イギリス・シェフィールド (Sheffield, England) の techno のユニット The Black Dog は、 去年 (2009年) の7月から公式サイトで約1時間の長さ DJ mix の Podcasts を始めている。当初は1年間月1本で配信するとのことだったが、実際は少し間隔が空いて、 2010年3月末時点で6本 (ボーナスを含めると7本) が配信されている。 また、この3月からは SoundCloud のアカウントでの配信も始めている。
その第4弾として去年11月に配信されたものが、この Krautrock 縛りの DJ mix だ。 といっても、前半は、Krautrock 以外に、Karlheinz Stockhausen と Luigi Nono による 現代音楽 (contemporary classical) の電子音楽も使った。 ビート感のあまりないサイケデリックな電子音の世界だ。 そして、後半になるに従い少しずつ盛り上げ、 Neu! の2曲 “Nagativland” と “Hallogallo” がクライマックスだ。 Neu!、Claster、Harmonia らの electronic な音源が中心で Krautrock のサンプラーとしては偏りがあるが、 それらを軸に現代音楽も用いてメリハリを付けた巧くまとめた DJ mix だ。
第4弾は Krautrock 縛りの DJ mix だが、 他は、自身の音源や、自身のレーベル Dust Science Recordings の音源を核にした DJ mix だ。 第2弾 Sometimes – Ambient DJ Set/Mix (2009-09-02) こそambient 色濃いが、 他は ambient/IDM や click の色も抑えめの minimal な techno の DJ mix だ。
1960年代末から1970年代にかけて登場した西ドイツの rock である Krautrock に関しては、 去年11月に、総括的なエッセー4本と、 バンド、レーベル、プロデューサを紹介する1〜2ページの記事を集めた事典的な本が出ている。 フランスの Actuel 誌 No. 27 (January, 1973) に載った記事の翻訳 Jean-Pierre Lantin: “At Last: German Rock Has Arrived!“ など、当時の他国での受容が伺われて興味深いものがあったし、 事典的な構成は調べ物に便利ではあるが、テキストが断片的で読み応えには欠けた。 Warp や Rough Trade といった独立系レーベルの歴史を辿る Labels Unlimited シリーズ [関連発言] や、 No Wave や Riot Grrrl の本 [関連発言] を出してきた Black Dog Publishing からの本ということで、期待が大きかっただけに、少々残念。
去年11月にはこの本の出版イベントが Rough Trade Shops で開催されたりもしており、 ほぼ同時期に発表された The Black Dog の Krautrock 縛りの DJ mix も、 明示はされていないが、これと関連したものかもしれない。