Wagon Repair は techno の文脈で活動する Matthew Jonson が主宰するレーベルだ。 カナダ西海岸バンクーバー (Vancouver, British Columbia, CA) を拠点に、2004年に活動を始めている。 Matthew Jonson は Minus (Richie Hawtin のレーベル) や Perlon といった レーベルからもリリースがあり、Wagon Repair のリリースも Minus や Perlon と同様に minimal/click な tech-house とみなされることが多い。 去年までアナログ12″のみのリリースだったが、 去年10月と今年にアルバムCDでのリリースがあった。 現在最も気になっているレーベルの一つなので、簡単に紹介。
Cobblestone Jazz は、Wagon Repair 主宰の Matthew Jonson と Danuel Tate、Tyger Dhula のトリオだ。 結成はビクトリア (Victoria, British Columbia, CA) で、 その後にバンクーバーに拠点を移している。 2002年からシングルでのリリースがあるグループだが、 23 Seconds は彼らの初のアルバムだ。 アナログはスタジオ録音の 12″ 3枚組で、 CD1の内容はそれに基づいているが、CDには収録されていない曲が3曲あり、 収録曲もミックス違いのようだ (アナログを未入手未聴で未確認)。 CD2には、未発表ライブ録音と ボーナス曲2曲 (いずれも12″で既発表) が収録されている。
3人が keyboards や computer をライブで演奏するグループだが、 グループ名に "jazz" が付くけれども、 少々 fusion 風の electric piano のフレーズは聴かれる程度で、 jazz/improv 的なソロや変則的なリズムが聴かれるわけではない。 click/minimal tech-house を基調とした音だ。 funk 的な bass line が強調されている展開などは jam band 的と言えるかもしれないが。
click/minimal にあまり聴かれない Cobblestone Jazz の良さは、やはり、 "Change Your Apesuit"、"Saturday Night" や "W" での ブリブリいう funky な bass ラインだろう。 "Slap The Back" となると少々 electric piano っぽい keyboards の音も fusion 風 過ぎるように感じてしまう。 もちろん、硬質な音を使った "PBD" や淡々とソフトに進行する "Hired Touch" など click/minimal らしいトラックも悪くない。
CD2に収録されているライブので演奏は、 少し音のテクスチャのデフォルメが大きめのノンストップの live DJ mix に近い。 元々 minimal な展開な曲なのでライブで大きく展開が変わるというわけではない ということだろうが、 そんな中では、"Slap The Back" の展開が大きく変化したように感じられた。 "fusion" 風のフレーズが乗っていた分だけ、 ライブにおける即興による違いが聴き取り易いのかもしれない。
The Mole こと Colin de la Plante は、 モントリオール (Montréal, Quebec, CA) を拠点に techno の文脈で活動する DJ / producer だ。 元々は Cobblestone Jazz のメンバーらと同郷ビクトリアで Modern Deep Left Quartet として共に活動していたが、 Cobblestone Jazz はバンクーバーへ、The Mole はモントリオールへ拠点を移した、 という経緯がある。 最近では、Pole のリミックス・アルバム Steingarten Remixes (~scape, sc50cd, 2007, CD) に、同じくモントリオールの Deadbeat (Scott Montieth) らと参加していた (レビュー)。 そんな The Mole のアルバムも Wagon Repair からリリースされている。
少々アナログっぽい音のテクスチャの使い方など Cobblestone Jazz と似ている click/minimal tech-house だ。 ブリブリいう bass が無いけれども、 downtempo な曲もあり、リズムの展開は The Mole の方が多様で変化に富んでいる。 "Alice, You Need Him" や "Baby, You're The One (Edit)" のような deep で tight なグルーヴを持つ曲も良いが、最も印象に残ったのは、 electro 的なメリハリを持つ打ち込みが deep なうねりと拮抗する "Gracias A Los Ninos" だ。