南米チリ (Chile) 生まれながらドイツ (Deutschland / Germany) 育ちで 現在ベルリン (Berlin, DE) 在住のプロデューサ/DJ Ricardo Villalobos が、 ロンドン (London, UK) のクラブ Fabric のレーベルの mix CD シリーズに登場した。 mix CD と言っても全曲自身の制作もしくはコラボレーションによるオリジナル曲で、 Villalobos の音世界を堪能できる mix CD だ。
ベースとなっているのは、minimal/micro というか click と呼ばれるような ソフトなテクスチャ感のある音をミニマルに反復させる音だ。 そして、Villalobos のセンスが映えるのは、テクスチャを作る音選びだ。 去年の Fizheuer Zieheuer (Playhouse, PLAYCD021, 2006, CD) では brass band を使っていた (レビュー)。 この mix CD でも、"Perc And Drums" での jazz 的の drums の fill のフレーズ、 "Andruic & Japan" での和太鼓の断片的な響きが耳を捉えた。
しかし最も印象に残ったのは、 1960年代に活動を始めたチリの folklore 歌手 Manduka をフィーチャーした folklore / prog rock のグループ Los Jaivas の曲 "Primer Encuentro Latino-Americano" を使ったトラックだ。 click な音の中からオフ気味に沸き上がるかけ声の反覆は、呪術的とすら感じられる。 The Wire 誌 Issue 282 (August 2007) に載ったインタビュー記事で Violeta Parra をかけているという話が出てくるのだが (関連発言)、 Parra をDJプレイの中で使う所を聴いてみたかった。 しかし、この Los Jaivas の使い方に、Parra の使い方が伺えたようで、それも興味深かった。
この mix CD は、それなりに個性のあるテクスチャを持つ曲を 15曲繋いでいるということもあり、展開も感じられる。 淡々と30分余り反覆する Fizheuer Zieheuer の ミニマルさも好きなのだが、その一方でこの展開も良いように思う。 和太鼓の響や folklore のかけ声のようなものを使っていることもあるのか、 比較的ミニマルな割に映像的に感じられた。