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Review: Various Artists, Round Black Ghosts; Pole, Steingarten; Pole, Steingarten Remixes; Basic Channel, BCD-2
2008/08/03
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Various Artists
(~scape, sc52cd, 2008, CD)
1)Martyn, "Velvet" 2)2562, "Channel Two" 3)Untold, "Test Signal" 4)Pole, "Alles Klar" 5)Syncom Data, "Beyond The Stars (SD mix)" 6)Ramadanman, "Response" 7)Pinch, "136 Trek" 8)Peverelist, "The Gris" 9)Elemental, "Raw Material" 10)Pangaea, "Coiled"
Compiled by ~scape (Stefan Betke (Pole) & Barbara Preisinger) and Tim Tetzner.

~scape は1999年にベルリン (Berlin, DE) で活動を始めた techno / electronica のレーベルとして知られる。 主宰する Stefan Betke (Pole) をはじめ 少々 dubwize で deep な minimal techno がそのレーベルカラーだった。 このレーベルが久々にリリースしたコンピレーションは、 ここ数年興隆している dubstep に焦点を当てたものだ。

Pole 自身による曲 "Alles Klar" が収録されているが、それ以外は ~scape 以外の音源が使われている。 様々なレーベルの音源が使われているが、ある程度文脈の近いミュージシャンが集められているようだ。 2562、Pinch、Peverlist は Bristol (England, UK) のレーベル Tectonic や Punch Drunk を拠点に、 Untold、Ramadanman、Pangaea は Leeds (England, UK) のレーベル Hessle Audio を拠点に 活動している。

選曲は、dubstep 本流というよりも、 音数をミニマルに整理し click 的な音のテクスチャを強調した、 従来の ~scape のレーベルカラーからの連続性を強く感じられるものだ。 ツッかかるようなリズムを刻む 2562, "Channel Two" や カキカキいう音色がミニマルなリズムに乗る Peverelist, "The Gris" が特に良い。 minimal/click にも通じる傾向を持つ dubstep のコンピレーションとしてお薦めだ。

(~scape, sc44cd, 2007, CD)
1)Warum 2)Winkelstreben 3)Sylvenstein 4)Schöner Land 5)Mädchen 6)Achterbahn 7)Düsseldorf 8)Jungs 9)Pferd
Written & Produced by Stefan Betke.
(~scape, sc50cd, 2007, CD)
1)Achterbahn (Shackleton Remix) 2)Winkelstreben (Peverelist Remix) 3)Pferd (The Mole's Lost In The Wood Mix) 4)Winkelstreben (Ghislain Poirier Remix) 5)Sylvenstein (Deadbeat Remix) 6)Mädchen (Gudrum Gut Abc Mix) 7)Achterbahn (Frivolous Remix) 8)Pferd (Melchior Productions' Zodiac Mix) 9)Achterbahn (Dimbiman Remix) 10)Düsseldorf (Mike Huckaby S y n t h Remix)
Original tracks Written & Produced by Stefan Betke.

~scape というか Stefan Betke の dubstep への傾倒は、 去年リリースされた久々のアルバム Steingarten の リミックス・アルバム Steingarten Remixes から 僅かながら伺うことができたものだ。

前作 Pole (Mute, STUMM208, 2003) は MCをフィーチャーして hip hop に傾倒したわけだが、 新作 Steingarten は自身のレーベルから。 1998-2000年に KiffSM レーベルからリリースされた三部作 (1 2 3 (~scape, sc54cd, 2008, 3CD) として再発されている) のような 脈動する低音が特徴的な音とも違い、 downtempo で dubwize な click/minimal とでもいう音だ。 淡々とした展開というほどでもなく、 "Winkelstreben" のようなポップなフレーズが乗っている曲もある。 しかし、dubstep 的と感じるほど変則的なリズムの曲は、ここには無い。

続いてリリースされた Steingarten Remixes も、 全体としては click/minimal な techno の文脈、 特に、The Mole (Colin De La Plante)、Ghislain Poirier、Deadbeat (Scott Montieth)、Frivolous (Daniel Gardner) の モントリオール (Montréal, QC, CA) の DJ/producer が目立つものだ。 ちなみに、Gudrun Gut は ex-Malaria で Monika Enterprise 主宰、 Dimbiman (Zip, Thomas Franzmann) と Melchior Productions (Thomas Melchior) は ベルリン (Berlin, DE) のレーベル Perlon を拠点とする DJ/producer、 Mike Huckaby はデトロイト (Detroit, MI, USA) のDJ/producer だ。 しかし、オープニングに、 Skull Disco の Shackleton、Tectonic / Punch Drunk の Peverelist と dubstep のDJ/producer が続いている。そしてそれらが 他の DJ/producer のものと違和感なく並んでいる。

こうして並べて聴くと、 変則的なリズムを持つ Ghislain Poirier や Deadbeat の remix など dubstep かと思うような仕上がりだ。 この2曲と dubstep な Peverelist の remix、あと、 硬質で淡々と重いリズムの The Mole の remix が気に入っている。 全体としても、オリジナルの Steingarten よりビートが重く強くなった分だけ楽しみやすいように思う。

Basic Channel
(Basic Channel, BCD-2, 2008, CD)
1)Enforcement 2)Phylyps Trak 3)Inversion 4)Octagon 5)Octaedre 6)Phylyps Trak II/II
Originally released: 1993-1994.

Stefan Betke は1993-1994年に活動した minimal techno のレーベル Basic Channel の cutting engineer として注目されるようになったのだが、 その Basic Channel のアンソロジーCD第2弾がリリースされている。 1995年にリリースされた BCD (Basic Channel, BCD, 1995, CD) 以来13年ぶりとなるリリースだ。

音のテクスチャを強調した deep な minimal techno、と言うと Pole と同様だが、 Pole の新譜と比べて聴くと、そのテクスチャは click 以前のアナログなものに感じられる。 そういう点では制作された時代を感じるように思う。 BCD を当時から今に至るまでそれなりに聴いてきているせいか、 その違いに違和感や新鮮さを覚えたりはしなかったけれども。

BCD リリース当時、そのCDを入手して、 「CDで聴くものでもないかもしれませんが」と Postpunk ML へ振った所、 渋谷のDJ向けレコードショップのポップに「CDで聴いてどうする!?」と書かれていた、 というレスポンスがあったことを思い出す。 しかし、それから13年、インターネット音楽配信時代の今や、 違う意味で「CDで聴いてどうする!?」になっているかもしれない。 BCD-2 のケースに "Buy vinyl!" と書かれているのだが、 CDはおろかアナログ12″も終焉が見えつつあるだけに、 かなり感傷的なメッセージにも感じられた。