今年オープンした せんがわ劇場 (芸術監督: Peter Goessner) が、総合プロデユーサーとして 巻上 公一を迎え、 『JAZZ ART せんがわ』 というフェスティバルを開催した。 そのせんがわ劇場での2日目トリの Cicala-Mvta のライブを観てきた。
そのチンドン/芸能的な下世話さと free jazz 的な先鋭性が 同居するような演奏は相変わらず。 ミュージシャンが暖まったこともあると思うが、 後半にゲストに 鬼怒 が入ってから演奏が良くなったように感じた。 鬼怒 の electric guitar はここではディストーションをかけて強く唸らせるようなスタイルで、 管楽器中心の Cicala-Mvta の音と併せて、 electric guitar を派手にフィーチャーする post-George Russell な jazz big band と通ずるような所にあると感じる時もあった。 そして、そこがとても気に入った。
セット替えに予定より時間がかかり開演が遅れたのだが、待ち時間の間、ロビーで 徳永ウィリアム による 『CLUB JAZZ 屏風』 をやっていた。中に入って聴くことまではしなかったが、 その洩れ聴こえる様子も微妙な緩さで、楽しむことができた。 普通の街中で観た方が、ハプニング的な要素が強くなって、 寒い状況になっていたとしてもそれはそれで面白そう、とも思ったが。
『JAZZ ART せんがわ』は 一癖ある音楽性を持つ日本人ミュージジャン中心のラインナップで、 仙川というロケーションでやるにはかなり挑戦的。 欧州でのジャズ・フェスティバルで東京に拠点を持つ日本人ミュージシャンが活躍しているのに、 東京にそのホームグラウンドとなるフェスティバルが無かった、ということが、 この企画のきっかけという。 告知があまりうまくいっていないという印象を受けたが、集客はなかなか良く、 Cicala-Mvta の時も客入れ後に椅子を増やした程だった。 セット替えの遅れや、会場待ちの間の観客の整理がいまいちだった所もあったが、 オープンしたばかりの劇場で始めてのフェスティバルということを考えると、 良くやっていた方かもしれない。 企画趣旨も良いと思うし、是非、続けていって欲しいフェスティバルだ。
今回にライブへ行ったのは、 せんがわ劇場 の様子を観に行く、という目的もあった。 隣接する プラザギャラリー や 東京アートミュージアム へは行ったことがあり、 どんな劇場になるのか気になっていたのだ。 安藤 忠雄 設計によるコンクリート打ちっぱなしな建築で囲まれた 雰囲気で統一された十字路に仕上がっているのは良い。 しかし、ギャラリーやミュージアムが劇場での企画に連動していなかったのは、 少々もったいない。 劇場の規模は、 世田谷パブリックシアターシアタートラムや吉祥寺シアターに比べてもさらに小規模。 客席がフラットなフロアに椅子を並べただけだったというのが少々気になった。 演劇やダンスではちゃんと段状の足場を組むのだろうか。 芸術監督を置いてちゃんと企画してやっていこうとしているので、 今度は、演劇かダンスの公演を観に行きたい。