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Review: The Thing with Jim O'Rourke (live) @ Pit Inn, Shinjuku, Tokyo
2007/10/01
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
The Thing with Jim O'Rourke
Pit Inn, 新宿
2007/10/01, 20:00-22:30
The Thing: Mats Gustafsson (baritone & alto saxophones), Ingebrigt Håker Flaten (contrabass), Paal Nilssen-Love (drums); guest: Jim O'Rourke (guitar).

The Thing は、スウェーデン (Sweden) の saxophone 奏者 Gustafsson が、 ノルウェー (Norway) のリズム隊 Flaten & Nilssen-Love と組んだ free jazz trio だ。 Flaten & Nilssen-Love のリズム隊は今までも何回か来日している (八木 美知依 とのトリオ (2004, SuperDeluxe) のレビュー)。 Mats Gustafsson も何回か来日しているがライブを観るのは初めて。 10月1日のライブでは Jim O'Rourke (ex-Gastr Del Sol, Sonic Youth) がゲストで参加した。 O'Rourke は Gustafsson、Thurston Moore (Sonic Youth) と Diskaholics Anonymous Trio というグループもやっており、 このライブでも The Thing のレギュラーかのような演奏をしていた。

The Thing といえば、PJ Harvey や White Stripes、Yeah Yeah Yeahs といった alt/indie rock のグループの曲をレパトリーにしているというのも一つのウリだが、 今回のライブでは rock 的な曲を演ったのは前半の中程で少しだけ、 強い音を浴びせ合う展開の多い free jazz 色濃いライブだった。 saxophone の Gustafsson は曲の出だしこそ旋律らしきものを吹くが、 音が大きくなっていくにつれて、 1ブレスの間音程を変えないか変えても少し装飾を加える程度。 そんなこともあって、爆音 saxophone の音のテクスチャを聴いているよう。 対する Jim O'Rourke は semi-acoustic guitar を使い、 少し高めの鋭角な音でカリカリと細かくフレーズを弾く所から始まり、 次第にエフェクトが大きくなりフレーズというよりノイズに近い音になっていく。 そんな2人の演奏を Nilssen-Love と Flaten が手数の多い演奏で煽っていた。

もちろん、常に爆音というわけではなく、曲の出だしや終り近くでは繊細な音出しもする。 しかし、互いのフレーズの間合いを生かしたり、 刻むリズムの変化で時間軸が伸縮するような感じを作り出すわけではない。 むしろ、音の強弱そのものでニュアンスを変化させていく、というか、 音のテクスチャの濃淡で表現していくような印象さえ受けた。 そういう点が興味深く感じた一方で、若干展開が単調に感じてしまった所かもしれない。 アンコール直前がライブの中でも最も繊細な展開だったり、 アンコールも最後は静かめな展開で終えたり、と、 アンチクライマックスな強弱の変化を付けていたのも、面白かった。