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Review: Agra Dharma (Ikue Mori / Sylvie Courvoisier / Koichi Makigami) (live) in Jazz Art Sengawa 2009 @ Sengawa Theater, Tokyo
2009/06/14
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Agra Dharma
JAZZ ART せんがわ 2009
せんがわ劇場, 仙川
2009/06/13, 18:00-18:45
Ikue Mori (electronics), Sylvie Courvoisier (piano), 巻上 公一 (Koichi Makigami) (voice, theremin).

昨年度に始まった『JAZZ ART せんがわ』が、時期を約1ヶ月繰り上げ、今年も無事に開催された。 芸術監督として 巻上 公一 を迎え、free jazz/improv に近い文脈で活動する 日本人ミュージシャンを集めてのフェスティバルだ。 今年も、土曜の夕方、Agra Dharma を観た。

Ikue Mori は ex-DNA として知られるニューヨークの electronics 奏者だ。 Sylvie Courvoisier はスイス出身で1990年代は主に欧州 free jazz/improv の文脈で活動していたが、 1998年にニューヨークに拠点を移動。Ikue Mori とは Susie Ibarra との trio Mephista 等、共演が多い。 巻上 公一 は ex-ヒカシュー だが、現在は jazz/improv 文脈での voice パフォーマーとしての活動が多い。 そんな3人によるプロジェクトが Agra Dharma だ。 おそらくこのフェスティバルが初演となるプロジェクトだ。

内部奏法やプリペアドでの演奏を多用して強いが鈍い piano の音と、 electronics や theremin の浮遊するような音がすれ違う、というもので、 CDで聴いていた Mephista の演奏から大きく外れるものではなかった。 drums/percussion がいない分だけ、サウンドスケープ的のようにも感じた。 あと、Mori の出す電子音と 巻上 の theremin の音が被ってしまい、 どちらの音なのか区別しし辛く感じることもあったのが、少々残念だった。 最近 Intakt からリリースした Lotte Anker との trio のように saxophone のような管楽器を加えた方が、展開の幅が広がったかもしれない。

Courvoisier が次第にプリペアド等を使わなくなり、 最後に普通の piano の音を主に使った展開になったときが、最も良く感じられた。 しかし、そのままアンコール無しで終わってしまった。少々残念。

確かに、この手の音楽は大いに盛り上がるステージにはなりづらいし、 良いとは言い難い場合も少なくない。 しかし、今年観た Agra Dharma も、興味深い所もあるステージだったとは思う。 諸般の都合で1ステージしか観られなかったが、他のプログラムも興味深い。 また、去年は開演までかなり押していたが、今年は時間通り。 『JAZZ ART せんがわ』の運営はかなり改善されたよう。 是非来年以降も続けていって欲しい。