Houria Aïchi は アルジェリア (Argérie) 北東部チュニジア国境近くの山岳地帯 Aurès 地方の Berber 系 Chaoui 人 (自称は Icawiyen) をルーツに持ち、 Chaoui の伝統的な歌をレパートリーとしている女性歌手だ。 彼女はフランス (France) を拠点に活動しており、jazz のミュージシャンとの共演もある。 この録音で共演した L'Hijâz Car は フランス・アルザス地方ストラスブール (Strasbourg, Alsace, FR) で結成された Gypsy や中東の音楽をレパートリーにしているグループだ。
この作品では、“Rayan el Kheil” と呼ばれる Aurès 地方の誉れ高い羊飼いの馬乗り男たち、という伝統的な主題を歌っている。 ダウンテンポに詠唱するような曲もあるが、耳を捉えるのは、 打楽器や弦楽器の反復に平板にコブシをきかせた歌を乗せたもの。 モロッコ (Morrocco) の B'net Marrakesh にも似た Berber 系のトランス音楽だ。 L'Hijâz Car の演奏も基本的にアコースティックではあるが、 特に管楽器や弦楽器のソロに jazz や rock の影響を感じ、そこが現代的に感じられる。
Berber の音楽であまり使われないということもあるが、 “Invocation” や “Les Ó Bonbons”、 “L'Arbre At Le Caillou” での ベースラインを取るような bass clarinet の使い方が特に印象に残った。 もちろん、electric guitar 風の歪んだ弦楽器をフィーチャーしたトランス音楽風の オープニング “Le Cavalier, Le Chaval, Et La Dame” もかっこいいし、 ほぼ打楽器のみの伴奏でコーラスかけあう “Le Messager” の軽快さも良い。 ゆったりとゆらぐ展開に jazz/improv 色を感じる “Mélancolie” も悪くない。 聴き所多く楽しめる作品だ。