約1年前にトルコのイスタンブール (Istanbul, TR) の underground シーンを紹介する コンピレーション Beyond Istanbul: Undergound Grooves Of Turkey (Trikont, US0355, 2006, CD) (レビュー) をリリースした ドイツ (Deutschland / Germany) のレーベル Trikont が、 今度は、ドイツに住むトルコ系のミュージシャンをコンピレーションをリリースした。 選曲は同じく DJ İpek İpekçioğlu (aka Ipek Ipekcioglu) で、 イスタンブールのシーンのドイツでの対応物を取り上げたかのような内容だ。
ここでのトルコ系というのは、民族としてのそれではなく、 国としてのトルコを出身地のルーツとして持つという意味だ。 Hülya はアゼルバイジャン系 (Azeri)、 Beser Şahin と Nûrê & Nûbun はクルド系 (Kurdish) だ。 ドイツにおいてもトルコ系移民は民族によって住み分けがあり、 トルコ南東部の情勢によっては ドイツ国内でも (民族としての) トルコ系とクルド系の移民が衝突することもあるが、 そういった民族によらずトルコ系移民やその二世による音楽を取り上げるというのが DJ İpek のスタイルという。
選曲は音楽性の多様性も意識したもののようで、 Sender Freie Rakete、Stoneheads や Grup Ünlü のような rock もあるし、 Hülya、Nûrê & Nûbun、Bremen Immigrant Orchestra & Sema Mutlu のようにアコースティックで folk/roots 色濃いものも選ばれている。 しかし、最も多いのは hip hop / rap / R&B 〜 reggae (ragga) をベースにしたものだ。 残念ながら、それが Istanbul の underground シーン程に 面白いことになっているというわけではないのだが。
最も印象に残ったのは、 クルド系の folk 音楽を funk のリズムで現代的にアレンジした Beser Şahin, "Mamanî"。 オープニングの Sender Freie Rakete feat. Aziza A., "İstanbulBerlin" も、 中東的な要素を psychedelic に取り入れる一方で Aziza A. もフィーチャーして rap/hip hop の要素も取り入れた ミクスチャな hard rock で面白かった。
Kendi Dünyam (Doublemoon, DM0014, 2001, CD) というリリースもある Aziza A. や コンピレーション・シリーズ East 2 West に参加している Sultan Tunç など Doublemoon と縁のあるアーティストも参加している。 しかし、その程度でイスタンブールの underground シーンと強く繋がっているわけではなさそうだ。 このコンピレーションの音源は Aziza A. や Muri & Pegah Ferydoni が属するプロダクション Kokona 以外は 全て別々のプロダクションやレーベルのもの。 イスタンブールのシーンにおける Kalan や Doublemoon のような、 シーンを牽引するようなレーベルやプロダクションも無いようだ。 こういった点も、ドイツのトルコ系の音楽シーンの存在感の薄さになっているのかもしれない。 このようなコンピレーションやイスタンブールの underground の隆盛に刺激され、 ドイツのトルコ系移民の音楽シーンが盛り上がれば、とも思う。
ちなみに、このコンピレーションを編集した DJ İpek は ミュンヘン (München, Bayern, DE) 生まれで ベルリン (Berlin, DE) を拠点とするトルコ系の女性DJだ。 クロイツベルグ (Kreuzberg) のクラブ SO36 のレジデントDJを勤めている。 DJとしてだけでなく、同性愛の活動家としても知られている。