Shusmo はパレスチナ系アメリカ人 (Palestinian-American) の buzuq 奏者 Tareq Abboushi 率いる 5tet だ。 jazz 的の要素を採り入れた中東の音楽をレパートリーとし、 ニューヨーク (New York, NY, USA) を拠点に活動している。 buzuq は ギリシャの μπουζούκι (bouzouki) に似た レバント (Levant) 地方のアラブの6弦の撥弦楽器だ。 Abboushi は大学で jazz piano を学んだ後、 パレスチナのラマラ (Ramalla, West Bank, Palestina) の National Conservatory of Music で buzuq を習得し、buzuq 奏者として活動するようになったという。 Abboushi と violin/percussion 奏者 Tawil (パレスチナ系 (Palestinian)) は イラク系アメリカ人 trumpet/santoor 奏者 Amir ElSaffar のグループ Two Rivers (レビュー) のメンバーでもある。 また、clarinet の Bournias はギリシャ系 (Greek)、 conga/cajon の Morales は南米ペルー系 (Peruvian) だ。
Abboushi の buzuq の演奏は guitar にも似て、 jazz 的な展開にも自然に馴染んでいる。 それも、drums ではなく conga/cajon ということもあるのか、 Two Rivers のようなモーダルな jazz というより、 Latin jazz 的で明るさや軽快さも感じるものだ。 Latin 的な percussion が最も生きているのは "Apologies To Brahms" だろうが、 軽快なリズムに clarinet や buzuq の節回しが乗る表題曲 "One" が最も良いだろう。 管楽器が clarinet 一本ということもあり、 Chris Speed の Pachora や Matt Darriau Paradox Trio のような 地中海の (Mediterranean) folk/roots 音楽を採り入れた ニューヨークの jazz グループと共通するところが多いように思う。
Shusmo は独立系のアメリカ映画 West Bank Brooklyn (Ghazi Albuliwi (dir.), 2002) で音楽を手掛けているという。 ニューヨークのブルックリンに住むパレスチナ系の兄弟を主人公とした映画で、 ヨルダン川西岸 (West Bank) の状況がエスカレートするにつれて (映画が撮影された2000-2001年は第二次インティファーダが始まった頃) 高まる 近所のユダヤ系 (Jews) の人達との緊張を描いたもののようだ。
ニューヨークのユダヤ系のグループ Cardamon Quartet が 2006/02/10に John Zorn の運営する The Stone でライブをした際に Tareq Abboushi がゲスト参加した様子の動画が、 Cardamon Quartet の MySpace TV で観ることができる: "Tickling Eyes - live at Stone with Tareq Abboushi"。 また、シリアのダマスカス (Damascus, Syria) 出身で ニューヨークを拠点に活動する女性歌手 Gaida のバックバンドのメンバーにも、 Shusmo の Tareq Abboushi と Zafer Tawil、イラク系の Amir ElSaffar、 Cardamon Quartet の Uri Sharlen の名前が見える。 Shusmo のメンバーは関係していないが、 Gaida と Amir ElSaffar に Matt Darriau Paradox Trio の Rufus Cappadocia と Seido Salifoski を加えた グループ Ilham が 2007/12/26に The Stone でライブを演っている。 こういった所からもミュージシャンのサークルが伺える。 Tzadik レーベルの Radical Jewish Culture シリーズのような形で CDがふんだんにリリースされているわけではないが、 このようなニューヨークのアラブ系のミュージシャンの活動も注目に値するだろう。