Luciano こと Lunien Nicolet は 南米チリ (Chile) 出身ながらスイスのジュネーブ (Genève, Suisse) を拠点に活動する techno/house の DJ/producer だ。 自身のレーベル Cadenza を拠点に、同じくチリ出身の Ricardo Villalobos と似た、 minimal や click と呼ばれるようなスタイルの音作りをしていることで知られている。 そんな彼が去年末にリリースした新作は、 minimal から踏み出したような音作りになっている。
骨格となる部分だけ聴けばディープな techno/house だ。 骨格のみの “Conspirer” や “Metodisma”、“Oenologue” は、相変わらずと言えるだろう。 しかし、この新作ではサンプリングされている音源の面白さが耳を捉える。 オープニングの “Los Niños De Fuera” からして 太平洋の仏領ニューカレドニアの Kwenyii 島 (Île des Pins, Nouvelle-Calédonie, FR) のダンスの録音を使っている。 hang (steelpan を逆にしたような打楽器) と alphorn の浮遊するような響きを使った “Hang For Bruno” や、 西アフリカのマンディング (Mandingue) 系の kora の繊細な響きを使った “Africa Sweat” も良い。 それも、全体としてソフトな音色で統一されているせいか、 こういう「エスニック」なネタが浮くことなく、 ミニマルなビートの中に織り込まれているように聴こえるのも良い。 Karen Ann (フランスを拠点に活動する SSW) や Martina Topley-Bird (Tricky や Massive Attack との共演で知られる) も歌をフィーチャーしているのではなく、声をそのテクスチャに織り込んでいる。
このようなテクスチャとなる音選びのセンスには、 Ricardo Villalobos の Fabric 36 での試み [レビュー] に近いものを感じる。 Villalobos の後に続くような音になかなか出会えなかっただけに、今後の展開に期待したい。
ちなみに、DVDに収録されているのは、 Luciano の世界を巡るDJツアーのオフステージのドキュメンタリ映画だ。 ファン向けの付録と言っていいだろう。日本の様子を捉えた映像も少々使われている。
ちなみに、Tribute To The Sun のリリースは、 自身のレーベル Cadenza から。 3年余前となるが、Cadenza からCD 2枚組のアンソロジー Cadenza Contemporary 01 & Cadenza Classics がリリースされている。 Luciano や Villalobos のリリースもあるレーベル Perlon のセンスに近い、 Tribute To The Sun 以前の ディープでミニマルな Luciano や、その周辺の DJ が楽しめる作品だ。 参考までに収録曲等の情報を以下に載せる。