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Review: Houria Aïchi et L'Hijâz Car, Les Cavaliers De L'Aurès
2009/02/04
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Houria Aïchi et L'Hijâz Car
(Accords Croisés, AC126, 2008, CD)
1)Le Cavalier, Le Cheval Et La Dame 2)Invocation 3)Rencontre Amoureuse 4)Les Ó Bonbons 5)La Jument Grise 6)Les Cavaliers 7)Mélancolie 8)Le Messager 9)L'Arbre Et Le Caillou 10)L'Amoureuse
Conception et direction artistique: Martina A. Catella; Arrangements et orchestration: Grégory Dargent.
Houria Aïchi (chant); L'Hijâz Car: Grégory Dargent (oud, banjo), Etienne Gruel (daf, bendirs, derbouka), Jean-Louis Marchand (clarinettes, métaux), Fabien Guyot (daf, bendir, karkabou), Nicolas Beck (tarhu, hajouj); Abdessalam Mejjaoui et Ali Bensadoun (chœurs)

Houria Aïchi は アルジェリア (Argérie) 北東部チュニジア国境近くの山岳地帯 Aurès 地方の Berber 系 Chaoui 人 (自称は Icawiyen) をルーツに持ち、 Chaoui の伝統的な歌をレパートリーとしている女性歌手だ。 彼女はフランス (France) を拠点に活動しており、jazz のミュージシャンとの共演もある。 この録音で共演した L'Hijâz Car は フランス・アルザス地方ストラスブール (Strasbourg, Alsace, FR) で結成された Gypsy や中東の音楽をレパートリーにしているグループだ。

この作品では、“Rayan el Kheil” と呼ばれる Aurès 地方の誉れ高い羊飼いの馬乗り男たち、という伝統的な主題を歌っている。 ダウンテンポに詠唱するような曲もあるが、耳を捉えるのは、 打楽器や弦楽器の反復に平板にコブシをきかせた歌を乗せたもの。 モロッコ (Morrocco) の B'net Marrakesh にも似た Berber 系のトランス音楽だ。 L'Hijâz Car の演奏も基本的にアコースティックではあるが、 特に管楽器や弦楽器のソロに jazz や rock の影響を感じ、そこが現代的に感じられる。

Berber の音楽であまり使われないということもあるが、 “Invocation” や “Les Ó Bonbons”、 “L'Arbre At Le Caillou” での ベースラインを取るような bass clarinet の使い方が特に印象に残った。 もちろん、electric guitar 風の歪んだ弦楽器をフィーチャーしたトランス音楽風の オープニング “Le Cavalier, Le Chaval, Et La Dame” もかっこいいし、 ほぼ打楽器のみの伴奏でコーラスかけあう “Le Messager” の軽快さも良い。 ゆったりとゆらぐ展開に jazz/improv 色を感じる “Mélancolie” も悪くない。 聴き所多く楽しめる作品だ。