでは / レーガンが大統領に選ばれ / ファシストの神が動き出す」 と歌っています。 そんなわけで、現在の日本の状況を思い浮かべながら聴くと、 それなりに味わい深いアルバムです。

Heaven 17 に限らず、この頃の post-punk / new wave の歌詞には、 まるで現在の日本の状況を歌っているかのようなものが多いです。 The Smiths だけでなく当時日本で「ネオアコ」と呼ばれたようなバンドの多くが、 若年失業などで《社会的弱者》に転落していく若者の心情を歌っていましたし。 The Smiths, "Still Ill" の歌詞について書いたときにも、 「日本の現在であるかのような風景が UK Post-Punk の音楽の向うに見える」と書いたわけですが。

といっても、今だからこういったことを理解できるわけで、 中学高校時代 (1980-1985) は、Penthouse And Pavement のジャケットの エリート・ビジネスマンを描いたジャケットに、ダサさというか、 New Romantics に近い反動を感じていたものでした。 当時は例えば Gang Of Four のようなグループが 何を歌っているかもよく理解できていませんでしたし。 そして、大学に進学して、それなりに知識が付き、 Greil Marcus とかを読むようになり、 Gang Of Four のようなグループが歌っている歌詞が理解できるようになった頃には、 既に Heaven 17 は聴かなくなっていたのでした……。

ちなみに、この話に関連する話ですが、The Human League の歌詞について 1年余り前に談話室に書いています。 興味ある方は、そちらもどうぞ。