1960年代から Studio One に録音を残し、 1990年代以降も Massive Attack をはじめ reggae に限らない活動を続ける ジャマイカ (Jamaica) 出身の歌手 Horace Andy が1978年に残した アルバムがボーナストラック付きで再発されている。 アンソロジー Feel Good All Over: Anthology 1970-1976 (Trojan, TJDDD037, 2002, 2CD) の直後、 roots 期の彼の名作 In The Light (Hungry Town, 1977; Blood And Fire, BAFCD006, CD, 1995) とほぼ同時代の録音だ (関連レビュー)。
スタジオ、エンジニアの起用が Bunny Lee と被る Tapper Zukie 制作ということで、 その音は Bunny Lee 時代の延長といえる。 Horace Andy の "sleepy" な歌声は Bunny Lee / King Tubby 的なすっきりした dubwize な音に合う。 もちろん、1970年代後半ということでサウンドは Feel Good All Over よりもぐっと重め。 クレジットに明記されていないが、おそらく トラックは The Revolutionaries による演奏で Channel One で録音されている。 その重くタイトなサウンドに "Freedom"、"This Must Be Hell" や "(Stop Your) Brutality" のようなコンシャスな歌詞が乗るのが、実にカッコよい。
制作の Tapper Zukie は比較的臆面も無く有名なトラックを使うように思うのだが、 それもこのアルバムのキャッチの良さになっているし、 US制作で若干 SSW 的な色のある同時代の In The Light との違いだ。 例えば、タイトル曲 "Natty Dread A Weh She Want" は Alton Ellis, "Hurting Me"、 "Freedom" は Tapper Zukie, "Sensimelia"、 "This Must Be Hell" は Dave Brubeck, "Take Five" で、 "(Stop Your) Brutality" は Ebony Sisters, "Let Me Tell You Boy" だ。
このCDリイシューの嬉しいところは、アルバム収録曲の12″ mix を多く収録していること。 dub ではなく DJ の talk over が繋がるものもあるのだが、 コンシャスな曲の場合はその方が緊張感が高まって良い。 特に Tapper Zukie の DJ の繋がる "Ragga Muffet" がかっこいい。 ただ、17,18曲目が Tapper Zukie 制作とはいえ1984年録音のもので、 他のトラックと明らかにサウンドが異なる。 統一感という点でこのアルバムのボーナストラックとする必然性を感じないものだ。
同時代の In The Light よりもジャマイカ流儀の制作なので、 In The Light の rock っぽさが苦手だった人であれば、 1970s 後半 roots 期の Horace Andy の作品としては In The Light よりお薦めだ。
Natty Dread A Weh She Want を制作した Tapper Zukie が ほぼ同時期にリリースした dub のアルバムも、ボーナストラック付きでリイシューされている。 同時期の制作ということで音作りはほぼ同じだ。 演奏は Channel One の The Revolutionaries、 dub の mix は King Tubby のスタジオで Prince Jammy によって行われている。 1970年代後半の King Tubby 一門ならではの、 ヘビーながらすっきり切れ味の良い dub が楽しめる。
もちろん、Horace Andy, Natty Dread A Weh She Want に収録された曲、 もしくは同じトラックの dub が多く含まれている。 "Population Dub" は "This Must Be Hell" (Dave Brubeck, "Take Five") の、 "King Alpha In School" は "(Stop Your) Brutality" (Ebony Sisters, "Let Me Tell You Boy") の、 "Experience Dub" は "Natty Dread A Weh She Want" (Alton Ellis, "Hurting Me") の dub だ。 またボーナストラック中の "Sensimelia Dub" は "Freedom" (Tapper Zukie, "Sensimelia") の dub とも言える。 In The Light に対する In The Light Dub のような完全に対応する dub アルバムではないが、 Natty Dread A Weh She Want の dub アルバムとして併せて楽しむのも良いだろう。